第百二十五話
どういうことだ……。
こいつはなんと言った?
俺で最後……?
何を馬鹿なことを、言っているんだ?
第一にこの男は、『たった今』とも言った。
だが、この男は俺の前から消えたりはしていない。
ずっと、俺の目の前に居たんだ。
っ……!
……まさか…………!!
「さぁ。私の安息ため、消えろ」
俺の頭に最悪の自体がよぎったその時。
アルティファスの剣が、俺の頭めがけ上段から振り下ろされるのが見えた。
ッ……?!
さすがに真っ二つはごめんだ。
そう思ったとき。
アルティファスの体が吹っ飛んだ。
「許せ、アルティファス。俺は、これを守らねばならん」
アルティファスを吹き飛ばし、険しい表情で、そう言ったものは、タヌキ。
……真っ二つにならずに済んだ事もあるが、ややこしいので、ダンドルディックと改めてやるか。
「…………怪我は、無いか……?」
若干緊張したような声で問う、ダンドルディック。
俺はその問いに、『無い』とだけ答え、アルティファスが吹き飛んで行った方角に目を向けた。
「やはり、あの程度では傷もおわぬか……」
ぼそりと聞こえたダンドルディックの言葉で、ダンドルディックに目を向けて気づいた。
身に着けている衣服はところどころ破れ、血と砂にまみれていることに。
「ダンドルディック。お前、その傷――――」
「大したことではない。……消されたくなくば、気を抜くな」
「その言葉は、ダン。あなたにも言えることだ」
背後からの声。
その声はラルフォード。
ダンドルディックは正面を向いたままだ。
「……ラルドか…………」
「あぁ。今、バルフォンがクーたちと共に封印式を整えている。完成まで時間を稼ぐ」
ラルフォードはそう言って、剣を抜き。
俺たちの前に出た。
…………加勢しようにも、剣も無ければ、【危険物】も所持していない。
風は傷一つ付けられなかったことに落ち込み、惚けているようで、俺の指示がなければ動きそうもない。
……まったく。
俺は、どれ程役立たずなのだろうな…………。




