第七十六話
「あぁ。『何故この国が直ぐさま崩壊しないか』。だったな?」
確認するように問う、ダンドルディックに、ウェルコットは静かにうなずいた。
「少し、長くなる。座れ」
ダンドルディックの言葉に、床で膝を抱えて座っているクーと、シルヴィオの近くに立ったままのウェルコットは顔を見合わせた。
「ウェルの分際であたしを見下ろすなぁ!!」
クーはニコッと笑い。
ふざけた口調で、ヒュンと、小さな斧をウェルコットめがけ、投擲。
ウェルコットはそれに気づいていないようなそぶりで、その場を離れ、ダンドルディックの隣に座った。
投げられた斧はと言うと、壁に突き刺さる前に赤い光の粒子となり、消滅。
相手にされなかったクーは頬を膨らませ、シルヴィオの正面の椅子に腰かける。
ダンドルディックはそれを確認し、口を開いた。
――――この世界が誕生し、間もないころ。
のちに【神】と呼ばれる者が誕生した。
【神】は、名も、感情、感覚、姿。
それらすべてがやふやで、どこからどこまでが己なのかすら、不明であった。
だが、それで良い。
そう【神】は考え、時の流れに身を任せた。
しばらくして、【神】は姿を持ち。
またしばらくして、感覚を。
そのすぐ後に、感情を手に入れた。
こうして、すべてを手に入れた【神】は、世界に立ち。
『同じ光景ばかりで厭きた』と、愚痴をこぼした。
しかし、【神】しかいないこの世界。
こぼした愚痴は、ただ広く、何もない世界にこだまするのみだった。
それを知った【神】の中に、渦巻く感情。
これがなんなのかわからなかった【神】は、それを無視した。
だが、それは完全に無視できず、増す一方で、自問自答を繰り返し。
『一人でいたくない』という答えにたどり着いた。
こうして、【神】は自分と同じものを。
と、願った。
それからしばらくして、自分自身から分裂するようにして、一人生まれ。
また一人……。
そして、五人を作った時。
【神】は身動きが取れなくなり、寝たきりとなった。
心配する五人に、【神】は微笑み。
『いつもと違うものが見たい』
そう言った。
最初に生まれたモノと、二番目に生まれたモノが【神】の願いを聞き届け、様々な色で世界を彩る。
三番目に生まれたモノは、動物を作り、その上に置いた。
期待に応えてくれた三人を、【神】は嬉しそうに笑って礼を言った。
その様子に、四番目に生まれたモノが悔しがり、自分たちに似た者たちを作り、三番目同様。
鮮やかな世界に置き、【神】は大いに驚かせ、褒められた。
そして、最後に生まれたモノも、【神】を喜ばせたくなり、四番目と似たようなものを作り、世界に置く。
【神】は、最後に生まれたモノの考えに、嬉しくて泣いた。
おろおろとする五人に、【神】は礼を言い。
そのころやっと動けるようになった体を起こし、六人でその鮮やかな世界を見下ろした。
嬉しそうな【神】を、中心に……。




