第三十五話
「まぁ! 良く似合ってるわ!!」
テファが嬉しそうに子供たちに近より、屈んで微笑む。
「おいテファ。子供たちが怖がるから近づくんじゃない」
「どぉして、私怖くなんてないわ!」
「その図体で言われてもな……」
スッと目をそらすシルヴィオ。
テファはそれを見て抗議の言葉を向け、シルヴィオはそれをめんどくさそうに躱す。
その様子を子供たちはポカンとして見ていた。
――三十分後。
「何をやっているんです? テファ、シルヴィオ」
あまり顔色が良くないウェルコットが、子供たちの後ろから声をかけてきた。
子供たちは背後に立つ彼に驚き、勢いよく振り返る。
「もう起きても大丈夫なのか、ウェル」
「大丈夫も何も、この騒ぎのなかで寝るなんて、無理ですよ……」
あきれ顔で言うウェルコットに、テファがしょぼんと落ち込んだ。
「…………うーちゃんごめん……」
「あぁ、気にしないでください。これぐらい回復魔法で何とかしますから」
ウェコットはそういい、回復魔法を足元に展開。
そのおかげで、ものの数秒で悪かった顔色は健康な色を取り戻した。
「さて、全員揃ったんだ。晩飯食うぞ」
シルヴィオはそういって踵を返すと、その後ろにテファが続いた。
どうして良いか解らず、戸惑いっていた子供たちはウェルコットに促され、少し遅れて食卓を囲んだ。
子供たちは目の前に並ぶ数多くの食事に、目が輝く。
しかし、すぐに食べず、フォードが一品ずつ毒見して終わってから、子供たちはそれを頬張り始めた。
シルヴィオとウェルコット、テファの三人は食事をとりつつ、その様子を微笑ましく見ていた。
そして、テーブルに並んでいた食べ物たちはあっという間に片付き、ラティが眠そうに目をこすり。
ラティと同じくらいの男の子二人のうち、濃い金髪の子は確実に眠り、ウェルコットが治療した金髪の子は鳶色の瞳がとろんとして、うつらうつらと船をこいでいた。
これを見たフォードと双子が顔をほころばせ、立ち上がって傍に行く。
「ラティ、眠い?」
双子のどちらがラティの傍に行って声をかけた。
その間に、フォードは完全に眠っている子を抱え、双子の片割れは船を漕いでいる子を少し起こしておんぶした。
「んー……。だいりょぶ……」
「全然大丈夫じゃないじゃん。ほら、ラティおいで」
小さく笑う双子のどちらか。
「むー……。るーか?」
「あはは、ルルクだよ」
「うー……」
「ほら、乗って」
そう促して屈むルルク。
ラティは観念したのか「むぅぅ……」といいながら、ルルクの背に乗った。
「ウェル、部屋に案内してやれ」
「はい。シルヴィオは早く風呂に入って着替えることをお勧めします」
「そうしたいのはやまやまなんだが、あいにく服がなくてな」
「……分かりました。私のを持ってきます」
「あぁ、頼んだ」
「まったく、どうして子供達の服を買いに行ったときに買ってこなかったんです?」
「はは、忘れていた」
笑っていうシルヴィオに、ウェルコットは大きくため息をつくとリビングから出て行く。
「あいつに付いて行くと良い」
「え? あ、あぁ」




