第五話
彼らをポカンとして見送った兵士たち。
しばらくして、シルヴィオの言葉を飲み込んだ彼らは皆。
顔面蒼白で震えていた。
そんなことを知らないシルヴィオと、ウェルコットは宝物庫の中を進む。
「で。何故宝物庫なのです?」
「帳簿の明らかかつ、大胆な不正を見つけた。だからもしやと思ってな」
シルヴィオは後ろを歩くウェルコットの方を向かず、正面を向いたまま答えた。
「いえ、まぁ……それもですけど。何故、危険物とわかっているものを宝物庫などにしまったのですか。と聞いているんです」
「あぁ、罠のためにな」
幼いころのシルヴィオは国宝を守るため、それらを宝物庫に入れたのだ。
もちろん、侵入者を撃退するためだ。
「…………この国を吹き飛ばすおつもりですか……?」
「お前は心配し過ぎだ」
シルヴィオは真剣な声で言うウェルコットに、呆れた。
「そんなこと言って! 隣国を消し飛ばした人が何を言いますか!!」
「なんだ。知っていたのか?」
飄々というシルヴィオ。
彼は以前。
隣国・ロッタム王国に囚われていた。
しかしその国は一年後に、彼が作った危険物の暴発によって一瞬にして消し飛んだ。
「当たり前です。しかもそのあとすぐに姿を消して! どれほど私が心配したと思っているんです!!」
「すまんすまん。丁度いいと思ったんだ」
「だからと言って何も言わずにいなくならないで下さい!!」
「だからすまないと言っているだろう?」
飄々としていったシルヴィオ。
ウェルコットはそんな彼に怒鳴ることをやめない。
「反省しているように見えません!」
「当たり前だろ? 反省などしていない」
「少しはしてください!!」
「考えておく」
「いいえ! 今すぐ実行してください!!」
「あ~はいはい」
いかにもめんどくさそうにシルヴィオは返事をする。
ウェルコットはそんな彼に文句を言うため口をひらく。
「殿下。いいですか――」
「まぁ、どうでも良いが足元。気をつけろよ」
「へ?」
唐突に意味深なことをいうシルヴィオに、ウェルコットはポカンとした。
シルヴィオは背後にいる彼が、混乱していることを雰囲気で悟り、つけたす。
「さっき俺が作ったヤツが転がっていたからな」
「ひぃ…………」
「背中に張り付くな。年上の威厳はないのか……?」
「そんなもの貴方の側近をすると決めたときにかなぐり捨てましたよ!!」
「………………………」
早口にまくしたてるウェルコットに、シルヴィオはなんとも言えない表情で深々とため息をついた。




