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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
33/185

第六話

「ところで話は変わるんだが、兄上には子がいるのか?」

 立ち止まり、若干口調を変えたシルヴィオ。

 そんな彼の背に張り付いていたウェルコットは、軽く驚いた後。

 彼の背から手を離し、口元に笑みを浮かべた。

「……いますよ。五歳になられる皇子が」

「そうか……」

 なんとも言えない顔をするシルヴィオ。

 ウェルコットはそんな彼の前に出て、顔を合わせた。

「それがどうしたんですか? シルヴィオ」

 ウェルコットはシルヴィオの口調の変化を見逃さず、彼を『殿下』と呼ばず、あえて名前で呼び、微笑んだ。

 その様子にシルヴィオは軽く目をみはり、なんとも言えない顔のまま、笑みを浮かべた。 

「あぁ。ちょっと前に、な……」

「会いにいきますか?」

「そうだな。まぁ、考えておくさ。で、ウェル。お前は本当に運が良いな」

「何がです?」

 怪訝そうに顔を歪めるウェルコット。

 「この流れ的にわかるだろう」と言いたいシルヴィオは、小さく笑った。

「俺、さっき危険物の話したろ?」

「はい。聞きましたよ?」

「お前、あと一歩で踏んでたからな」

 笑いをこらえるシルヴィオに、青ざめるウェルコット。

「………………やっぱり私、帰っていいですか?」

「じゃぁ、俺はどこかに行こうかな」

「そんなのダメに決まってるじゃないですか……」

「大丈夫。三千年したら戻ってくる」

 さらりと言ったシルヴィオに、ウェルコットはとうとう頭を抱えてため息をついた。

「……あのね。いくらなんでも、そのころにはもう死んでるでしょうが!」

 怒鳴ったウェルコットに、彼は声をあげて笑うと、表情を引き締めた。

「にしても、大胆な犯行だな」

 シルヴィオは辺りを見回していうと、ウェルコットは不思議そうな顔をした。

「何がです?」

「お前なぁ…………見たらわかるだろうが……」

「だから何がです!」

「……宝物庫の中身」

「? そんなこと言われても、私には宝石にしか見えませんが?」

「………………お前、ここに入るの何回目だったっけ?」

「今回が初めてです」

 そう言ったウェルコットの言葉に、シルヴィオは絶句。

「…………まぁ、いい。とりあえず犯人を見つけたい。やってくれるな?」

「もちろんですよ」

 ウェルコットは笑って言うとシルヴィオに背を向け、何もない空中に右手を突き出す。

 同時に彼の周りに青白く光る魔方陣が四方に展開。

 その後。それらは広がり、宝物庫内を覆った。

「さて、これで準備は終わりましたよ。何が見たいんです?」

「そうだな。俺が最後にここに入った時が見たい」

「わかりました」

 ウェルコットが返事をしたのと同時に、宝物庫内に展開していた魔方陣は宝物庫と一体化し、消えた。

 そして、火薬やら猛毒やらで作った危険物を大量に抱えた少年が現れた。

「…………シルヴィオ。あなたどれだけここに持ちこんだんですか?」

 そう言って冷たい目でシルヴィオをウェルコットに睨まれた。

 しかし、シルヴィオはそんなものどこ吹く風。

「さぁ? 俺の部屋に入らなくなったから、適当に放り込んでいただけだからな」

「『適当に』って……シルヴィオ。あなたは自分が作った物がどれほど危険か分かっているんですか?!」

「ウェル。そんなに怒鳴るなよ……。大体、暴発したわけじゃなし」

 あきれ顔でシルヴィオは、怒鳴り散らすウェルコットに言った。

「したでしょうが! それのせいで国が一瞬で消し飛んだのを忘れたんですか?!」

「いや、だからあれは新しいやつを作ろうとして――」

「失敗したんでしょう! 変わりないじゃないですか!!」

 話を遮られ、真実をつきつけられたシルヴィオは「そうだけどさ……」と言ったはいいが返す言葉もなく、口を閉じて宝物庫の中を動き回る、かつての自分自身を見た。

「早回しはできないのか?」

 しばらく沈黙した後。

 彼はウェルコットに言った。

「できますよ。した方がいいんですか?」

「あぁ。俺がここから出て行ったあとが知りたい」

「……分かりました」

 ため息交じりにウェルコットは言うと、再び右手を宙に突き出した。

 同時に、危険物を抱えた幼いシルヴィオがとてつもない速さで動き、抱えていた危険物をすべておいて出て行った。




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