第百二十二話
「あ~あ。当たっちゃえばよかったの……」
そう、残念そうな声音で言ったのはもちろん、クーだ。
ウェルはポカンとした様子で、巨大なクレータの方を向いている。
「おい、クー。お前狙っただろ?」
「え~なんのこと~? あたし、しらなぁーい!」
ケタケタケタ。
と、意味不明な笑い声を上げる変態。
「ちょっと今、あたしを変態って思ったでしょ! 分かるんだからね!!」
何か言っているが無視だ。
無視。
「で。ここは……?」
「ん? ここ? ここはね、さっき言ってたアルティファスに破壊されちゃった大陸だよ~」
へっへらーと笑うクー。
そして、顔に手を当てて俯き、ため息をつきながら頭を左右に振るウェル。
……そう言えば、ウェル。
こいつが出てきてから全然言葉を発していないような気がするのだが……?
俺の気のせいか?
そう思いつつウェルを見ると、ぱくぱくと口を動かしていた。
「……………………どうしたんだ? ウェル」
問うと。
またも、ぱくぱく。
声はでていない。
考えられることは一つ。
「クー。ウェルに何をした……?」
「ん、何もしてないよ? ただ、ちょっとうるさいから黙らせてるだけ!」
そういってクーはにっこり――。
いや、『ニタリ』だな……。
「……………………」
てかお前。
十分やってるじゃねぇか…………。
「すぐに解け」
「え~……。せっかくかけたんだよ~!」
「……良い子だから解きなさい」
「も~、しょうがないなぁ……」
しぶしぶと言った様子のくーは何かを言って、ウェルの術を解いた。
と、同時に。
激怒しているウェルに攻撃系の魔術をぶつけられ。
星になった。
………………さて。
馬鹿も居なくなったことだし。
「帰るか……」
「そうですね。そうしたいですが、逃がしてはくれないようですよ……?」
意味深なウェルの発言。
俺はウェルの目線の先を追う。
そこには、胸ほどの長さのまっすぐな青い髪に、淀んだ赤と金のオッドアイの男が立っていた。
服装はエドレイと同じ型の、全体的に黒でまとめられた服。
男と俺たちの距離は遠く離れている。
だが、俺の本能が警鐘をならす。
男とはこんなにも距離があるというのに……ただひたすら、『逃げろ』と。
……そう。
この男は、存在そのものが危険だ……。
……だが。
放置することは、さらに危険だということ。
それを同時に理解した。
…………仕方ない。
「ウェル。いけるか……?」
「はい。もちろんです」
俺は横目でウェルが頷いたことを確認し、男に視線を戻した。
さて。
どうやって打ち取るかな……。




