第七十九話
「なんだ。人がせっかくこの世界の初めを語ってやったのに、質問も無しか」
ふぅっとため息をつき。
すねた様子で片手を上げ、背中の毛づくろいをし始めたダンドルディック。
シルヴィオたち三人は、彼の様子に顔を見合わせ、苦笑。
「う……? う……ぅぐ、うぐぐ! ぅ~! ぐ~~~~!!」
舌を出したまま、奇声を発しながら必死に顔を引く黒猫・ダンドルディック。
彼のザラリとした舌には、黒くて長い毛がびっしり。
つまり、自分の毛が絡まっている様子。
三人は沈黙後。
必死に笑いをこらえた。
そんな三人に気づいていないダンドルディック。
「う~~~~!!」
彼は涙目で必死に顔(と舌)を引いた時。
大量の毛が抜けると同時に、舌が解放された。
「…………っぐぅ……。おのれ……アルティファス………………!」
口元に大量の毛をつけたまま、彼は低く言葉を発した。
あばあばと舌と口を動かし始めたダンドルディック。
彼は、必死に毛を吐き出そうとしている。
しかしなかなか取れない。
彼はこれにあきらめたのか、口に毛をつけたまま、ぶすっした顔でシルヴィオを見上げた。
この時、シルヴィオは必死に笑いをこらえ。
ウェルコットもクーも、ダンドルディックから顔をそらし、笑いを堪えていた。
だが、三人の顔はダンドルディックには見えないが、肩が震えていることは分かる。
「何がおかしい……?」
不機嫌そうな顔で、それにふさわしい声で唸るように言った。
しかし、口元の毛が髭のようにもさもさと揺れるだけで、三人の笑いは収まらない。
それを確認したダンドルディックは、ニヤリと笑い、シルヴィオの太ももにぎりっと爪を立てた。
「痛! おい、タヌ――! っく……くくっ」
「……何がおかしいと問うておろう?」
もさりと揺れ動く毛の束。
シルヴィオは笑いの原因を取り除くことにし、その毛をつまんで引く。
彼の行動に、驚き。
引っ張り出される舌を必死に戻そうとあがくダンドルディック。
だが、そのあがきのおかげか、舌に絡んでいた毛の束は綺麗にとれた。
「結構な量だな……」
「………………直ぐに生える……。多分…………」
落ち込んだダンドルディックを、笑いの収まったシルヴィオは困った顔で見つめた。




