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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
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後日談 その四

 ひんやりとした大理石でできた建物。

 明かりをつけずに網目の細かい布の向こう。

 見える室内はがやがやとうるさく。

 時折騒がしい声が響く。

 その声を発し聞く者達。

 男女は皆、ファバルの民。

 それに誇りをもち、伝統的な民族衣装を身にまとっている。

 布地は黒。

 その他の小物は皆様々だが、高価な者を身に着けた者もいれば。

 『必要なため身に着けている』と言った様な、質素な物をつけている者もいる。

 一応。

 彼らはファバルを支える柱。

 しかし、怠そうにかつ。

 居眠りを行うもの。

 保身に走るもの。

 自身の利益のためだけに騒ぐもの……。

 何故、人間は百年たたずに堕落するのだろうな…………。

 まったく。

 必要もないことを……。

 あまりにもくだらなさ過ぎて聞く気も失せる。

 ついでに言うと。

 この者達のほとんどが罪に手を染めている。

 それを権力と言う名の武器でもみ消し、別のことを塗り重ねる。

 ま。

 しょうがないな。

 彼らは人間だ。

 人間ですならない俺には理解できないが、人間も俺を理解することも不可能なのだろう。

 だが。

 さすがに、自国民を秘密裏に国外に売り飛ばす者や。

 自身の欲に忠実な豚と成り果てた者を生かして置く訳にもいくまい。

 そして、何より問題なのは。

 他国に干渉しようとする行為だ。

 戦となれば幾万、幾千の命が無くなる。

 そうなる前に俺が出て、戦火を掃えば良いのだが……。

 何分、人間は学ぶことはしない。

 したとしても時とともに薄れ。

 忘れて行く。

 伝える者も死に。

 俺のように永久を生き、自らと異なる力を持つ者に恐怖を覚える。

 そう言うものなのだ。

「何をそんなとこから見下ろしてるの? 降りておいでよ。シルヴィオ」

 響いた声。

 それは間違いなくクーの声。

 室内に居た。

 しかも片手は真っ赤だ。

「むやみに殺すんじゃない。民が動揺するだろう」

「あ~。大丈夫! 国中にこの場所の声がぜ~んぶ届くようにしてるから!」

 クーは真っ赤になった手を振りながら、笑う。

 いやいや。

 せめて説明ぐらいしてやれよ。

「だからと言って、勝手に殺すんじゃない」

「何よぉ。どうせこいつ殺す気だったじゃない!」

 『うぇ~汚れたぁ』と、付け足し。

 片手を勢いよく上下に振る。

 俺はそれを見つつ、ため息と吐いた。

「自国民を他国に売る柱は不要だからな」

「んふふふ。ずいぶんなが~く待ってたもんね~!」

 クーはにまにまっと笑い。

 近くに居た人間の服を捕まえ。

 真っ赤になった手を拭う。

「はぁ……。だからこそ、何も知らぬ民に罪を知らせるべきだろう?」

「あ! それとさシルヴィオ。こいつら全員の死骸貰って帰っていい? 急に実験で必要になっちゃってさぁ……。あ。生きててもいいよ? どうせ死んじゃうし!」

「構わないが、罪に手を染めていない者は連れて行くなよ?」

「んふふぅ! ありがと! 助かるよ~」

 クーは嬉しそうに笑い。

 大勢いたはずの人間を四人だけ残し、共に光の柱となり消えた。

 と、言うより。

 やっと消えた…………。

 さて。

 俺も帰るか。

「守護神様。国も支える柱である我ら人間がお手を煩わせてしまい、誠に……誠に、申し訳ございませんでした」

 背後から聞こえた言葉。

 振り返るとそこには大理石の床に座り、頭を下げる三十半ば程の男。

 その男の後ろには、四十近いであろう女一人と、それに近い都市であろう男二人。

 この三人も声をかけて来た男同様、床に座り、頭を下げていた。

 表情はうかがえない。

 まぁ、気にするほどでもないかと考え直し。

 言いたいことは山ほどあるが、それは柱自ら知る事。

 ならば、私が言う言葉は無いに等しい。

 だが、一つ。

「…………私をあまり失望させるな……」

 頼むから、百年とたたずに忘れるな。

 ……まぁ。

 人間にいくら言っても無駄だがな。

 そう内心で笑い。

 家に帰った。



 この数日後。

 俺のもとを訪ねてきた人格破綻者により。

 俺が発した言葉をすべて、国民皆が知っていることを知らされた。

 しかもそれだけではなく。

 国民皆が『もし、国を絶対の守護で守っている守護神様を失望させてしまったら……』と。

 恐怖に震えたという話を、聞かされ。

 実際の映像を見せられて絶句したのだった。

自己満足な後日談。

可笑しいな。

人格破綻者が絶対に出張ってくるのだが……?

気のせいかな?

うん。

気のせいと言うことで納得しとこうか……。

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