第六十二話
これにシルヴィオは困ったように笑う。
「そうだな。俺の大切な兄と、母の愛した国を守るためだ」
「へぇ……お前、ちゃんと家族居たんだな」
「ルーフ。何が言いたいんだ、お前は……」
驚いたような声を出したルーフに、シルヴィオは呆れた。
「いやな。お前があまりにもセメロ公爵家になじんでいたつい、な?」
へラッと笑ったルーフに、シルヴィオはなんとも言えないような笑みを作った。
「あぁ。そうだった、ウェル。お前、寝てないだろ? 先に帰って寝れ」
シルヴィオはそう言って隣に立っているウェルコットに目を向ける。
そこに立っていたウェルコットは、薄暗い中でも分かるほど顔色が悪かった。
「大丈夫か? ウェル」
「大丈夫です。ですが、そうですね。お言葉に甘えさせていただきます」
「あぁ。顔色も悪い。直さないところを見ると、直せないのか?」
シルヴィオの言葉に、ウェルコットは微笑みを浮かべ、ボソッと呟いた。
「…………気づかなくて良いところにはすぐ気づく……」
「何か言ったか、ウェル?」
「あぁいえ。ただ、三日ほど寝込みます」
困った顔で言ったウェルコットは、最後にすみませんと言った。
「そうか。ゆっくり休め。今日は玄関から入らなくてもいい。直接部屋に行って休めいいな?」
「シルヴィオ様……すみません。エドレイ第一王子殿下――――」
「気にしなくていいよ。君は妹の恩人だからね」
そういって前かがみだった姿勢から、背筋を伸ばしたルーフに笑顔で言葉を遮られてしまったウェルコットは、困った顔をして深々と頭を下げたまま、光の柱になって消えた。
光が完全に消えた頃。
ルーフが腕を組んだ。、
「さて、シルヴィオ。話を変えよう。お前にとってアンは何だ……?」
「【大切な妹】だ。決まっているだろう?」
「では。それ以上でもそれ以下でもない。と……?」
若干不機嫌さをにじませるルーフに、シルヴィオは苦笑。
「当たり前だろう?」
「この鈍感め……」
忌々しげに呟いた彼に、シルヴィオは再び苦笑し、困った顔をした。
「お前は俺に、妹に対してそういった類の邪な感情を抱けと?」
「邪じゃねぇだろ? お前とアンは他人だ。わかってるだろう?」
ルーフがムッとした顔で言ったことに、シルヴィオはため息をついて膝に肘を置いて頭を抱えた。
「そんなことは分かっている。だが、俺はアンを大切な妹以外に見れない」
「……そうか…………。このダメ男」
ウェルコットの時と違い、ハッキリ聞こえた呟き。
シルヴィオはこれに顔をしかめた。
「何か言ったか? ルーフ」
「何も。ほら、早く帰って寝ろ。このロンゲ野郎」
「……俺の国の風習だ」
「しらねーよ。ぶわぁか」
しゃくれ顔で言うルーフに、シルヴィオはあきれ果て、深々とため息をついた。
「………………お前ほど馬鹿じゃないと思うが、まぁいい。ではな、ルーフ。今日俺たちに会ったの事。誰にも言うなよ……?」
シルヴィオはそう言って小さく笑うと、ルーフが笑顔で了解という返事を聞いて、彼はソファーに腰かけたままファバルの自室に帰った。




