表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
116/185

第八十八話

 そう言ったのは、光の柱から現れたウェルコット。

 シルヴィオはそれを見て、一つため息をつく。

「…………ウェルコット。今すぐ解け。命令だ」

 平坦に告げたシルヴィオ。

 ウェルコットはそんな彼に、困った顔でゆっくりと頭を振った。

「この者は、民の前で裁くべきです。そう、思われませんか……?」

「……………そうだったな……」

 シルヴィオはまっすぐな眼差しを受け、ため息交じりに言い。

 行くぞ、と付け足す。

 ウェルコットはこれに返事と共に頷き。

 シルヴィオは先に城の外――つまり城下――へ。

 あとを追って、ウェルコットは捕らえている王と共に彼の元へと飛んだ。



「さて、オグダンの民よ。そなたらは、何もせず、国庫を食い荒らすしか能のない者を生かすか? はたまた殺すか? 決定権はそなたらにある」

 先に城下の広場に姿を現したシルヴィオ。

 彼はエルセリーネを使い、オグダン王国中に言葉を飛ばした。

 広場に突如現れた彼に対し、驚きをしめす者。

 彼の言葉に顔を歪めた者。

 反応は様々だ。

 「殺せ」と叫ぶ者。

 「王侯貴族には死を」と声を上げる男。

 そんな声を聞きながら、彼はエルセリーネを通じ。

 オグダン王と貴族に対し、嫌悪と憎悪の感情を抱いていることを確認した。

 同時に、九割の民はそれらの死を望んでいることも。

 残りの一割は、一人の貴族が納めている領地のみ。

(よほど、この領主は領民に慕われているようだな……。まぁ、知ったこっちゃねぇがな)

 そう考えたシルヴィオの頭にあるものは『所詮は他国。自国ではない』。

 つまり、彼にとってみれば。

 王を殺そうと、国を消そうと、何も感じない。

 彼はそう、割り切っている。

 その線引きは残酷だ。

 しかし、彼はそれより残酷なものを見て、感じてきた。

 そんな彼だからこそ、知っている。

 他国の傀儡となるよりましだということを……。

(ファバルの様な傀儡は、もう。必要ない…………)

 表情を動かさない彼の耳に届くは、大勢の『殺せ』という声。

 その声が彼の過去を思い出させた。

 かつて。

 何十年と大国の傀儡と化していたファバル皇国。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ