表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
131/185

第百三話

 視界は切り替わり、セメロ公爵邸・サロン。

 ちなみにこの国は、ファバルからだと何十日とかかる、らしい。

 詳しいことは知らん。

 ただ、そうらしい。

 そのため、俺もこの国のどこに誰が居て、何をしているのか。

 なんて。

 このままの姿では無理だ。

 と言うか、俺があの姿になりたくない。

 良いか。

 背中に黒の翼だぞ?

 しかも片方。

 ……中途半端過ぎる…………。

 そのうえ、気味が悪い。

 何より俺があの姿が嫌いだということもある。

 よほどのことが無ければ、絶対に出しはしない。

 …………切り落とすか……?

 ……またすぐに生え変わりそうだな。

「ろ……い、ど…………?」

 驚愕と歓喜に混乱している母さん。

 もといセメロ公爵夫人。

 一言良いか?

 なんでわかった……。

 と言うより。

 普通そこは不審者の侵入に悲鳴あげるか何かするべきじゃないか?!

 俺の基準がおかしいのか?

 俺の頭がおかしいのか?

 自意識過剰なのか?

 大体な……。

 髪の色も、目の色、顔の形も違うんだ。

 ロジャードの時とはまるで違う。

 そのはずなのだが……。

 そう思っているのは俺だけなのか?

 いや。

 さっき会ったウィルロットは困惑していた程だ。

 マディティス大尉については、あの人は勘が鋭い。

 その上気配だとか何とか言ってたしな。

 あの人はもう変人と言うことで片づけよう。

 今は、目の前の問題と向き合おう。

 それは言うまでもないが、俺の目の前。

 大きな琥珀色の瞳を潤ませて、両手の白くて細い指で口元を抑えてる、母さんだ。

 えぇっと……。

 ――ガチャ。

 どうしたらいいのか分からずにいたら、サロンの扉が少し開いた。

 その隙間からひょこっと、顔を出したのは、ウサギの耳に、ボブカットの黒髪少女。

 ニコラだった。

 やはり、戦場に向かう前に見た姿と変わらず、小さい。

 ……見間違いではなかったようだ。

 とか考えていたら。

 ふわっとした優しい匂いと、程よい暖かさのモノに抱き着かれた。

 一瞬わからなかったが、すぐに答えは出た。

 …………母さんだ。

 母さんが、抱き着いて来たんだ。

 小さく聞こえる嗚咽。

 それはもちろん母さんから。

 正直に言ったら、嬉しい。

 けれど。

 この状況をどうしろと……?

 …………と、とりあえず。

 あやす。

 それが一番だ。

 俺はそう考え、母さんの背に手を回した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ