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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
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第三話

 ウェルコットは軽く目をみはり、微笑んだ。

「それにつきましては、私が知っております」

「そうか。では、それも頼んだぞ」

「かしこまりました」

 シルヴィオは、深々と頭を下げるウェルコットに一つ頷き、一瞬で宮殿に向かった。

 残されたウェルコットは、彼が姿を消したのを見計らって顔を上げる。

 彼の表情は、なんとも言えないほど複雑そうだった。


  


「さて。裏帳簿だの、横領だのが無ければいいんだがな」

 小声でそういったシルヴィオの前には、大きく、厳重な扉があり、その前には二人の兵士が立っていた。

 シルヴィオはそれを気にせず、近づき、扉に振れる。

 そんな彼に、二人の兵士は顔を強張らせ、慌てて首を垂れた。

「ご苦労」

 シルヴィオはそれだけ言って、扉を押し開く。

 扉は貫録のある音をならし、彼が中に入ると、また同じ音を立て、重々しく閉まった。

 室内は、書類や帳簿が備え付けの棚に入りきらずに、床に積み上げられている。

「…………この中から探すのか……」

 彼は紙の山を目の前にうんざりして、うなだれる。

 しかし、行動を起こさなければ時間の無駄だと、近くにあった帳簿を手に取った。

「十五年前、か……」

 そういって、それのページを軽くめくる。

 最近のならまだしも、なぜ。入り口付近に十五年前の物があるのだろう。

 そんな疑問がシルヴィオの頭をかすめ、もう一冊あった帳簿を手に取った。

「これは……十六年前?」

 軽くめくって内容を確認。

 シルヴィオは頭を抱え、身近にあった様々な書類から何やらを調べ始めた。

「えっと。最近の、最近の…………………………無いな……。奥か?」

 ひとしきり入り口付近を調べた彼は、徐々に部屋の奥の方を調べた。

 が、見つからない。

 一番新しいものでも、六年前までしかない。

「おっかしいな……。確かここにしまうようになっていたはずだがな」

 シルヴィオはここまで考えて、自身が居なくなった後、変更になったのだろうと考え、手にしている六年前の帳簿を確認。

 なんとなく、近くに置いていた十六年前の帳簿を開いた。

「………………」

 次は七年前の帳簿。

 彼はそれを開いたまま八年前、九年前と、徐々に帳簿を遡る。

 その途中。

 年は違うものの、同じないようの帳簿をいくつか見つけた。

「…………はぁ……こんな解りやすい不正。兄さんが見逃すはずはないと思うけど………………って、そうだった……。兄上が皇帝になったのは三年前だったな……」

 シルヴィオは、エルセリーネが見た風景をおもいだした。

 彼女の記憶では、どうやら前皇帝は年齢からくる病によって床につき。

 その後、実子に看取られたようだ。

 その時のゼフェロスとイルシールの表情は、とても複雑そうだった。

(まぁ、当然かもな。兄上たちは臣民の暮らしすら顧みない、前皇帝の行いを嫌っていたからな)

 と。そこまで考えて、シルヴィオはハッと顔を上げた。

「まさか……………………!!」

 シルヴィオは室内を慌てて飛び出し、廊下を駆け抜ける。

 目指すは宝物庫。

 血相を変えた彼とすれ違う人々は、何事かと目で追った。

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