愚者の幼少期
高い位置に窓がある広間。
その奥の方。
他より数段高くなっている場所にある玉座。
それにゆったりと、初老の男性・ファバル皇国第十四代皇帝が座している。
彼が見下ろす先。
並んで片膝をつき、首を垂れる豊かに波打つ濃い金髪の青年と、直毛の白銀の青年。
金髪の青年が第一皇子。ゼフェロス・アイラス・ファバル。
白銀の青年は第二皇子。イルシール・カディオ・ファバル。
母の違う同い年の皇子。
正妻の子のゼフェロス。
妾の子、イルシール。
彼らの数歩程後ろには、淡い金髪を持つ幼い少年。
今は亡き皇帝の妹。
ディティア・ラシュ・ファバルが、異形の者と交わり産まれた子。
シルヴィオ・レファニア・ファバルが、同じように頭を垂れていた。
彼は母亡き後、第三皇子に迎えられた。
「第一皇子よ。そなたには時期皇帝として必要な知識を学び、第二皇子は時期王の補佐を行え」
皇帝の平坦な言葉に二人は『御意』とだけ返事をする。
彼らの返事に小さくうなずいた皇帝が、幼いシルヴィオに目を向けた。
「第三皇子。そなたは今日中に東の国境へ向かい、すべてを片付けよ」
「「?!」」
シルヴィオが反応する前に、ゼフェロスとイルシールが驚愕し、勢い良く顔を上げる。
「陛下。お言葉ではございますが、第三皇子はまだ七つにございます」
ゼフェロスがまっすぐ、玉座に座る皇帝に見つめる。
彼の主張にイルシールは頷き、口を開く。
「そうです。幼子を戦地に出すなど、周辺の国々に侮られます!」
語彙をやや荒げた彼を、皇帝は無表情のまま見下ろす。
「それが……なんぞ…………?」
だるそうに言う皇帝に二人は唖然とし、言葉を失った。
二人の皇子は悔しそうに顔を歪め、再び頭を垂れる。
「第三皇子よ」
「御意に従います」
シルヴィオは凛とした声音で、迷いなく答える。
彼の返事を受け、皇帝は頷くと、玉座から立ち上がって退室していった。
それにならってシルヴィオたちも退室する。
「何ということだ。あの人は何を考えているんだ!」
興奮し、声を上げるゼフェロス。
彼と同じくイルシールも憤りをあらわに口を開く。
「まったくです! 七つになったばかりのシンディに、死ねなどと!!」
「……ゼフェロス兄上。イルシール兄さん。すれ違う召使たちが怖がっていますよ?」
シルヴィオは普段から温厚で通っている彼らに伝える。
「「そんなことどうでもいい!!」」
双子のように息ぴったりに怒鳴る二人。
めったに声を荒げることのない彼らに、シルヴィオは軽く驚き、笑った。
「兄上と兄さん、双子みたいに息ぴったり」
「笑っている場合か! シンディ。お前は戦地に行くということがどういうことか分かっているのか!!」
「ゼフェロスの言うとおりです! 死ぬかもしれないんですよ!!」
シルヴィオは腰を折った二人に詰め寄られ、焦って両手を顔の前で広げる。
「だ、大丈夫ですよ。何と言っても、私は化け物ですから」
微笑んだシルヴィオに、二人は悲しそうに顔を歪めた。
何か言いたそうな彼らに、シルヴィオは静かに言う。
「兄上。一国の王とは優しく、民の声に耳を傾けるべきです。しかし、それと同時に冷静で冷酷。何より非情でなくてはなりません」
そしてシルヴィオは、まっすぐゼフェロスの瞳を見つめた。
「はっきり言わせていただきます。あなたは優しすぎる。このままでは皇帝となったとき、あなたは家臣の傀儡となりかねない」
ゼフェロスは、彼に言われた言葉に唖然としていた。
「兄さん。あなたもです。皇帝の補佐という仕事は賢い兄さんにはうってつけです。ですが、兄さんがもし、兄上を裏切ったとき。それすなわち、ファバル皇国の終わりを意味します」
真剣な顔で、シルヴィオの言葉を受け止めるイルシール。
シルヴィオは二人兄の反応に、口元に笑みを浮かべる。
「私はただの化け物。ですが、何があろうと私は、兄を傷つけたりはしません。絶対に。それに、あなた方の盾となって死ねるなら、私は幸せです」
彼はそう言って、二人の間をすり抜けた。
こんなダメダメな小説を読んで下さり、誠にありがとうございます!
こんな感じで誤字脱字とかいっぱいです。
基本。気づかないと直しません<(_ _)>




