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ある日突然大悪魔?!  作者: 彩霞
第6章 海でしょ、海!
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その55 「応急処置」

ちょっとシリアス系で続きます。

浴衣の袖が結構しっとりしてきたあたりで、ようやくちょっとだけ落ち着いてきた。枚岡くんが行ってしまってから、それなりに時間も経ってるんやと思う。

テラスから建物に入って、部屋へと足を向けたけど、瑞希さんに見つかるのも何となくばつが悪い気がして、フロントから一番遠い壁際をさっと通り抜けた。


途中の廊下の共用のお手洗いに駆け込むと、センサーが反応してパッと灯りが点いた。洗面台のとこの鏡に映った自分の姿に思わずため息が出てしまう。

顔は全然違うけど、こんな姿は昔よく見てたもんね。幼稚園で仲が良かった子たちがあんまり遊んでくれなくなったとき、小学校に入ったら新しい友達ができると思ってたのにみんなあんまりウチに構おうとせえへんってわかったとき、そのあとも何度も。諦めるっていうことができるようになるまで、ウチはよく泣いてたっけ。お父さんもお母さんも、いつもすごく心配してくれるから、だんだんと涙は見せないようになってたけど、今と同じ、晴れた瞼に真っ赤な目になってたよね……

部屋の洗面を使ってみんなが起きてしまうのも嫌やったから、タオルはなかったけどペーパータオルで代用することにして顔を洗う。ちょっと温めの水は、それでも腫れた瞼を冷やす役割くらいしてくれるかな。ペーパータオルを3枚拝借して、水気を取った後、部屋に向かって歩き出す。


ぱた、ぱた、ぱた、ぱた。


相変わらずウチの足音だけが静かに響いてる廊下。誰にも会わずに部屋に戻ったウチは、静かに扉を開ける。よく考えもせずに鍵を持ってきてたけど、誰か起きてたら困ってたかな……

部屋は真っ暗のままで、幸い3人とも起きてる気配はなさそうやった。そのまま自分の布団に潜り込んで、頭まで掛布団を被ったまま、しばらくいろんなことをぐるぐると考えてたんやけど、そのうちに記憶は途切れたみたいやった。



「ひなー、そろそろ起きろよー」


遠くからそんな声が聞こえてきた気がして、意識がちょっとずつはっきりしてくる。視界は真っ暗のままやったけど。


「ひなー、起きてるか―?

 ってか、何でこんなに見事な団子になってるんだ?」


相変わらず遠い声は、ウチが布団を完全に被って丸まってるからやね……まだ少しボーっとしてるけど、眠りが浅かったんかな……

もぞもぞと布団の端っこを探して抜け出すと、眩しさに思わず目を瞑ってしまう。


「お、生まれた。

 ってか、器用な寝方するなー。

 見事な団子に……ってひなどうした!」


サクちゃんの叫び声に、葉月ちゃんと結衣ちゃんもこっちを向いたみたい。


「うー?

 サクちゃん、みんな、おはよ」

「いやおはようじゃなくて、どうしたんだよ、その目はっ!」


あ……やっぱり腫れは引いてへんかったみたいね……


「えへへ、何か怖い夢見て泣いてしもたみたい……」

「怖い……夢?」

「もう大丈夫やから、心配してくれてありがと」


あんまり顔見られたくなかったから、何となくサクちゃんに抱き着いてみた。たぶんサクちゃん、びっくりしたんやと思うけど、ちょっとしたらウチのことぎゅってしてくれた。


「しっかし、どんだけ怖い夢見たんだよ。

 すっごいことになってんぞ?」

「えー、どうしよー?」

「何かテンションも変だな……」

「そうかな?えへへ」


ずっとくっついてるわけにもいかず、今日の準備もしないといけないから一旦サクちゃんから離れる。みんなはもう着替えも済ませてるみたい。時間はというと、朝ご飯まではまだしばらくある感じやね。


「んー……ちょっと氷もらってくるね」

「どうしたの?」


ウチの顔をじっと見てた結衣ちゃんが急にそう行って外へ行こうとするから、葉月ちゃんが尋ねる。


「こういうときって、冷やして温めてってのを交互にすると、血行が良くなって腫れが引きやすいんだよ。

 温める方はお風呂のお湯、ちょっと熱めで出せばいけるから、タオル絞って目に当てててあげて」


結衣ちゃんが出て行って、葉月ちゃんがタオルを絞ってきてくれた。ウチはまた布団に寝かされて、目の上に温かいタオルをぽふっと乗せられる。


「ただいまー。

 保冷剤貸してもらえたよ」


タオルで見えへんけど、結衣ちゃんの声と足音が聞こえた。


「ごめんね、わざわざありがとう」

「ううん、気にしない気にしない。

 私も結構お世話になる方法なんだよ」

「結衣子、そんなに泣いたりすることあるの?」

「む、葉月その言い方なんかとげがあるぞ、なんてね。

 私こうみえて結構涙腺緩いの。

 ちょっといいお話読んだり、テレビなんかでも簡単に泣けちゃうから。

 ほんとは擦らなければあんまり腫れないんだけど、つい拭っちゃうでしょ?」


喋りながら結衣ちゃんがウチのタオルを取り上げて、代わりに別のタオルをまた目の上に置いてくれる。


「ひあっ!」

「あ、ごめん、これが保冷剤包んでるやつ。

 ご飯まで2、3分ごとに交換すればだいぶ違うと思うよ」

「まあ、この顔でご飯行ったら男子もびっくりするだろうしなー」


そうや、枚岡くん……どうしよ、ちゃんと気にしてへんって伝えて誤解解かへんと……

ご飯まで、ずっと温めて冷やしてされてる間中、どんな風に言えばいいんか考えてたけど、ちっとも考えがまとまらへんかった……

次こそ、きっと、やっと海っ!のはず…

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