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第1011話 狂った世界で見つけた光

“1”


グイィィィィィィィィィィィィィィィィンンンンン

「おい! 頼むから起こしてくれよ! アシッグ!」

 俺はリュックサックを背負い、携帯電話を片手に走っていた。

「ギサルム……。そんなこと言われてもねぇ……」

 携帯電話の向こう側から聞こえてくるアシッグの声は、呆れている雰囲気を醸し出し、

「だって、分からないし……」

 正論で返された。

「というかさ、ギサルム。走っていながら携帯していて大丈夫なの?」

「あ? ……。ゼェー、ハァー、ゼェー、ハァー……」

 アシッグに心配されたところで、息が切れた。

「もう切るよ。こっちは作業あるし……」

 そう言って、アシッグは電話を切ってしまった。

 友よ、見捨てないでおくれ……。

 空と大地は赤く、

 巨大な紙飛行機が舞い、

 無数の人形が行き交う。

 その中を俺は走っていった。


 風景の変質は学校にも起きていた。

 建物はサイケデリックな色合いで、建物の色をしていなかった。

 1時間目、もうすぐ終わるな……。

ガラガラァァァァ……

「すみません……ゼェー……遅れました……ハァー……」

 教室の扉を開けて、先生に言った。

 否、先生を名乗るパペット人形に俺は言った。

「うおっ!? 珍しいねギサルム君。君が遅刻するなんて……」

 パペット人形は扉の音で驚いたような動きをしたが、すぐに元の態勢に戻った。

「大丈夫か? すごく疲れているみたいだけど……」

「ああ……ゼェー……大丈夫です……」

 パペット人形が心配してくれたが、人形なんかに心配されたくない。

 何なんだこいつらは本当に……

クスクスクスクスクス……

 何処からか、笑い声が聞こえてきた。

――ギサルム遅刻とかまじウケる

――ざまぁねえな

 小さくだが、俺を罵倒する言葉も聞こえてきた。

「君たち静かにしなさい!!」

 パペット人形が、球体関節人形たちを叱る。

キーンコーンカーンコーン……

「今日の授業はここまで。ギサルム君は後で誰かからノートを写してもらうように」

「気を付け! 礼!」


 俺は、自分の机に向おうとした。

 が、その前に何かが目の前に立ち塞がった。

「おい。お前調子に乗ってんじゃねえぞ!」

「頭がいいからってなぁ!! 遅刻は遅刻なんだよ!! きちんと反省しろ!!」

 体育会系の2人、と思われるごつい体格の球体関節人形が目の前にいた。

「何で、俺がそんなことをしなくちゃならない?」

「んだとぉ!」

ガシィッッッ!!

 拳が顔面に飛んできそうになった。

 だが、それは誰かの腕が拳を掴んだことで、飛んでこなかった。

「やめろ……」

 その拳を掴んだ男が、球体関節人形2体を睨んだ。

 球体関節人形2体は、チッと言う音だけ発し、去っていった。

 え?

 男?

 人形じゃなくて、人間?

「大丈夫か?」

「……ラウンド?」

 俺を助けてくれた男は、何も気にしなくていいという感じの笑顔で振り返った。

 ラウンドだ。

 ラウンドが……いる。

 人形が人間ように動く世界の中で、人間が、俺の友達がいる。

「気にすんな!」

 悪意のない笑顔で、俺を励ましてくれた。

「あ……ありがとう……ラウンド……」

 俺はラウンドが助けてくれたことよりも、ラウンドが存在することが嬉しかった。

 他にも人間はいるのか?

 辺りを見渡した。

 俺の机の左隣の机に人間が……

「……ブリッツ?」

「……おう」

「ブリッツ? ブリッツなのか!?」

 自分の机まで行き、左隣の男の名前を何度も確認した。

「どうしたの? ギサルム?」

 ブリッツはきょとんとしている。

「いや……ただ、お前がいてくれたことがうれしくて……」

 つい本音が出てしまった。

 この人形しかいないみたいな世界で、ブリッツに会えたことが嬉しかった。

 他にもいないのか?

「ギサルム……何してるの?」

「うおっ!」

 背後から女子の声が聞こえた。

 急いで振り向くと、そこにはポニーテールの女子が立っていた。

「シミター……」

 嬉しくてしょうがなかった。

 他にもいないのか?

「どうしたんだギサルム? 様子が変だぞ」

 そう言ってやってきたのは、バレットだった。

「まさか……」

 俺は走って別の教室に向かった。

 途中で何度も球体関節人形やパペット人形に当たったが、そんなことは知らない。

 ある教室の前まで行くと、俺は声を張り上げ、

「バルドス、いるか!?」

 その教室の人形たちの動きが止まる。

 その人形たちの中に1人だけ人形ではない者がいた。

「何だ、ギサルム?」

 人形と会話をしていたバルドスが俺に気付いた。

「いや……何でもない……」

 バルドスがいたことにほっとし、俺は走った疲れが出たため、しばらく身体を休めた。

 人形が人間のように振る舞う異常な世界で、俺と俺の友達だけが正常だった。


 帰り道、俺は俺の友達と一緒だった。

 無論、人形ではなく人間だ。

 ラウンドやブリッツ以外の俺の友達も人形になっていたりはしてなかった。

 人形の集団が辺りを埋め尽くす中、俺たちの集団だけ人間の集団だった。

 それが、どんなに幸せでどんなに楽しかったことか。

 ブリッツとシミターの死を見せられ、おかしくなった風景や人形が人間のように振る舞う光景を見せられ、俺はボロボロだったが、こいつらがいるならば、このままでもいいかもしれない……

 どんなに世界がメチャクチャになろうと、友達との日々は無くなりませんように……

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