第百三十二話
なんて考えて一歩踏み出そうとした時。
「お前は何故突っ立ている? 少しは奴らに手を貸せ」
突如聞こえた、不機嫌そうに聞こえたダンドルディックの声。
軽く驚きそちらをみると、ダンドルディックは相変わらず地面に片手をついたままの姿だった。
……ずっとその姿勢が気になってはいたが、まさか『大地を支えている』。
とか、言わないよな……?
「さっさと行け。バルの術が完成してしまうであろう?」
「…………一ついいか?」
「……手短にな」
「お前、何してんだ…………?」
「崩れないようにしている。分かったらさっさ行け」
こう答えたダンドルディック。
……『崩れる』とは、この場か?
それとも大陸?
それとも世界……?
……破壊しようとしている者は、アルティファス。
神を作った神。
つまり、神の元締め……。
…………嫌な結論にしかたどり着きそうにない。
ため息が出た。
そしたらダンドルディックが振り返り。
元からの鋭い目つきで睨んできた。
……アルティファスがこいつを猫に変えた理由に、つい、納得してしまった。
目つき悪すぎだもんな。
さて。
『人外』の上を行く化け物に、『人間の異形』が敵うのだろうか?
そう、思いつつ。
手に握る柄に力を込め、アルティファスの頭上に移動。
奴は俺に気づいてはおらず、迫りくる五神のうちの三神に気を取られている。
これ幸い。
そう思い、剣を奴の頭上に突き立てた――……はずだった。
――――ゴォォオオオ
突如吹き荒れた暴風。
それは俺だけでなく、ラルフォード達三人も吹き飛ばされた。
「「「「?!」」」」
驚きつつも俺たちは空中で体勢を立て直し、着地。
慌ててアルティファスに目を向けた。
奴の四方八方に、様々な色で、様々な形、模様の陣。
それらから感じる気配は、ウェルが使う術と似たモノ。
ダンドルディックはこれを確認後。
立ち上がると、こちらへ来た。
奴が立ち止まる前。
その行く手を遮るよう、太い光の柱が形成。
中からウェルとバルフォン、クー、その他三名が現れた。
「いやぁ~~。もう、まいったまいった!」
「ホント、ドM古ちゃんの相手には疲れちゃった。つい、生け贄に使っちゃいそうになったもん……」
ふざけた様子のバルフォンに、満面の笑みでクーは返答。
「いやだなぁ、ドМ違うよ~。そしてクラジーズ君ちょーこあーい~!」
そう言ってバルフォンは自分の頬を挟むようにして、両手で包む。
「うわ。キモ」
「……そのマジな表情やめて。傷つくから」
どうでも良い事でさらに騒ぎ出したバルフォンとクー。
おい、お前ら。
ウェルの表情が死んでることに気づいてやれ。




