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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
181/185

後日談 めり

 ふと、手向ける花すら持ってきていない事に気づき、やってしまったと苦笑して、父さんの墓前に膝をついた。 


「すみません、父さん。花を買ってくるのを忘れてしまいました」

 

 そう言って、フッと。

 母さんならきっと『気にしないでいいのよ。あなたに会えたのが嬉しいの』と言って、あの笑顔を見せるのだろうな。 


 いつも、そう言っていたから……。


 彼らが存命の時は、時間を見て。

 たまに会いに行っていた。

 まぁ、主に。

 仕事仕事とうるさいダルガロから逃げて、なのだがな……。

 

 そのせいもあって、手ぶらで訪れることもあった。

 これに気づき、慌てて玄関先から立ち去ろうとすると、いつもニコラに見つかったものだ。

 

 そんなあの子も年を取り、逝ってしまったが……。


 あぁ。

 そう言えば、ニコに会いに行かずに国を出てしまった…………。

 あの子の事だ。

 きっとあちらで、拗ねていることだろう。


 だが。

 そうなるとリディが泣きついてくるはず。

 なのに、それが来ていない。

 これはどういうことだ……?

 ニコはリディ。

 つまりは【創世の異形】と呼ばれる四番目、リティエルの【特別】。


 『兎の異形は世界にただ一人だけ。それが死んだらそれが転生するまで生まれない。だからニコラはリティの【特別】』


 そう、アルティファスが言っていた。

 だから以前。

 ノエルが描いたニコラの絵を見つけ、それをエドレイに寄付した時。

 酷く拗ねて口も利かなかったと聞いた。

 この時。

 アルティファスも泣きついて来たが、ノーカウントだ。

 

 あぁ、ヤバイ。

 あのバカの事を考えたら――――


「はぁい! シルヴィオ、呼んだ? ねぇ、呼んだ? 呼んだよね!」


 …………なにやら幻聴が……。

 とうとう耳に寿命が来たか?

 いや、頭のどこかだろうか?


「ちょっとぉアルぅ~、置いてかないでよぉ~!」


 あぁ。

 頭の逝かれた人格破綻者の声まで…………。

 やはり俺の耳がおかしいのだろうな。

 何百生きてるか忘れたが、酷使し過ぎたのだろう。

 特にこの、女装趣味でハイテンションな人格破綻し腐った奴のせいで……。

 

「どぉしたの~? しーちゃん顔死んでるぅ~!!」


 きゃははっと笑う変態。


「ホントだ! あ、そうだ! ねぇ、クー。その手に持ってる荷物投げつけちゃぇ!!」


 楽しそうな【神(笑)】。 


「あ、それ良いね! うおりゃっっっ!!」


 ――グオン


 そんな音を立て、飛んできた物体。

 それは良く見慣れたものだった……。

 俺はそれを風でやわらかく包み、地面に寝かせて軽く頬を叩いた。

 しばらくして。

 それは小さく呻き、上体を起こした。


「おや、シルヴィオではありませんか。どうしたのです?」

「いや……どうしたって、お前。俺のセリフだぞ?」

「え? あ、あぁ。確か、シルヴィオに水を落とされて、首がやられて――――どこからか湧いた屑と目前の屑に意識を刈り取られて……」

 

 頭に手をやっていた、投げつけられた物体ウェルコット

 彼はそこまで言った時。

 何かを思い出したのか、雰囲気が酷く物騒なものに変わった。 


 あ……。

 これはまずい……。


 そう思った瞬間。

 【神(笑)】と人格破綻者の変態は足だけを地上に残し、地面にめり込んだ。

 

「…………おい、ウェル」

「はい。なんですか? シルヴィオ」

「(目が笑ってないぞ……?)………………場所をわきまえてくれ……」

「あぁ、すみません。直ぐにこのゴミ屑どもを処分してまいります」

 

 ウェルは笑顔でそう言うと変態どもをの足を掴み、消えた。


 もちろん、変態どもがめり込んだ大地は元通りに戻して、だ……。


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