第百十八話
母上の墓前で謝罪した俺は、リビングに戻った。
ウェルが作った魔法照明は壊されているので、月明かりのみが室内を照らしている。
で。
その大破した魔法照明の前にうずくまっている、灰色頭の人間。
まったく……。
「…………こんな時間まで何をしているんだ。ウェル」
時刻は深夜だ。
明日も他国へと出向き、領地を広げねばならぬというのに……。
俺はそう考えつつ、軽く屈み、ウェルの肩に手を置いた。
しかし、反応はない。
「ウェル……?」
名を呼ぶが反応はない。
おそらく、努力の結晶が壊された事によるショックが大きすぎて、俺の声が耳に入っていないのだろう。
さて。
こいつの惚け面でも拝んでやろう。
…………だいたいなら、俺の顔が見えた途端に慌てだすか、何かしらの反応を示すのだが。
どうしたものはなく、ただ茫然とした表情で固まっていた。
その表情が、意識を失っていたこいつが目を覚ました時とよく似ていて。
良くわからない不安を感じた。
あぁ。
そう言えば同盟の書類。
ルーフに書かせ忘れたな……。
よし。
明日にしよう。
まずはこいつが先だ。
俺はそう考え。
ウェルの肩をゆする。
「おい、戻ってこい。ウェル、ウェルコット」
……ダメだ。
戻ってこない。
となると、仕方ないな。
俺は中指を親指で軽く押さえ、中指に力を入れ、奴の額をはじいた。
「ぁだ……!! っぅ…………。な、何が?!」
「やっと戻ってきたか」
俺は慌てふためいている馬鹿に対し、ため息が出そうだ。
もうこいつ無視で寝るか。
「おや? シルヴィオではありませんか」
お前は今気づいたのか……。
…………集中すると周りが見えなくなる奴だったな。
お前は……。
「はぁ……。そうだな、明日も早いんだ。さっさと寝ろ」
「あ。そう、でしたね……。すみません」
ウェルはそう言って、部屋に戻っていった。
俺はそれを見届け。
懐に入れていた同盟の書類を取り出す。
案の定書類は折れ曲がっていた。
「はぁ……。マジか…………」
俺は書類を手に、部屋に向かい。
書類を部屋に置き、就寝。
翌朝。
ルーフのもとを訪れ、書類を書かせて兄上のもとに持って行った。
主人公がめんくさがりのせいか、先に進んでくれません……。




