第八十六話
――翌朝。
シルヴィオはイルシールとゼフェロスのもとを訪れた。
時は朝議の最中。
そこに彼は姿を現した。
「朝議の途中失礼します。誠に勝手ながら、私。シルヴィオ・レファニア・ファバルは王位及び、名を捨てさせていただきます」
微笑みを浮かべ、大勢の前で言い放った彼に、イルシールは驚き、手に持ていた書類をすべておとした。
「?! な、何を言って――!」
「宰相閣下も王位継承権破棄をなさっているではありませんか」
「そ、それはそうですけど……」
素早く切り返したシルヴィオに、目を泳がせたイルシール。
そんな彼の様子に、場がどよめいた。
「シルヴィオ。その話は今でなくてはならぬのか?」
威圧感のある声音でそう言ったのは、玉座に座り、こちらをまっすぐに見つめるゼフェロス。
彼の問いに、シルヴィオは一つ頷く。
「はい。急いでおりますので」
はっきり言い這る彼に、ゼフェロスはため息をついた。
「………………して。なんと名を改めるのだ?」
ゼフェロスは表情を動かさない。
(あ……。ヤベッ、考えてなかった…………!)
なんて思い出して、焦っているシルヴィオ。
しかし、顔には出ていない。
至って真面目な顔でゼフェロスを見据えている。
「…………シルヴィオ・セメロと……」
無意識に出た言葉。
シルヴィオはこれにハッとした。
(しくじった……。くそ…………!)
彼がそう考え、内心頭を抱えているのを知らない回りの者たち。
しかし、次の瞬間。
「許す」と声が聞こえ、シルヴィオは眉根を寄せそうになるのを済んでて止め。
ゼフェロスに意識を戻した。
「……だが、王位継承権破棄は許さぬ」
「………………わかりました。では、失礼いたします」
シルヴィオは苦笑しそうになったが、こらえた。
(うわぁ……否は認めないって顔だな……。めんどくせ…………)
内心でため息をついた彼は、一礼して、消えた。
彼が向かう先はただ一つ。
「おかえりなさい。シルヴィオ」
自宅リビング。
そこに居るウェルコットの元だ。
シルヴィオは「あぁ」と返事をし、問う。




