後日談 旅立ち
なんか血なまぐさくなった気がする……。
と、まぁ。
そんなこんなで放置してしまった国民達のことだが…………。
ハッキリ言おう。
し く じ っ た。
あぁ、そうさ。
この事態もすべて、思考回路の焼け切れた青頭のせいだ。
そうでなくてはおかしい。
何故かって?
そんなもの、俺を絶対とする者と神を絶対とする者。
それら二手に大きく別れたのだ。
これがただ別れただけならば気になどしない。
だが。
内戦まで勃発させられては、な……。
林の向こうの方には黒々とした煙が上がり、悲鳴も聞こえて来ている。
足腰の弱くなったウィアや、ランドールの面倒を見ている者たちには、早々に国を出るように伝えた。
だがら、俺の方に被害はない。
被害はないんだが…………。
あまり気分の良いモノで無いことも事実。
………………どうすれば……良いのだろうな…………。
どれが正解で、どれが間違いなのか。
俺には分からない。
『シルヴィオ』
突如聞こえた声。
それのした方を向くと、アクアマリンの瞳を持った白く美しい鷹がテラスの手すりに止まっている。
これに、座っていたロッキングチェアから立ち上がり、掃出し窓を開け、それの前に向かった。
「今度は鷹ですか、母上……?」
『綺麗でしょ?』
「…………えぇ、まぁ……『打ち落とされてしまわないだろうか』と不安になるほどに」
『あら。ありがとう、さすが私の息子ね! あの唐変木とは大違い!!』
「……それで、何か御用でも?」
『? あ、そうだったわ! もうこの国捨ててどっか行っちゃいなさいな!』
酷く嬉しそうな母。
あぁ。
ちなみに、母は転生を繰り返しているうちに言葉を話すようになった。
……以前。
青い目に体の白いゴキブリが家に出現して、飛びつかれた時なんぞ、とっさに瞬殺してしまったのはしかたない事だろう。
まぁ。
すぐさまダンドルディックが殴りこんできたがな。
青頭が笑い転げてきやがったがな。
もちろん。
青頭においてはウェルに処分を任せた。
我ながら、最も良い選択だったと思う。
リディに聞いた話によると、メルフィオナが青頭に対して激怒していたとのこと。
それ以来、母は虫に転生することはなくなった。
『ちょっとシルヴィオ。聞いているの?』
無邪気な母の声により、現実に引き戻された。
「はい。母上」
『じゃぁ、お返事は?』
「却下です」
『どぉして?』
小首をかしげる母。
と、言っても鳥なんだがな……。
「……あのですね、母上。俺はこの国を守りたいのです」
『あら。もう、関係ないわよ。そんなもの! 民は皇族の血を消し去りたいんだもの。知っているでしょう? ルッティーフの最後を……』
そういってスッと目を細め、ふざけた様子を打ち消した母。
まぁ。
母の言いたい意味は分かる。
「血祭でしたね」
『そう。彼らはこの国から皇族の血をすべて消し去り、新たに王を立てたいのよ。だから、シルヴィオ。あなたが邪魔なのよ』
「はぁ……。わかっております。なので、ダンドルディックを呼んでいただけますか?」
『あら、酷い。『父上』って読んであげないの? シルヴィオ。彼はあなたの父親よ?』
ころころっと笑う母に、つい頭を抱えた。
「母上……。あれをどう呼ぼうと変わりはありません。さぁ、お早く」
『ふふふ。分かったわ、それじゃぁね。シルヴィオ。私の愛しい子』
母はそう言って飛びだっていった。
俺はそれを見送り、ダンドルディックが来るのを待った。
――――――――――
――――――
「それで。どうする気だ……?」
そう問うのは、肩に白い鷹(母)を乗せたダンドルディック。
ちなみに、頬をくちばしでド突かれている。
うっすら赤くなっているようにも見えるが……気のせいだろう。
「ディティナ。痛いぞ……?」
『えいやっとっ!』
――――ぶしゅっ!
母は掛け声とともに、ダンドルディックの頬の肉をつまんで引きちぎった。
まぁ。
当たり前のことだが血が噴き出した。
「ディティナ……」
呆れ気味のダンドルディック。
酷く楽しげな母。
しかも、むしったのを食ってる。
母上……。
ダンドルディックを愛しているのは分かります。
ですが。
それ、生きてるんで……むしって肉を食べるのは止めましょう。
『ん? なぁに、何か問題ある?』
はい。
盛大に……。
と、思いつつ無言を返すと、母上。
『あ。そっか! これ、まだ生きてたね!』
……いえ。
死んでいれば良いという訳ではないのです。
ですから、ダンドルディックの喉を食い破ろうとするのは辞めて下さい。
「ディティナ。そろそろおふざけが過ぎるぞ?」
慣れた様子のダンドルディック。
それに微笑みを返す母。
『だって、私。ダンのこと―――』
と。
まぁそんな感じで母がいちゃつきだした。
ダンドルディックはそっけないが、母はそれで良いらしい。
だが、このままで困るのは俺だ。
「母上。いちゃつくのはその辺にしてください。ダンドルディック。ファバルの民から、皇族に対する記憶及び記録。すべてを書き換えろ」
はっきりと告げると、ダンドルディックは俺と目を合わせ。
静かに口を開いた。
「……………………良いのか……」
「あぁ。今すぐだ」
「良かろう。後悔、するなよ?」
「するものか」
「そうか……」
こうして、ダンドルディックにより、ファバルの民は皇族に関する記憶すべてを書き換えられた。
内容はと言うと――――。
『ファバルの皇族はとっくの昔に【神・アルティファス】により、消滅させられ、ファバル国は民のみの力で動いてきた』
と、言うものだ。
まぁ。
これで良いだろう。
さて。
俺はこの国を出て、どこへ向かおうか……。
読んで下さり、誠にありがとうございました。
シルヴィオは何処かに行くようです。
う~ん。
何も考えずに書いてるんで、どうなるか解んなくなってきました。
てか。
私が書きたい、読みたいって感じで書いたのと、読みたくないけどテキトーに描いたの。
どうしてテキトーに息抜きで書いた妹編が人気あるんだろう……。
不思議ですね。
私、妹編を一から最後までなんて、読めねーですよ。
あれ読める人マジ強い。
てか、最強。
尊敬します、その忍耐力。
少しでも良いんでその忍耐力分けて欲しいくらいです……。




