表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の歩
17/185

第十五話

 王宮の近くにある粗末な小屋の中。

 ロジャードは手を後ろ手に縛られ、椅子に座らされていた。

 彼の周りに、先ほどの衛兵たち。

 そんな彼の正面に立つ、鋭い目つきの、明るい灰青の瞳の青年。

「貴様は何者だ」

 青年は無表情のまま、ロジャードを見下ろし、平坦な声で問う。

 そんな青年に、苛立った時のノエルがかぶって見えた。

「あ、あはは。あなたにはノエル・ルイダスと言う名のご親戚がいらっしゃいますか?」

 乾いた笑い声を上げ、引きつった笑みで疑問を青年にぶつける。

 ロジャードの質問に、青年の整った眉がピクリと動く。

 それに気を取られた彼の喉元に、青年の剣が突きつけられていた。

(ひぃぃぃ! こいつ絶対ノエルさんの血縁者だ!!)

 ロジャードは勘弁してくれ! とばかりに顔を青くし、声に出さずに叫んだ。

「今一度聞く。貴様は何者だ」

「ロジャード・セメロと申します」

 ノエルと同じように、威圧感たっぷりで剣を突きつけ、低く言う青年に、ロジャードは引きつりっぱなしの顔ですぐに答えた。

「何故、あそこにいた」

「………………」

 彼は『迷子です』などと情けなさ過ぎて言えるわけもなく、ついっと目をそらす。

 このせいで、青年の雰囲気がものすごく悪い方に変わり、鋭い目つきが一層鋭くなった。

「答えられないのか」

「え、えぇっと……ですね。これには深い……ような、浅いような、訳がですね…………」

 ロジャードは、ノエルに叱られてるように脳が勘違いし、後半がしどろもどろになってしまった。

 そのせいか、青年に剣を下す気配はない。

「では、質問を変えよう。毒を持ったのは貴様か?」

「…………あれ、もしかしなくても私。犯人扱いですか?」

 この状況で、やっと現状を理解したロジャード。

 青年は、哀れなものを見るような目で彼を見下ろす。

「それ以外に何がある」

「あはは。でーすよね~」

 再び乾いた声で笑い、引きつった顔で笑みを作る。

 青年は黙って彼を見下ろす。

 ロジャードの本能が『超危険。回避せよ』と言っている。

(やばい、絶対怒ってる。これ以上なんか言ったら俺、死ぬ。絶対死ぬ!!)

 そう考えて顔面蒼白になるロジャード。

 彼は意を決して、謝罪の言葉を口にし、青年を見上げた。

「現実逃避し――」

「ふざけるのもいい加減にしろ」

「?!」

 ロジャードの言葉を遮り、威圧感十分で低く言う青年。

 彼は、剣を喉元からスッと、こめかみに移動させた。

「さっさと答えろ」

 若干、呆れ顔の青年に、ロジャードは表情を引き締める。

「はい。実は…………迷子なんです」

「………………」

「ぅわぁぁ、待て待て振り上げんな! これマジだからぁ!!」

 ロジャードは、無言で剣を振り上げた青年に、必死で制止の声をかける。

 青年は、彼を冷たく見下した。 

「貴様が不審人物であることに変わりはない」

 低く、冷たい声音で言う青年。

 振り上げたままの姿で静止した青年を見て、これが好機。とばかりにロジャードは彼を説得しようと考えた。

「だからって殺しちゃダメじゃん! ここはしっかり話を聞かなきゃ!!」

「……まともに答えない貴様が言うか」

 青年は、ロジャードの頭上に振り上げていた剣を、鞘に納めた。

 ロジャードは、青年の剣が鞘に収まったことを確認し、口を開く。

「いやいや言おうとしてたから!」

「それは、いつだ?」

「『現実逃避』って言ったとき!!」

「……あの後があったのか?」

「あったよ、十分あった! だから縄をほどけ!!」

 ロジャードは椅子をガタガタ揺らして、青年に抗議する。

 そんな彼を静かに見つめ、言った。

「貴様は、自業自得と言う言葉を知っているか?」

「君は俺を馬鹿にしてる?」

 ロジャードは彼の言葉に軽く苛立ち、返答した。

「……私を馬鹿にしているのは貴様だろう」

 眉をピクリと動かす青年。

 ノエルだったら、これは危険信号。

「そんな命知らずなことした覚えはない!!」

 真顔で、力いっぱい否定するロジャード。

 彼の発言で場の空気が張りつめた。

「その辺にしておけ、ロジャード・セメロ」

ごめんなさい。

まだありました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ