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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
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後日談 帰郷

 王都の人気のない路地裏に移動し、がやがやと賑わう大通りを歩く。

 顔を上げれば、ルファネスが生きていた頃には良く訪れたエドレイの城。

 その敷地にある墓地に、彼は眠っている。

 

 ルーフはもう。

 生まれ変わったであろうか……?


 ふとそう考えたが、『ありえないな』と頭を振った。


 アルティファスが言っていた。

 『人間の転生待ちは大量にいるんだ。でも、動物の転生ならすぐにできるよ』と。

 だから、ルーフには口うるさく『何が何でも人間で戻ってこい。そうでなければ許さん』とな。

 『動物で戻ってきたら即、転生させる』とも。

 

 あいつは今際の際ですら、『分かった分かった』と言うばかりだった。

 本当に、分かっているのだろうか……?

 うむ。

 あいつは馬鹿だからな……。


 そう考え、城を見上げていると、ついつい笑みがこぼれた。


 あの破天荒な友に、再びまみえたいものだ……。


 なぁ、ルファネス。

 お前は今。

 何をしているのだろうな……。


 俺はお前の居なくなった城に。

 お前の眠る墓に…………踏み入ることはあってはならない。


 お前が居なくなったことで、俺は王家にかかわりのない他国の人間だ。

 だからここから、お前の墓をまいらせてもらうぞ?

 許せ、ルファネス……。

 駄々をこねて、ダンドルディック達を困らせるんじゃないぞ?

 だが。

 アルティファスなら、盛大に困らせてやれ。

 俺はその屑のせいでさんざん迷惑をこうむったんだからな……。

 それだけだ。

 またな、ルファネス。

 

 そう、口に出さず城に向かって微笑み、踵を返し。

 人気のない路地裏に戻り。

 父さんと母さん。

 公爵家に居たころの懐かしい面々に会うため、彼らの眠る教会の墓地に向かった。


 墓地は墓地らしく、静かだった。

 俺はそこを歩き。

 一つの墓標の前で止まった。


 その墓標は【エルウィス・セロメ】。

 左隣には母さんの名の、墓標。

 右隣りには【ノエル・ルイダス】。

 セメロ公爵家執事。

 彼は、何かと父さんに呆れかえっていたが、父さんが逝った一年後。

 まるで後を追うように逝った。

 死ぬ間際に『エルウィスの隣に』と、言い残して……。

 

 ウィルロットはその言葉に従い、彼を父さんの右隣に眠らせた。

 泣きくれる彼を、アーニャさんは抱きしめ。


『そんなに泣かないで。あちらの彼が心配してしまうわ』


 そう言っていた。

 まぁ、そうだよな。

 アーニャさんは人間ですらない、創世の異形。

 あちらとこちらを自由に行き来できる六人の中の一人。

 俺はここまで思い出し、思い出すことをやめ。

 目の前の墓標に微笑みかけた。

 


「ただいま。父さん、母さん。皆……」

 

 もちろん、帰ってくる言葉などない。

 そんなことは分かっていた。

 だが、なんとなく『おかえりなさい』と声が聞こえた気がした。

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