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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
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第五十話

 教会から直接、ルッティーフ公爵家に乗り込んだシルヴィオ。

 彼が今いる場所は、廊下の突き当り。

 そこに、一枚の肖像画。

 両脇の壁には歴代当主と思われる肖像画が、扉やカーテンを引かれた窓を除いた壁と言う壁に、ずらりと並んでいる。

 シルヴィオは突き当りにある肖像画に目を向けた。

 その絵には、鮮やかな赤髪の緩い巻き毛に、黄色と黄土色の間のような慈悲深い、金色の瞳。

 髪の色に合わせたような真紅のドレスと、銀の鎖に小さな紅い石がついているだけの質素な首飾りに、同じ銀の鎖の先に、これまた同じ小さな石がついた耳飾りを身に着けた、女。

 しかし女と言うより、少女。

 だが少女とも言えなければ、女性とも言えない。

 そんな女だった。

 肖像画の下にはめ込まれたプレートに、【ルッティーフ王国王女・メルフィオナ】とあった。

 この王女はルッティーフ王国最後の王女でにして、ファバル大帝国皇帝の寵愛を一心に受けた、ファバル大帝国后妃である。

 その后妃は二人、子を産んだ。

 そして、その子のうちの一人の子。

 つまりメルフィオナ后妃の孫が、ルッティーフを治めたいと願い。

 時の皇帝から、ルッティーフ公爵と言う地位と、元ルッティーフ王国の城を預かった。

 今のルッティーフを治める公爵は、その子孫だ。

 シルヴィオは、メルフィオナの肖像画をしばらく見た後。

 彼は右手の壁に目を向けた。

 メルフィオナと同じ真紅のドレスに、彼女が身に着けている首飾りと耳飾りを身に着けた、金髪碧眼の淑女。

 その淑女は椅子に座り、椅子の背に片手を置いて立つ、赤い燕尾服を身にまとった、赤髪に若草色の瞳を持つ紳士。

 肖像画の二人は、微笑を浮かべていた。

 すぐ下のプレートには、【第一代。ルッティーフ公爵家夫妻】と書かれていた。

 【第一代】という所で、初めてここを治めた人間と言うことがわかる。

 彼は振り返り、後ろにあった肖像画に目を向けた。

 こちらは【第二代公爵一家】とあり、赤髪に深緑の瞳の紳士と、金髪金眼の淑女、赤髪金眼の少年と、赤髪に深緑の瞳の少女が描かれている。

 彼の左なめ後ろには、【第三代公爵】と書かれた、赤髪に金の瞳の青年。

 おそらく【第二代公爵一家】に書かれていた少年だろう。

 それの正面。

 つまり【第二代】の隣に【第四代公爵】と書かれた金髪に若草の瞳の淑女。

 シルヴィオはそれを一瞥して、肖像画の飾られた廊下を歩き始めた。

 すれ違う肖像画の人間たちは皆、赤色を身にまとい。

 淑女は皆、小さな石の首飾りに、小さな石のぶさかがった耳飾りを着けていた。

 肖像画の廊下を抜けたのか、肖像画が無くなり、窓のカーテンが開いた、明るい廊下。

 彼はそこを、窓から離れて歩いている。

 この付近に人の気配は皆無。

 シルヴィオは風を使い、この城の内部および、外部を把握した。

 この城の城壁の内側に、オグダンの人間数十名。

 城の内部には誰もいない。

(つまり、公爵家の人間もいない。…………やはり、連れ去られたか……)

 シルヴィオは一つため息をつき、壁に寄りかかり、公爵家の人間の居場所を把握するため、意識を風と同調させる。

 しかし、見つけられなかった。

(…………厄介だな。もう少し、範囲を広げるか……) 

 シルヴィオは、本格的に集中して、目的の人間の把握を急いだ。

 途中でウェルコットを見つけたが、公爵家の人間を一向に捕捉することが出来なかった。

 彼が広げている範囲は、どこよりも陸地が多い、この大陸の八分の一。

 つまり、シルヴィオが居たころのファバル皇国の国土分。

 この範囲にオグダン王国は入っている。

(……捕捉できないことを考えると、この範囲外と言うことになるな…………。……あれを出すしかない、か……………………)

 シルヴィオはため息をつき、壁から背を離す。

 それに合わせて、彼の背から黒い片翼が姿を現した。

(なんでこんなもん出さなきゃいけねぇんだよ……)

 チッと舌打ちし、彼は不機嫌そうにして、再び壁に背を預けて、目を閉じた。

 まるで見ているようにはっきり浮かぶ、世界中の映像。

 シルヴィオはその映像の中から、ルッティーフ公爵家の人間を探す。

 途中、エドレイに意識が行きそうになったが、彼はそれを必死に押しとどめ、目的の人間を探すことに専念した。

(見つけた…………! ここは……どこだ…………?)

 彼に見えている映像は、薄暗い場所で、鉄格子。

 中には様々な人や、異形。

 鉄格子の外に、黒いフード付きのローブをまとった、人間たち。

 その中に居た一人の女が歩み出て、鉄格子の鍵を開けると、中から一人。

 幼い少年を連れて鉄格子の外へ。

 待ち構えていた男が何か言うのと同時に、少年から力が抜け、先ほどの女に支えられた。

 この様子に、黒いローブの人間は頷きあってどこかへ行った。




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