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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
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第六十八話

 ◆◆◆



 昼間活動するモノはすべて寝静まり。

 夜中活動するモノがうごめく夜の闇。

 月はそれらをほろほろ照らす。

 そんな静寂の中。

 あたかもそこに居たかのように姿を現した黒いローブの者。

 その者は目深にフードをかぶっており、足元には黄色く光る魔方陣。

 これによって地面から数センチ浮いており、足音も衣擦れも聞こえない。

 ローブを着た者はスッと、小さくも無ければ大きくもない、程よい大きさの家の戸口の前に行き、それを叩いた。

 しかし、今は深夜。

 出てくる者などいない。

 ローブの者はこれを知っていたのか、口元に笑みを浮かべ、戸口の真上にある窓を見た。

「『浮かべ。飛べ。我の意のままに』……』

 小さな呟き。

 しかし、足元の魔方陣はこれに反応し、すぅっと上昇。

 ローブの者は、目的の窓に手を伸ばし、触れるか否かで止め、クスッと笑った。

「……こんなの何の意味もないのに」

 そう言ってローブの内側に手を入れ、紅く透き通った鍵を取り出し。

 鍵の先を窓に。

 すると、鍵が当たった場所がぐにゃりと歪み、窓枠の大きさに開き、窓の鍵も開いた。

 満足げに握っている鍵をローブの内側にしまい、その者は窓を開け、ふわりと室内に侵入。

 その後、スッと置いてある寝台に近づいた。

 寝台には肩で切りそろえた、まっすぐな灰色の髪を持った優男。

 彼を見て、ローブの者は足元に発生させていた魔方陣を消した。

 そして、ローブの者は屈んで、彼の耳元で小さく囁く。

 これと同時にローブから、するりと一房流れた、雪のように白い髪。

「……お・き・て…………?」

「ぅ…………。ん~……」

 可愛らしい声で囁かれは方の男は顔をしかめて、顔をそむけた。

「くすっ……。こんなに無防備だと、悪戯したくなっちゃうんだよねぇ~。うふふふ……」

 実に楽しげに静かに言い。

 かぶっていたフードをとった。

 現れたのは長い白の髪に、大きなアイスブルーの瞳を持つ、人形のような少女・クー。

 彼女は左手の人差し指を唇に当て、小首をかしげる。

「なにしちゃおっかなぁ……。ぅ~ん、ウェルのおかげで『魔導師は何をしたら死にかけるか』ってのわかったし。今は実験してないから、実験体必要ないんだよねぇ…………。あ、そうーだ!」

 何かひらめいた様子でにっこり笑うと、ウェルコットの腹にまたがり、軽く腰を下ろすと。

 両手で彼の顔をつかんで顔を近づける。

 すると何かをさっしたのか、ウェルコットがパチッと目を開けた。

 それから、目を丸くしてパチパチと瞬きし――――。

「……?! ぅぎゃあぁぁぁぁあああぁぁ!!!!!!」

 絶叫。

 すかさず頭を置いていた枕をつかみ、接近してくるクーの顔に押し付けた。

 そして彼の絶叫に驚き、血相を変えて駆け付けたシルヴィオたちはこの光景に絶句した。


  

 ◆◆◆


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