第四十話
「さて、もう夜も遅い。寝るぞ。って。おいテファ、テファ!」
シルヴィオはしっかりとした足取りでテファ傍まで行き、肩を軽く叩いて呼びかける。
何度か名前を呼んだ時、テファがハッとした表情でシルヴィオを見た。
「あ、しーちゃん。どうしたの?」
「お前は話を聞いておけ」
「え? あ、ごめんね。聞こえなかったわ」
「……夜も遅い。寝るぞ」
「あら、もうそんな時間かしら?」
「あぁ」
「そう……って、そうよ! うーちゃん、私たちのお部屋はどうなったの?」
勢いよくウェルコットの方を向くテファ。
ウェルコットはテファが、必死になっているように見え、それが少しおかしくて小さく笑った。
「元の位置ですよ」
「? てことは、二回上がって右奥が私のお部屋で、階段上がって前のお部屋がうーちゃん、左奥がしーちゃんなの?」
「えぇ。部屋の内装もそのまま。ただ部屋数が増えただけです。わかりやすいよう。札もかけています」
「そうなの、わかったわ」
テファは嬉しそうに、リビングを出て行った。
シルヴィオとウェルコットは、彼女の様子に、首をかしげる。
「何だったんだ、あいつ」
「さぁ……分かりません」
「あら、多分。思い入れのあるお部屋が残っていたことが嬉しかったのだと思いますわ」
そういったエルセリーネの言葉に、シルヴィオとウェルコットは不思議そうな顔をした。
だが、それもそのはず。
二人の部屋には、机とベット。
その他にちいさな物があるだけで、別段なくなったとしても気にしなかったのだ。
「ダメですね。シルヴィオ様と魔導師様は……。乙女心と言うものをわかっていらっしゃいませんわ」
呆れた。
そう言いたげなエルセリーネに、二人は軽く焦った。
「え、いや。すまんが俺はあのテファを乙女とは……」
「……そうですね。私も、あの状態では…………」
「そのようなお考えは、女性を傷つけますわ」
困り顔で言うエルセリーネ。
そんな彼女を前に、二人の頭に浮かんだ一言。
((面倒))
ただそれだけだった。
そして不自然に無言になった彼らに、エルセリーネが気づかないはずもなく。
「これだから殿方は……。シルヴィオ様、魔導師様。お国にお尽くしになられるものよろしいですが。少しはご自分の将来をお考えくださいませ」




