表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/25

第1100話 永久機関の歯車は回り続ける

「お、今日はちゃんと来たな!」

 ラウンドが俺の方を見ながら大声で言った。

 やはり、俺たちだけは人間のままであるようだ。

グイィィィィィィィィィィィィィィィィンンンンン

 今日は遅刻せずにいつもの待ち合わせ場所に着いた。

「まあな。そう何回も遅刻してたまるか」

「ずる休みはよくしてたけどな」

 バルドスがからかってきた。

「しかたないだろ……。家庭科で持っていく物分からなかったんだから……」

グイィィィィィィィィィィィィィィィィンンンンン

「やーい、ずる休み~」

「何をー」

 バルドスが煽ってきたので、俺はそれに乗った。

「やめんか!」

 バレットが俺とバルドスの間に入ってきた。

「何だよ。冗談だって」

「お前らだと何が起きるか分からないからな」

 バルドスは笑っているが、バレットは真剣だ。

「ギサルム、大丈夫か?」

 深刻な顔をして、バレットが近づいてきた。

 俺は頷いて、肯定の意を示した。

「兄さん、かっこいいー」

 レフシィがバレットを褒めている。

「ん……うーむ、照れるなぁ~」

 ちなみにバレットは兄馬鹿である。

「ギサルム、おはよう……」

「おはよう、ギサルム」

 ブリッツとシミターも来た。

 後は、ランスとブライトとレアンとファングとクリスとカレンだ。

グイィィィィィィィィィィィィィィィィンンンンン

 あれ?

 ラウンドがいるのにその弟たちがいないとはどういうことだ?

「ラウンド。お前の弟たちはどうした?」

「あれ?」

 お前も知らないのか……。

 と思っていたところに、レアンが何故か走ってきた。

「やあ、レアン」

「あ、ギサルムさん、おはようございます。あの、ちょっと手伝ってくれませんか?」

「何を?」

「えーとですね。ランス兄さんが女子から告白されて、それを見たブライト兄さんは暴れだそうとするし、ファングは世界の終わりだとうわ言のように繰り返しているのを、僕とクリスさんとカレンさんで解決しようとしたのですけれど、無理でした……ので助けて下さい」

 あー、ランス死んでほしい……

「何だと……ランスが告白された……だと?」

 ラウンドが物凄い形相でこちらに向かってきた。

 ラウンドもそこそこモテているとは言え、ランスには遠く及ばない。

「ムッコロす」

ヒュッ、ドーーーーーーーーーン!

 人間とは思えないスピードで、レアンが来た方向に向かって行った。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 直後、断末魔が聞こえてきた。

 さらば、ランス。

 いい奴だった。

「うおおおおおおおおお!! 兄貴、落ち着け!!」

「兄さん! 落ち着いて!」

 ブライトとファングの絶叫が聞こえてきた。

 お前ら、絶望に打ちひしがれていたんじゃないのか?

「ランス、大丈夫なのかな……?」

 ブリッツが俺に訊いてきた。

「大丈夫じゃないだろ……ちょっと行ってみるか」

 とりあえず、ランスの無残な姿を見に行った。

 辿り着いてみると、野獣と化したラウンドがランスに襲い掛かっていた。

グイィィィィィィィィィィィィィィィィンンンンン

 周りには人形の一団が、こちらを見ている。

 予想通り酷い有様だった。

「ラウンド落ち着いて!」

「そうだよ! ラウンドが好きな人だって……いるはず……だもん……」

 クリスとカレンは、オロオロしている。

「……。バレットとバルドスを呼ぼう。このままじゃ登校できない」

 俺は携帯電話を取り出し、おそらく待ちぼうけ状態であるバレットとバルドスを呼びだした。

 この後、ラウンドはバレットとバルドスの力業によって沈黙した。

 尚、時間には割と余裕を持ってあるので、学校に遅刻することはなかった。

 ……。

 ……。

 この流れは、一度見た……。

 この日常は、一度起こったことだ……。

 やはり、この前感じた違和感は確かだ……。

 俺たちは、何回も同じ日常を繰り返している……。



 放課後。

 いつもならラウンドたちがいるのだが……

「あれ? 今日はお前たちだけか……」

「うん……。ラウンドたちは用事があるから、帰れないって……」

「今日は、私たちだけで帰ろう?」

 下校時の集合場所にいたのは、ブリッツとシミターだけだった。

 やはり、こうなるのか……。

 となると、奴らが……

「そうだな……」

 俺たちは歩き出した。

 俺は今までならば、「久々だな。お前たちと一緒に帰るのも」と言うところをわざと言わなかった。

グイィィィィィィィィィィィィィィィィンンンンン

「私たちだけで帰るの……久しぶりだね……」

「そうだね……」

「ギサルム。何か面白い話してよ」

「面白い話なぁ……」

 代わりにシミターが発言した。

 だが、今まで通りならば、やはり奴らが来るだろう……

――わぁ、あの2人。ギサルムと一緒に歩いてる……

――何であんなキモい奴と一緒にいられるんだろうね?

 後ろから女子の集団が近づいてきた。

 いや、女子の声を発する球体関節人形の集団だ。

「ギサルム……」

「無視しろ。何を言われても知らん顔するんだ」

 ブリッツが不安そうな顔をこちらに向けてきた。

――ねぇねぇ。シミターだけでも助けようよ

――あ、それいいね

ダッダッダッダッダッ!!

 後ろから走り出す音が聴こえた。

 その音がどんどん近づいてくる……。

「あっ!?」

 シミターが、後ろから追い抜いて行く球体関節人形に引っ張られバランスを崩した。

 球体関節人形に引っ張られたシミターはぎこちなく走った後に転んだ。

「おい。シミターに何をするんだ?」

 俺は球体関節人形を睨みながら移動した。

 球体関節人形全てが、ギロリとこちらを見る。

 人形の視線は俺が元いた場所を見ていた。

 人間ならば顔があるはずの部分に、物を掴むことにやっと慣れた子供が書いたような顔が描かれていた。

 やはり、こうなるのか……

「何するんだだって」

「まじ受けるわ~」

 球体関節人形は女子の声で互いに笑い合っている。

「あたしたちは、嫌々あんたらと一緒にいるシミターを離してやったんだよ!」

 球体関節人形の1体が俺に向かって怒鳴る。

「そんなことは……ない。シミターは友達だから……」

 ブリッツが言い返す。

 だがやはり、ブリッツのその発言は、人形に対してというよりもシミターを連れ去った女子に対して向けられていた。

 やはり、女子に言い返しているというそんな雰囲気だった。

「あのね……あたしたちとこいつはあんたらより仲がいいの。ね? シミターァ?」

「…………」

 球体関節人形の1体はシミターに都合の良い答えを求めるが、シミターは泣いたまんまだ。

「ね? あたしたち仲がいいよね?」

「…………」

「仲がいいでしょう? 私たち?」

「…………」

「仲いいよね?」

――ちゃんと答えないとどういうことになるか分かっているよね?

 球体関節人形の1体が小声でシミターにそう言ったのが、かすかに聞こえた。

「ひっ……仲、いい……です……」

 シミターが小さな声で言った。

「えぇ~? よく聞こえないなぁぁ?」

 球体関節人形の1体がわざとらしく訊き返す。

「ギサルム……たちよりぃ! 仲がいいっです!」

 今度は大きな声で言った。

「よく言えたね~シミター。さあ、一緒に帰ろう!」

 球体関節人形の1体はシミターの肩に手を回すと、フラフラなシミターを強引に歩かせた。

「そんな……シミター……」

 ブリッツは驚きの表情で茫然と立っている。

 涙目のシミターがこちらに振り返る。

 その目は「助けて」と言いたげだった。

 だが、

「シミター。気にしなくていいの。あいつら、ただのゴミだから」

 その声と共にシミターは球体関節人形の海の中に呑まれ見えなくなってしまった。


“1”


「アシッグ。どういうことだ?」

 携帯電話越しにアシッグに質問を飛ばす。

「どういうことだってどういうこと?」

 アシッグは突然の俺の行動に驚いている。

「最近、同じ日常が繰り返されている。何か知ってないか?」

「何を言っているの? そんなこと起こるわけないじゃないか」

「起こるはずはない。だが、現に起こっている!!」

 強い口調で俺が言うと、アシッグはしばらく黙ってこう切り出した。

「今分かっていることは?」

「人間たちが全て人形になっていること。風景がメチャクチャになっていること。俺と俺の友達だけが人間であること。同じ日常を繰り返しているのが分かっているのは俺だけだが、俺の友達も自分で考えて行動できること。人形は今までの行動を繰り返すだけだ」

 現在分かっている状況を全て言った。

「そうか。じゃあ、調べてみるよ」

 そう言って、アシッグは電話を切った。

 あいつにかかれば、こんなことはすぐに分かるだろう。

 アシッグからの報告が楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ