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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
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第九十話

 ◆◆◆



 薄暗く、冷たい壁に挟まれた螺旋階段。

 固い長靴が石段に当たるたび、響く二つの足音。

 先を行く黒髪長髪のダンドルディック。

 彼の背を追う、鳶色の髪の青年・ラルフォードが口を開いた。

「ダン。あの子たちはとても素晴らしい、そう思わないか……?」

「…………あぁ。だが、あれらの居る大陸が、この世界で一番大きい……。半分ほど制圧したくらいでは、なんともいえん……」

 ラルフォードの落ち着いた声に、ダンドルディックは彼を振り返ることも、足を止めることもせず、階段を下りながらそう言った。

 彼の表情はとても複雑で、不安といった感情が大きいように見える。

「そうだな。まだ他にも大陸があったな……。だが、たったの一年ほどであそこまで広げるとは、驚きだ」

「…………化け物と、化け物級の魔術師。二人居れば当然であろう」

 めんどくさげに言葉を紡いだダンドルディックに、ラルフォードは小さく笑った。

「ラルド。何がおかしい……?」

「いえ。あなたがそこまであの子らをかっているとは、驚きだと思ってな。やはり、愛着があるか……?」

 ラルフォードの言葉に、先ほどまで一度も歩を止めなかった彼が、足を止め。

「………………さぁな…………」  

 そう短く言うとまた、階段を下りて行った。

 これにまた小さく笑ったラルフォードは、彼の後を追う。

 石造りの螺旋階段には、再び二人の足音だけが響いた。

 それからしばらくして、彼らはそこを抜け。

 目の前に広がる薄暗い空間の中央。

 そこにある淡い光。

 それの前に居る、青い髪を後ろになでつけた男と、長い白髪の少女。

 つまり、バルフォンとクーの元に向かった。

「バル、クー。順調か……?」

「あ。ダン! それがさぁ~……――ごめんなさいちゃんとします! だからラルド剣抜かないで!!」

 クルッと笑顔で振り返ったバルフォン。

 しかし、次の瞬間には懇願に入った。

 これに、ダンドルディックはため息をつく。

「ラルド、止めろ。これ殺しても、崩壊が早まるだけだ」

 呆れ顔のダンドルディックの言葉に、ラルドは抜こうとしていた剣を納め、手を降ろした。 

「それで、どうなんだ?」

「あ~……それなんだけどねぇ、アルティファス。結構抵抗しているよ……やっぱり、そう簡単に繋がれてくれないみたいだよ」

 困っちゃった、と言って肩をすくめたバルフォン。

「そうか……。まぁ、そうだろうな…………」

「ねぇ、いにしえちゃん? いつまで私一人にこれを任せてるつもり?」

 クーはそう言って、一枚の紙に手をかざしたまま、首をひねって彼らを見て言った。

「あ、あ~……。もちょっと待って」

 バルフォンはそう言って、へラッと笑う。

 クーの目と表情は、死んだ。

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