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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の歩
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第十七話

「もういいから寝ろ。まだ本調子じゃないだろ」

「はは、わかった。休む」

 ルーフはそういって、のそのそと布団に入り、笑う。

「ロイド。俺のことはもう大丈夫だ。だから、アンのところに行ってやってくれ」

「……そうしたいところだが、アンのいるところが解らない」

「外にいる俺の衛兵に案内させればいい」

「『仕事放棄はできない』と言われるのがおちだろ」

 ロジャードは顔を歪めて、布団に入ったルーフを見る。

「よし! 俺がアンのいるところに案内してやろう!!」

 『待っていました』と言わんばかりに、むくっと上体を起こしたルーフ。

「…………わかった。案内しろ」

 絶対安静のはずの彼に、ロジャードはため息をついて呆れ、その主張に折れるしかなかった。

「にしても、お前が初対面の相手に取り乱すなんてな」

「話を戻すな。キュートなそばかす王子」

 ロジャードはため息をついて、昔作ったあだ名を呼ぶ。

 これにルーフは顔をゆがめ、布団から出てベットの端で再び変な胡坐をかく。

「いい加減その長いあだ名やめろよ」

「お前にピッタリじゃねぇか」

「キュートは余計だ。それに、結構気にしているんだぞ」

 ルーフは顔のそばかすを撫でる。

 それを見て、ロジャードは肩からはみ出た長い髪を後ろに払った。

「そんなことどうでも良い。さっさと靴を履け。行くぞ」

「はいはい。解りましたよーっと」

 胡坐をやめ、靴下をはき始めるルーフ。

 ロジャードはソファーから立ち上がり、寝室を出ていく。

 それを見て、ルーフは慌てて靴まで履き、彼の後を追って寝室を出ていった。





 ルーフの案内で衛兵数人に守られ、スティアナ王女の私室についた。

 部屋の扉をルーフが開けたため、少し離れたところにいたロジャードにも、ちらりと室内が見えた。

 ソファーに座り、この部屋の主。

 スティアナ・アン・エドレイが泣いていた。

 彼女の左側に慰めるリルアーと侍女二名。

 右側に、涙を堪える王妃。

 ルーフはその部屋に入っていった。

「アン。なんで泣いているんだ?」

 アンは泣きはらした顔を上げ、王妃とリルアーはルーフを驚愕の表情で見ていた。

 しかし、ロジャードに見えたのはそこまでで、室内に控えていた侍女が扉を閉める。

 数十秒後。

 彼女の部屋から退室する侍女達の中の一人に、「室内に入るように」といわれたため、入室する。

「失礼いたします。王妃様、スティアナ殿下」

 ロジャードは入室し、彼女らのいるソファーから、十歩ほど距離を置き、ひざまずいて首を垂れる。

 同時に、ロジャードの長い髪が肩を流れ落ち、彼の顔を隠した。

「単刀直入に聞きます。なぜ私たち母子の前で倒れたはずのルーフが、ここにいるのです?」

 泣くまいとする王妃の問いに、ロジャードはいった。

「解毒薬を作り、解毒したためです。陛下も今頃は毒が抜けていることでしょう」

「それは、誠、ですか……」

 震える声で問う王妃に、ロジャードは顔を下げたまま、返事をした。

 王妃は彼の言葉でアンの部屋を飛び出していた。

「ロイド。母さんはエルーが、病み上がりの陛下を絞めつけてないか心配だから行くわね」

 リルアーが微笑み、王妃の後を追って室内を出て行く。

「じゃ、俺も。ロイド送ったし、帰って寝る!」

 不自然に、いそいそと出て行こうとするルーフ。

 そんな彼を不思議に思ったが、毒のせいでまいっているのだろうと、考える。

「だから大人くしてろといっただろう」

「はは、アンに元気ってことを伝えたかったんだよ」

「……そうか。送ってやる」

「大丈夫だ。誰かさんと違って剣は持っているし、俺の衛兵がついて来ていただろう?」

「………………」

 ぐぅの音も出ずに沈黙するロジャード。

 ルーフはそんな彼を指さして腹を抱えて大笑いし、部屋を出ていった。

 さり際に、「そろそろ立てば?」と言われ、ロジャードは立ち上がった。

 そしてこの室内に残された二人。

 居心地の悪い沈黙が場を満たす。

 部屋の主のアンはなぜかずっと俯いたまま。

(具合が悪いのか? いや、それだったら腹を抱えるか?)

 原因がわからず、彼は顎に手を当て考える。

(まさか『泣き顔を見られたくない』とか? いや、それはありえないか。アンは泣き虫だもんな)

 ロジャードはそこまで考え、体の不調かと頭を悩ませる。

 しばらく考えたが、謎は解けない。

「あ~、アン。何処か痛いのか?」

 情けないが、この言葉しか出てこなかった。

ここまで読んで下さり、誠にありがとうございました。

今日は以上です。

明日もまた、編集して投稿する予定です。

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