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舞台シリーズ

舞台開演 第二幕 三匹のこぶた

作者: 緑子

忘れた頃にやって来る舞台シリーズ四作目です。

すみません、遅くなりました。m(_ _)m

はい。皆さん質問です。

何故に私は壁ドンされてるのでせうか?

少女漫画定番だよね。愛を告白してくる先輩だとか、嫉妬に狂った幼馴染とか。因みにこの男と私とは一度話しただけのただの先輩後輩以外、何の関係も御座いませんが。

なのに何故壁ドンされて、私の両手が奴の手で拘束されて、しかも残った片手で頬を撫でられているのでせうかーーーーっ!??




「どうしたのですか、シアトリーゼ様?

そうそう今日はご報告があって来ました。僕、正式にハーバルト家の次期当主になったんです。半年前のあの時から貴女に会うのを我慢した甲斐がありました。これからはずっと一緒ですよ」


「え?え?え?」



半年前?……………っ!!



半年前って、あれかー!?







半年前は私が前世の記憶を取り戻した頃で “目指せ、脱大奥!!” をどうするかフラフラ学園内の庭に出ては考え込んでいた。


その日は植込みの近くからシクシクと泣き声が聞こえて来たんで見ると、背中を丸め泥だらけの男の子が泣いていたんだよね。

そこで無視をしてれば良かったんだよ私。

でもついつい声をかけてしまったのが運の尽き。



「そこにいるのはどなたですか?」



気配に気づかなかったのかビックリした顔で振り返った。



「あら?貴方はハーバルト家の、確かミリオン様ですか?」

「は、はい…」



ハーバルト伯爵家の三男のミリオン=ハーバルト君。

私の一つ下で、そんじょそこらの女性では太刀打ち出来ない天使の輪っかのサラサラヘアーとライトブラウンのパッチリお目。ぽっちゃりまでは無いけどふっくら体型で母性本能をキュンキュン刺激させる子狸さんや子豚さんタイプ。

ハーバルト家の三兄弟は学園でもそこそこ知名度はあるんだけど、何故三男がボロボロに?

あの話は本当だったのかな?

ハーバルト家の長男は武術に優れ、次男は学問に、三男は人より多少魔力は有るものの、全て平均以下の凡人で上の兄二人に虐められているとか。話半分で聞いていたけど陰険だね〜。服や顔は泥だらけだし髪もぐしゃぐしゃ、それに殴られたのかお腹や足を庇ってるし。

白い肌は恥ずかしさなのか悲しさなのかピンク色に染まり益々その…子豚さんみたいで…。い、いや、……や、厄介事に関わって…面倒………は……はあ。流石に怪我をした子豚さんを放置するのはアニマルマスターの名が廃る。




怪我をしたミリオン君を支えながらベンチに座らせ、濡れたハンカチで顔の泥を取っているとミリオン君の瞳からみるみる涙が零れてポロポロ落ちて……私より女性的じゃないかコイツ?



「ごめ、ごめんなさい。…ひっく、ぼ、僕出来損ないで…うっ、、ハンカチも汚して、、うっく……何で僕は…」

「ハンカチは汚すためにあるので気になさらないで下さい。それより怪我を手当てしなければ。保健室に行きますか?」

「ひっく、、だ、大丈夫です。僕、治療魔法、使え、ます」

「まあ、凄いですわね」


えぐえぐ泣きながらミリオン君は足やお腹に手を当て無詠唱で治療してるけど、治療魔法は適性が無いと使えない上に無詠唱って何年も修練を積まないと出来ないハズ。どんだけ虐められてたのか、又は身の危険を感じたのかは知らないけどこの子、実は凄かったりする?

私が褒めるとミリオン君は俯きながらポツリと一言。



「……でも他には何も出来ません」

「でも治癒魔法も最初は使えなかったのでしょう?」

「え?ええ」

「ミリオン様は三匹のこぶたと言う物語をご存知ですか?」

「?…聞いたことは無いと思います。童話ですか?」

「ええ。むかしむかしあるところに三匹の兄弟がいました……」




三匹は仲良しでしたが、一番上はいばりんぼ、二番目はずる賢くて、一番下の弟は上の兄二人に、いつもからかわれていました。



「……僕と一緒だ……」



仲良しではないがな。

後は長男の藁の家、次男の木の枝の家、三男のレンガの家と続き、最後には狼を退治して三匹仲良く暮らしていく、というハッピーエンドで終わるお話。

いや〜三兄弟と言う単語と子豚の様なミリオン君見てたら三匹のこぶたの話が頭から離れなかったんだよね〜。



話が終わりミリオン君を見るともう涙も止まって逆に目がキラキラしてるんだけど、童話とか好きなのかな?まあ、ともかく。



「ミリオン様、このお話をどう思いましたか?三番目の子豚は上二人に比べ力も知恵も劣ります。しかし、彼には兄達には無いもの、努力をする力を持っていました。

治癒魔法は適性があっても無詠唱はかなりの努力が必要とお聞きします。ミリオン様も人知れず努力をされてきたのでしょう?三番目の子豚はお嫌いですか?」

「…いいえ。…三番目の子豚を僕と重ねて聞いていました。でも今の僕はまだまだ足りない。僕も三番目の子豚に負けないくらい頑張りたい」

「ミリオン様は大丈夫ですよ」


関係ない人だからこそ言える無責任さでにっこり笑った。






それが半年前、それで終わったはずなんだけど。何か?慰めたらフラグが立ったの?あれから一度も会って無いのに?

今のミリオン君は子豚どころか理想の王子そのもの。私と同じくらいだった身長は頭一つ分抜かれ、ふくよかな体型は引き締まった体に。 あのバカ皇太子より本物っぽいよ。




「あの時の童話と貴女の言葉が心の支えでした。半年間シアトリーゼ様に相応しくなる為に、武術、学問、魔法と学んでいく内にいつの間にか父に次期当主に任命されまして。

ああ、兄達が裏で色々画策していたようでしたが、全て倍返しにしましたよ。何であの愚者達あにたちに怯えていたか分かりません。半年前の自分をなじりたいですね」


私は今のアンタを詰りたいが。


「目的の為にコツコツ努力し、来るべき時の為に万全の準備をする。三匹のこぶたの話は人生の指針の様な話ですね」


あれは、努力をすれば結果が出るという話で誰が下剋上の話をしたか!!私、最後には兄弟仲良く暮らしたって締めくくったよね?兄弟追い落としてどうする!?こいつは三番目の子豚の皮を被った狼か!?



「貴女が皇太子との婚約破棄をしてくれて本当に良かった。色々と策を練っていたのですが……まあ、面倒な事をしなくて済みましたし良しとしましょう」


………何、計画してたの?

つーか、マジでその手退けて!な、何かフェロモン!?いーやー!子豚さんカムバック!手、手が腰に〜やっ、どこ触って、、ひ〜顔を近づけないで〜。



カッ!カッカッカッ!!



「この腐れ外道!!お姉様からその汚い手を外しやがれですわーーっっ!!」



救世主様りな!?助かった〜。ドレスをたくし上げながら般若の形相で此方に向かって来る従姉妹殿の手には万年筆が。ふっと壁を見ると万年筆四本が半ばまで壁に刺さって……ええ、ペン先ではなくて半ばまで。アンタどんだけの力で投げたの!?



「凄いですわ〜リナお嬢様、私が教えたナイフ投げを完璧にマスターしています」

「ほほほ、私がご教授した追跡魔法も使いこなしておりますな〜」

「……護衛対象おじょう、俺より強くなってきてないか?」


リナの後ろから私のメイドと老執事、リナの護衛騎士が追いかけてきている。




「…はー、今回は時間切れのようですね」


ミリオン君は残念そうに呟き人差し指を私の唇に当てると、フェロモン全開で。


「今回は邪魔が入りましたが、今度会った時には覚悟しておいて下さいね。………絶対に僕無しではいられなくしてさしあげますから。…ではまた」




…………………………ナニヲスルオツモリデセウカ?




爽やかにミリオン君が去った後、リナ達が追いつき殺すだの、大丈夫かだの心配する声を聞きながら私はぜんせの事を思い出していた。








前世、演劇部に所属していた私はそこそこ有名だったのであちこちから依頼が来てて幼稚園もその一つだった。

顧問は三匹のこぶたを提案し、採用。しかし時期が悪かった。ちょうど中間試験と被り私達は学業優先です!と訴えたがあっさり却下。

復讐に燃える私達は全て自分達でやり遂げてみせる!と、顧問を遠ざけ当日幼稚園の子供達にオリジナルの三匹のこぶたを上演致しました。





近年では、狼に襲われそうになった一番目と二番目が三番目のレンガの家に逃げ込み、煙突から侵入してきた狼を鍋の熱湯で撃退するという穏健な内容に差し替えられているけど、実際は、一番目と二番目は狼に食べられ、三番目は落ちてきた狼を熱湯でコトコト煮込んで調理し晩御飯に食べたと言うエグい話だったりする。



結果はーーー。予想通り泣き叫ぶ子供達の大合唱。特に三番目の子豚役だった私の迫真の演技は幼心にトラウマを植え付けたようでした。

後に校長まで出て来て大問題になったけどオリジナルを演じて何が悪い!、と開き直る私達の頭上にゲンコツが落ちたのは言うまでも無い。






幼い頃、一番怖いのは狼で三番目の子豚が一番好きだった。


でも実際一番怖かったのは狼を美味しく食べた三番目の子豚で。





その三番目にロックオンされた私はどうなるの?






読んでいただいてありがとうございます。

まだ続きますが不定期です。

精進致しますです。( ̄^ ̄)ゞ

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― 新着の感想 ―
[一言] Youら、もう付き合っちゃいなyo! とまぁこの二人お似合いな気がしなくもなかったり。 主人公にベタ惚れだから浮気の心配なし、伯爵家の次期当主で甲斐性あり、いじめによって痛みや悲しみを知…
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