第二十四話
シルヴィオが見たところ、ウェルコットに疲労の色はない。
そして、ここは奪われていたファバル皇国の国境。
「ところで、そんなに連続で使って大丈夫なのか?」
彼はそこから見える敵兵を見たまま、言った。
「何がですか?」
「……体力」
「あぁ。大丈夫です。回復魔法も同時進行で発生させていますから」
微笑みを浮かべたウェルコット。
シルヴィオはそれを聞いて頷いた。
「では。攻撃をやめ、防御壁を張れ」
シルヴィオはそういうと、抱えている小瓶の中の一つを風に運ばせ、残った小瓶たちを足元に置いた。
「シ、シルヴィオ。あなたまさか、それを『このまま放置する』とか言いませんよね?」
「当たり前だ。大事な実験道具だからな」
ニヤリと笑った彼にウェルコットはため息をつき、頭を抱えたが、すぐさま攻撃を止め、シルヴィオに言われた通り防御壁を展開させた。
「これで良いですか?」
「良いと思うか?」
「私が聞いているのですが……」
「言っておくが、何が来るか分からないからな?」
あっけらかんとしていった彼に、ウェルコットは顔をひきつらせ、その後。
右手を前に差し出した。
「『我、天に作られし物。天よ、哀れな我に守りの力を与えたまえ。我願うは、すべてを守しり鉄壁の壁』」
ウェルコットの言葉と同時に、透き通った薄い緑の膜が現れ、その膜はファバル皇国を覆う。
シルヴィオは見える範囲でそれを確認し、敵上空に飛ばしていた小瓶を落下させた。
――――ドォォォォォオォン
小瓶は地面に落ちると同時に激しく発光し、炎を上げ大爆発。
同時に爆音と爆風が広がった。
その衝撃を物語るよう、落下地点には大きなクレータが出来きていた。
しばらくして、ウェルコットが息を切らして座り込んだ。
「昔と威力が格段に上がっているな」
あの小瓶の中身は、作った当初は、小さな火花と音が出るだけだった。
「シルヴィオ。まさか、あれも、宝物庫に入れていた。なんて、言いませんよね?」
「ん? あぁ、あれ。お前が踏みそうになった奴」
「?! 嘘、ですよね……?」
顔をひきつらせたウェルコット。
シルヴィオはそんな彼に目を向けた。
「本当だ。……にしても、お前が何か言いながら術を使うのは何年ぶりだ?」
「…………『何年ぶり』って……。昔、どこぞの皇子様に『成長過程をこじらせたみたい』って言われましたからねぇ。えぇ。もちろん『誰に』とは申しませんがね!」
いつの間にか回復したウェルコットが、ギロリとシルヴィオを見上げる。
シルヴィオはその視線を受け、そういえば、と苦笑した。
明後日ぐらいにまた投稿します。
ここまでよんでくださり、誠にありがとうございました。




