後日談 村人
などと思い山から少し離れた村からそれを見ていると、集まっていた村人から『またか』と言う声が聞こえた。
何がまたなのだろうな。
いや。
何とはなしに察しはつくが……。
内心げんなりしつつ村人の話し声に耳を傾けた。
「国王様は山の賢者様を怒らせる天才で、天災だな……」
「あぁ。逆鱗などないに等しくお優しい賢者様を、あれほどまでに激怒させるのだから……」
「山の賢者様ほど、人間に等しい俺たちの手助けをして下さる魔導師様はいない」
「うむ。早く【王の抑止力】と名高い、王都の賢者様が来て下さらないだろうか……?」
「このままでは村に被害が出そうで恐ろしい……」
頭を抱えだした男衆。
そんな男たちに、家から出てきた女性が『あんた』と声をかけた。
一人の男が反応を示し、『なんだ』と答える。
「アタシらの麦は大丈夫かねぇ……」
「「「「「…………」」」」」
男衆の顔色が悪くなった。
…………さて。
彼らが憐れ過ぎるので、そろそろ人格破綻者と、過保護な世話役を止めに行くとするか……。
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――――――
「けっ! こんなベッボイ術で俺が消滅するわけねぇーだろ!!」
「おやおや。雑魚ほど良く吠える」
「あぁあ? テメェマジ消すっ!」
「ほぉ。今日だけで私に三度ほど消滅させられかけた屑が何を言っているのです?」
「チッ……。テメェだって同じくらい俺に消されかけただろうがっ!!」
「いやですねぇ……。あなたと違い、ちゃんと避けたので消滅しかけてはいませんよ? 頭の中が壊れてしまったのですか……?」
人格破綻者と過保護な世話役は山の中心で、今だ争っていた。
人格破綻者は作ったであろう石を手に。
過保護な世話役は満面の笑み(目が笑っていない)で陣を展開、発動させるための言葉を吐かず、代わりに毒を吐いて……。
はぁ……。
これを俺が止めるのか……?
めんどくさいんだが……。
いや、これ以上被害が増える方が面倒だな……。
仕方ない。
「お前ら、少し落ち着け……」
と。
まぁ、近くの川から風で運んできた大量の水をかけた。
いや……。
二人の頭上に大きな水滴を落とした、と言った方がいいかもしれん。
「…………おい。お前ら、生きてる――――な。よし」
ぴくぴくと動いているしな。
……地面に這いつくばって。
「全然良くねーし! 死にかけたわっ!!」
「……シルヴィオ…………。首がやられました……」
ガバリと勢いよく起き上がり、怒鳴ってきた人格破綻者。
そして、ゆったりと。
いや。
ぐったりと起き上がり、首に手を添えるウェル。
そんな不死身な奴らに掛ける言葉。
「お前らホント、元気だよな……」
「おい! この野郎、俺の話聞けっての! 死にかけたの、死・に・か・け・た・のっ!!」
なんか、人格破綻者が言っている。
うむ。
幻聴だ。
幻覚だ。
さて、こんな変なのが居る所に居たくなどない。
ではどこに行こうか……。
どこならば、こんな変なのが居ない。
平和で、静かな場所があるだろうか……?
…………あぁ、そうだ。
エドレイに行こう。
俺の知る者は皆、居なくなってしまったが……。
家族と親友、かつての仲間たちが眠る、あの懐かしき故郷へ…………。




