第四十六話
「あれ? ねぇルルカ。あの変な人が戻ってきたよ」
「ん? あ、ホントだ。お出迎えしちゃう?」
「しちゃおしちゃお」
ルルカとルルクは無邪気に笑うと、玄関に行き、扉を開けた。
「「おかえりなさい、変な人!」」
「…………シルヴィオだ」
無邪気な二人に、シルヴィオはなんとも言えない顔で言った。
「「あ…………」」
口をぽかんと開けた双子。
しかし、すぐにえへへと笑った。
「ホントの事だもんね」
「うんうん、ルルカの言うとおりだよ!」
ねー、と息ピッタリで言って笑う双子。
シルヴィオはそんな彼女たちを見て、顔に手を当て、頭を振った。
「おい、ルルカク! ちゃんと手伝いしろ!!」
中から、ドタバタと走ってきたフォード。
ふんだんにフリルのついた白のエプロン姿。
手にはお玉。
彼の言葉に、双子たちはムスッとして、そっぽ向いた。
しかも同じ方向だ。
「「『ルルカク』じゃないもんね~だ!」」
「わかった。じゃぁ、双子。手伝いしろ!」
「「終わったもーん!」」
「じゃぁ食器洗って、風呂掃除。おまけにこの家の掃除もだ!」
「「えぇー! お洗濯だけじゃないの?!」」
「飯作って薪割るか?」
「「にくたいろーどは、フォードの仕事! ウチらイヤ!」」
「じゃぁ文句言うな、さっさと行く!」
「「はぁ~い」」
双子は不満そうに返事をして、家の奥に消えて行った。
それを腰に手を当て、見送ったフォード。
「まったく、あいつらはすぐサボろうとする……」
「……お疲れ。フォード」
声をかけられたフォードは、やっと気が付いたのか、振り返った。
「あ、変人……じゃなかった。シルヴィオ、おかえり」
「……あぁ、ただいま」
『変人』の単語が気になったシルヴィオ。
しかし、それをおくびも出さずに微笑んだ。
返答までに少し間が明いたのはご愛嬌……。
「まだ魔導師のあんちゃんと、筋肉の………………どっちだ?」
「一応、生物学上は女だ」
「………………マジ……?」
「あぁ。名前がテファ…………じゃなかった。確か………………」
顎に手を当てて考え始めたシルヴィオ。
そんな彼にフォードは呆れ顔で問う。
「おいおい、覚えてないとかいうなよ?」
「……よし、テファだ。テファと言う」
「いや、お前それ無理やりだろ! 絶対愛称とかだろ!!」
ビシッとお玉をシルヴィオに向けるフォード。
それにシルヴィオは苦笑。
「まぁ、どっちでもいいだろ。気になったら本人に聞け」
「それ丸投げって言うんじゃ……」
「気にするな。で、テファはどこだ?」
「え? あぁ、あの人なら裏の畑」
「そうか。わかった」
シルヴィオはそう言って家の裏にある畑に向かい、ラティたちと一緒に草を抜いているテファに声をかけた。
「どうしたのしーちゃん」
「なんで子供たちが家事をしている」
「どうしてもって言われたからよ?」
「で、お前は庭の手入れと小さい子らの面倒を見ている。と?」
「えぇ。で、どうだったの?」
「アガウの実を混ぜていたが、大したことはない。時間の経過で元に戻る。が、さすがにいつになるか解らない。その現象を止めようにも、ウェルが居ないとこちらに被害が出るかもしれない」
「あれ? 確かその実ってすっごく高くて、それを食べたりしたら体が見えなくなるって実でしょ?」
「あぁ。おまけに、昔使ったやつには劣化などを防ぐモノを入れていない」
「う~ん……てことは、うーちゃんが居ないとできないのね。じゃぁ、うーちゃん連れて来たら?」
「そうしたいのは山々だが、ウェルが掴まらない」
「どういうこと?」
「この国もしくは、この国周辺に居ないってことだ」
「へー、遠くに居るんだ」
「あぁ。それでだ。俺はフェドにあってくる」
「『フェド』って言ったら、ティザオ王国の人でしょ?」
テファの問いにシルヴィオは一つ頷く。
それを見た彼女は「分かった」と微笑んだ。




