第百十話
あ。
でも、ウェルについては、誤魔化せるな……。
「ほら、ウェルは魔導師だから」
そう。
ニコはさっき会ったときに言っていたように魔導師の事を知らない。
だったらそれで片づけてしまえばいい。
なんかニコが不服そうにこっち見て居るが、俺は知らん。
聞くな。
頼むから……。
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一方そのころ。
ファバル皇国。
私は、しーちゃんが少女の純粋さに苦しんでいるなんて知るはずもなく。
畑の手入れをラティとテオ、イオルと一緒にやっていた。
フォードとルルカ、ルルクはお家のお掃除をしていると思うわ。
……私がするのに…………。
なんて思いながら雑草を抜いて行く。
あ~ぁ。
しーちゃんには料理しちゃダメって言われるし、お仕事無くなっちゃうし……。
でも、あの子たちが楽しそうだからいいの、かな?
「おねぇちゃん、ほらみて!!」
そういって満面の笑みで走ってきた少女・ラティ。
「あら、ラティ。どうしたの?」
そう問うと、ラティが勢いよく突き出したもの。
それは、雑草。
根が長い。
「きれいにぬけたの!!」
「まぁ、本当! 綺麗に抜けたのね」
「うん! だからもっとがんばるの!!」
「あ! ラティ。無理はしないのよ? もし具合が悪くなったらすぐに言ってね?」
「わかった! じゃ、ばいばい!!」
ラティは笑みを浮かべたまま。
嬉しそうに草を振り回しながら走っていた。
そういえば、テオとイオルはどこかしら?
私はざっと辺りを見渡す。
あ。
二人ともいた。
仲良くしゃがみこんで地面を見ているわ。
草をむしっている様子はない。
……と言うことは。
虫、かしら?
そう思って、そっと近づく。
二人が見ていたものは、石ころほどの光る丸い円。
しかしそれは本当に少しずつ、ゆっくりと。
確実に大きくなっている。
これは、魔方陣……?!
「テオ、イオル。それからすぐに離れなさい!!」
二人の手をつかんで無理やり立たせる。
「「?!」」
酷く驚いているけど、それどころではない。
魔法なんて、良くわからないもの!
怖いわ。
でも、この子たちは守らなくちゃ。
私は慌ててラティの方を振り返る。
ラティはひどく驚いた顔で私の方を見ていた。
「ラティ、走ってお家に入りなさい! ほらテオとイオルも走って!!」
私はそう言って二人の手を引いて走った。
ラティは家の近くに居たため。
すぐに中に入り。
私たちも少し遅れて中に入った。
玄関の鍵をしっかり締める。
そして『もしもの時のために』って言ってうーちゃんが玄関の扉の内側に着けたスイッチを入れた。
これで誰もこの家に危害を加えられなくなる。
そう、うーちゃんが言ってた。
テオとイオルは息を切らしている。
ごめんね。
二人とも。
「良い。ラティ、テオ、イオル。絶対にこの家から出ないで。絶対よ? わかった?」
そう問うと三人は頷いてくれた。
私は慌てて急がなくきゃ!
「フォード、ルルカ、ルルク! どこなのっ?!」
私は三人を探す。
まずはリビングを見た。
いない。
でも、ルルカとルルクは恐らく室内。
フォードは……。
確か、昨日薪割りをしていたから、薪を割っていないだろうし。
そう思いながら、一階のドアを片っ端から開けて行く。
「フォード、ルルカ、ルルク!!」
全部開け終わったけど、どこにもいない。
と言うことは、二階!
私は慌てて玄関付近に戻る。
と、そこには探していた三人が。
「フォード、ルルカ、ルルク! 良かった……」
「お姉ちゃん、どうしたの? そんなに慌てて」
「そうそう。ラティたちもわからないって言うし。なにかあったの?」
「いいえ。皆、お家の中に居るのなら、良いの」
私はそう言ってルルカとルルクに答える。
傍に居たフォードが不思議そうにしているわ。
でも、この家で一番安全性を確保している場所に移ったほうがいい。
そう思うの。
で。
うーちゃんが、絶対安全なのはリビングだって言ってたから、リビングに移動した方がいいわね。
「とりあえず。リビングの方に行きましょう。ここより安全だから」
私はそう言って子供たちを連れてリビングに移動した。




