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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の歩
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第八話

 そんな中。

 ロジャードは眉間にきつくしわを寄せ、深くため息をついた。

「ロイド、もう一度言う。もう手遅れだ」

「えぇ、兄さんが言うように、ルー兄はもう人間失格ね」

 そういってウィルロットは首を左右に振り、レティがティーカップを手に、紅茶をすする。

 ロジャードは彼らの言葉に頷き、妹のアンに憐みの目を向ける。

「アンも大変だな。こんなのが実の兄だなんて」

「お兄様は……いつもこうなので、もう慣れてしました」

 彼女は伏せ目がちに言って、微笑んだ。

 話を振った三人は、そんな彼女の言葉に苦笑いを浮かべた。

「……なんだよ皆して! 俺は手遅れでも人間失格でもない、それに俺ほど立派な人間など他にはいない!」 

 力説するルーフと、それを見て苦笑いを浮かべるアン。

 目が死んだ魚の様になる、その他三名。

「こんな兄で本当にすみません」

 アンが困った顔で、ルーフのかわりにロジャードたちに謝罪する。

 謝罪を受けた三名は、苦笑。

 そんな中、原因のルーフはと言うと……。

「いいか。第一この国、いや世界に俺ほど――」

 まだ力説していた。

 ロジャードはめんどくさいので、彼を放置。

「ところで、ロイ兄。頼んでたの出来た?」

「え? あぁ、出来たよ。はい、レティ。こっちの青いのがアンの」

 彼は、レティの一言で、持ってきていた赤と青の小さな包みを取り出し、やや身を乗り出して二人の前に置く。

 それを手に取る少女たち。

「ありがとうロイ兄! 開けてもいい?」

 ニコニコ微笑むレティ。

 アンは対照的に俯き、青い包みを胸に抱きしめて、小さな声でお礼を言った。

「いいよ、開けてごらん」

 お許しが出たとばかりに、嬉々として赤い包みの折り目を開き、ハンカチを取り出すレティ。

 俯いたまま、おそるおそる折り目を開くアン。

「あ、猫! 可愛い、ロイ兄ったら私のリクエストに答えてくれたんだ!」

「あぁ。ハートと猫だろ?」

「うん。でも私のイメージとちょっと違うけど、とっても可愛い!!」

「…………そりゃよかった」

 嬉しそうなレティにほっとする。

 何しろ、レティは猫とハート。アンは兎。と簡単なことしか言わなかったのだ。

「ねぇ、アンのはどんな感じ?」

「兎さんよ」

 ハンカチを見て、アンは嬉しそうに、はにかんで隣に座るレティに見せた。

「わぁ、可愛い!! ロイ兄は本当に手先が器用よね……うらやましい」

「本当に……」

「こらこら、落ち込むな。練習すれば時期にうまくなるさ」

 ロジャードをうらやしがり、自身の手芸の腕前を悲観し、落ち込む二人。

 そんな二人に、彼は励ましをこめて、練習あるのみだ。と言う。

「それはいつ?」

「私は、何十年後かしら……」

 レティは、ノエル譲りの黒い微笑みを浮かべて、アンは遠い目をする。

 少女たちの反応に、彼は言って直ぐに後悔した。

 そう、彼女たちは針を持たせれば、手をつき、血を流す。

 だからと言って編み物をさせると、網目をとばし、その上編み棒をへし折る。

 さらに、鉄製の鍵棒を持たせると、毛糸はボロボロ。

 打つ手なしの不器用さんだった。

 それでも彼は熱心に、彼女らに手芸を教えていた。

 しかし、そんなある日のことだ。

 レティがロジャードに言った。

「そうだ、ロイ兄に頼めばいいんじゃない!」

 と。そして、彼女たち(主にレティ)からリクエストを受け、彼が作るはめになったのだ。

 しかし、はいそうですか。と素直に従う彼ではない。

 もちろん条件がある。

 そして、その条件は、月に一度でも作品を作って見せに来ることだった。

 レティは不服そうだったが、何とかと説き伏せることができた。

「さ、さて、作品を見せて、レティ。アン」

 ロジャードは慌てて話を変える。

 二人はその声に従い、しぶしぶ作ったものを彼に見せた。

 レティは自信満々に手に載せていた物は、布と布を粗く繋げたような、ツギハギで穴ぼこの布。

 アンは赤い毛糸を編んだのか、からめたのか解らないものを、ひかえめに手に乗せていた。

「……布きれと、毛糸…………?」

 困惑を隠せないロジャード。

 彼の言葉に、怒りで肩を震わせるレティ。

 そんな彼らを見て苦笑いのウィルロットとアン。

 まだ何か言ってるルーフ。

 こうして、レティとアンの苦手な手芸の授業が幕を開けた。

一度書いてたやつなので、簡単な修正をして、一気に完結に持っていきますよ! (^◇^)

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