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空缶の

景色は流れていく 時代は変わっていく

わたしは年老いて 床にと横たわる

誰かを忘れたから ここまで来れたけど

誰かに忘れられて 終わりを待っている

始まることさえなかったから 後悔さえもないな

諦めるものさえなかったから 欲しいものもないな

あなたは始まったばかり 前を向いて行きなさい

あなたは始まったばかり 青い空の下で突っ走れ


価値さえ崩れていく 世界は流れていく

わたしは棄てられて 雨さえしのげない

全てを失くしたから こうしていられるけど

そこには明るさだけ 無限に拡がってる

始めることさえなかったから 振り向くこともないな

諦めることさえなかったから 惜しむこともないな

あなたは始まったばかり 明日を向いて行きなさい

あなたは始まったばかり 青い空の下で自由にと


鳥が海の側を 音もなく横切った

遠くを貨物船が 走っていく

昨日が貝殻になっていく

               「貝殻」




この扉の向こう側には 赤い河

上流から戦の血が流れて 昔から、赤い河

人々は殺し合いが 好きなんですね

わたしも人間の一人だもの 嫌いではないですよ

強さへの憧れは やはりありますから

だって、弱さには あまり憧れないでしょう

確かに悲劇はあるけれど それが戦だもの

それが、この人間社会で 美談ばかりではないもの

赤い河は何処へと流れる それは知らぬこと

赤い河は海へと続くのか それも知らぬこと

             「赤い河」




太陽は沈み 時は流れた

静けさだけが わたしを包み込む

幸福な時間は短く あとは寂しさだけ

それを転がして 唄う言葉を放り投げる

笑顔は凍りつき 思い出だけがふえる

生きていくことの意味を問わずに 止まる

ある地点に 留まり続ける

それが人生ではあるまいか 否か

わたしの船は壊れた 否か

いま 歩き出すのは、誰だろう

風は、確かに流れているよ

いつでもね いつまでもね

            「太陽の刻」



思いどうりに時は流れ 私は置き去られた鴎のようだ

さりげない理不尽さに 叫び声は遠くなる

熱い時代の残骸に ふと、手を伸ばしていた

止まることを知らない ハンドルの外れた車みたいに

愛を語る人ほど 愛は離れていくね

夢を語る人ほど 夢は解けていくよね

全てを知らされぬままに 現に目隠しをしたまま

それが哀しいというのは 悲しい人だからだね

             「悲しい人びと」




あれは空から排斥された そんな鳥だ

だから翼があっても 飛べもしない

しかし飛べると思ってるんだろう 

翼があるから

この忌まわしき世界で 明日が光なのだ

それ以外には 求めるものもない

静けさに満ちた 夜の闇の中で

たぶん乾いている。

           「鳥の話」



あの頃の町は 屈託のない笑顔

明るい日差しの中で すべてが緩やかだった

他愛もない話に 冗談と怒りをぶつけて

それが日々の中で 時間に色づけられてた

何も言葉はいらない 気持ちを寄せ合って

そこには確かに温もりがあり 明日が微笑んでいた

時は静かに流れて わたしは振り返っている

              「微笑み」

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