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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
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第一話 

 他国に浸食され、縮小された国土。

 目の前に広がる荒野。

 そこに転がる人間の骨。

 数年前まで、この国は大国で緑にあふれていた。

 かつての姿を知る男は、茫然とその現実を見つめている。

 彼の名は、シルヴィオ。

 風を自在に操る、方翼の化け物。

 彼はその翼で飛翔することは不可能。

 だが、思い通りの場所に一瞬で移動することが可能だ。

 彼はその力を使い、草原が荒野になった原因たちがいる、王都を目指した。

 そして王都に着いた彼が目にしたものは、焼け焦げ、がれきの山となっている多くの家屋かおく

 あまりのことに絶句する彼の周りには、武器を手にした人間たち。

 彼らは突然仲裁するように現れた彼に、驚き、動きを止めた。

 シルヴィオは彼らの顔を見て、心にあった悲しみと、憤りが増した。

「兄上、兄さん。いい加減にしてください。民の嘆きが聞こえませんか?」

 二人の兄に向けた言葉と、冷たい声音。

 それを風に運ばせた。

 兄たちからの返事を期待したのだ。

 しかし、いくら待てど返事はこない。

「……そうですか。では、エルセリーネ。彼らをここへ」

 彼の言葉で、強い風が、がれきと化した王都に吹き抜けた。

 砂がその風に巻き上げられ、舞う。

「お久しゅうございます。ゼフェロス兄上、イルシール兄さん」

 砂埃がおさまるころ。

 彼は目の前で固まっている兄たちに冷たく言った。

 二人の兄は、驚愕の表情で彼の言葉を受け止める。 

「シルヴィオ……なのか?」

「えぇ。私ですよ? 兄上」

 茫然とする、豊かに波打つ長い金髪の男に、少々笑っていった。

「しかし、シルヴィオは死んだはずです」

「残念ながら、私はしぶとく生きていますよ。兄さん」

 訝しげに柳眉を寄せる白銀の長髪直毛の男に、彼は冷たくいった。

 先ほどまで静まり返っていた、周りの人間たちがどよめく。

 シルヴィオはため息をついた。

「兄上、私は言ったはずです。『民の声を聞け、家臣の傀儡となるな』と。それに兄さん。あなたにも言いましたよね? 『兄上を裏切ったとき、それすなわち国の終わりだ』と」

「「………………………………」」

 まっすぐに見つめるシルヴィオに、二人の兄たちは目を見開き…………涙を流した。

「本当に、シンディなのだな?」

「……この外見を捨てることが出来ればどれほど良いでしょうねぇ」

 信じられないという顔のゼフェロスに、シルヴィオは忌々しそうに言う。

 そんな彼を見たイルシールが、少しだけ悲しい顔をして、ゆっくりと口を開いた。

「シンディ。そんなことを言わないでください。私たちは嬉しいのですよ?」

「……ですが、本当の事です」

 ついっと目をそらしたシルヴィオ。

 イルシールは軽くすねた様子の彼に、微笑んだ。

「ふふ。私はあなたのその姿、好きですよ。おかえりなさい。シンディ」

「あぁ。良くぞ生きて戻った」

 ゼフェロスがイルシールの言葉に頷き、口元に笑みを浮かべた。

 と。ここでシルヴィオの頭に疑問がわく。

「兄上、兄さん。なぜ内戦を起こしたのですか? なぜ、豊かだった国土はこれほどまでに荒れ、縮小しているのです?」

「え、えぇっと……。だよな、イルシール」

「そうですね、ゼフェロス」

 ゼフェロスとイルシールはそう言って、一緒になって乾いた声で笑い出した。

 もちろん、訳の分からないシルヴィオには憤りが増すだけだ。

 しばらく待っても笑うことをやめない兄たち。

 そんな彼らに対し、シルヴィオの憤りが爆発しそうになった時。

 突如として、彼の隣に淡く光る円の中に模様が書かれものが浮かんだ。

 円陣は幾重にも重なり、柱のようになった。

 そして、そのなかから微笑みを浮かべた男が現れた。

「おかえりなさいませ、シルヴィオ様」

「……あぁ、今戻った。ウェルコット」

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