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信頼の絆 ~終わり無き永遠の旅へ~  作者: 黒衣の旅人
異世界 ディアスガルド編
3/5

第二話

戦いが終わった後、俺は少年少女の二人に近づいていく。少年がハッとして接近する俺に気がつくと、少女を後ろに庇って前に出る。・・・ずいぶん警戒心高いな?一応助けたのに俺ってそんなに怪しいか?


傷だらけの少年が手に持ってる片手剣を向けて威嚇する。話をしたいのに刺激するのもあれだし途中で立ち止まり、ここでじっくりと二人を見てみる。

ショートヘアの少年は剣士の格好で身体を包む動きやすそうな鉄の鎧と小型の盾を持ち、セミロングの少女の方は魔法使いなのか先端に緑の宝石が付いた長杖とマントを身に付け、肩から斜めに担いだ鞄を持ってる。どちらも明るい金髪で目の色は青く、少年が少女より頭一つ分背が高い。もちろん美少年と美少女といった美形だ。うーん、テンプレ容姿?


まぁ、とにかく話しかけようか。


「・・・なんだかかなり警戒してますって感じだが、俺は手も足も出さないって。まずはお互いに自己紹介しないか?」


「・・・・・・助けてくれたことは感謝します。だけど先ほどの魔法、あなたは魔道Sランクの方ですか?水の壁はまだしも、どこからか突然と出た鎖とあなたのあの動きの早さ、どっちも見たことも聞いたことも無いです。仮に魔道SSランクだとして、国のどこかの重役に必ず付かないといけない国のお抱えのSSランクがこんな所に居るのはおかしい。あなたは、一体何者ですか?」


あー、これは不味いか?あの言い方だと魔法が重要視されてる世界かもしれん。しかも国お抱えときたか、どう誤魔化すかね。


「うーんと、悪いが俺は魔道SランクでもSSランクでもない。何の変哲も無いただの旅人で、あの鎖はぁ・・・、ただの手品だっ!」


「・・・・・・・・・は?手品?」


「・・・それは嘘」


うん、苦しすぎたな!これは言い訳にもならん。っていうか、嘘だと言ったあの子、何か鋭い目つきでジッと見てくるな?


「ああいや、俺の特殊能力とも「・・・あの自己強化の魔法、強化魔法はまだ研究中のもので重ねがけは不可。そして鎖は少し異質な感じだったけど魔法の一種なのは間違いない」・・・んーと、断言するとはこりゃ痛い」


情報不足の状態で魔法の専門家の相手は無謀だったか、有無を言わさない淡々とした喋りで言い切られる。軽く使ったのがいけなかった。あの鎖は空間を利用した特殊な魔法の空間魔法って言うやつだが、あれに興味があるのか指摘した時の目に怪しい光が見えたぞ・・・。


「まぁなんだ?俺は黒守歩、姓が黒守だからアユム・クロモリだな。旅をしながら便利屋業をやってる。君らは?」


「便利屋、ですか?・・・僕はクリフ・エルム、こっちは妹のティナ・エルムです」


「・・・(ぺこり)」


警戒してはいるが意外と礼儀良く挨拶する二人。さて、ここからが問題だ。


「クリフとティナか。さっきも言ったが俺は魔道Sランクとかじゃない、ただの旅人だ。使ってた魔法については説明してもいいが、俺も知りたいことがあるからこれは取引になるぞ」


「・・・分かった。何が知りたいの?」


「ちょ、ちょっと!勝手に決めないでくれよティナ!助けてくれたのは感謝するけどありえない強化魔法と知らない魔法を使ってた。魔道Sランクじゃないと言うのもどこまで本当なのかは・・・」


「大丈夫。信用できる」


「だからなんで・・・」


「魔法は友達」


(黒守)「・・・は?」

(クリフ)「えっ?」


「説明するって言った。魔法に罪は無い・・・罪は使い手の使い方」


・・・・・・これは、なんだ?あの子の自論なのかそんなことで信じるのかぃ。兄が頭抱えてるぞ。


「それに彼が助けてくれたのは事実、あの実力なら私たちに勝ち目はない。あなたも敵対する理由はないでしょ?」


「・・・はっきり言うと依頼で君らを殺してくれってのが無いかぎりはな。心配しなくとも今はフリーでね、仕事じゃないかぎり襲う理由はまったくないよ」


「彼もああ言ってる。だから大丈夫」


「・・・本当、なんですね?」


「ああ。『どんな依頼も引き受ける、嘘偽りは許さない』、それが俺のルールなんでね。仕事上まず相手に信用されないと仕事が来ないしな」


「分かりました・・・」


兄は渋々とだが納得して剣を鞘に収める。妹はあれだ、魔法が大好き・・・なんだろう。魔法に意思があるのか、友達ってのはよくわからんが。


「さて、もう少し話がしたいが場所を移さないか?君の怪我の手当てもそうだが、ここだと周りがちょっとな」


言われたクリフが辺りを見て顔を顰める。助けてもらったとはいえ、辺りは死体がゴロゴロ転がり、その内二人の男の首が転がっている。襲ってきた相手だがこの惨状は良い気分じゃないだろう、葛藤とか心が痛む気持ちがマヒってはいるが感性はまだ普通の俺だってそうだしな。

移動するのを了承した兄妹だが、この森は聖域の入口に近いところなので死体をこのままにしてはおけないと言う。仕方ないので死体を一箇所に集めて魔法で埋めることにした。




「・・・よっと、これで全員だな。一応持ち物を調べたが、身元の特定や怪しいものは何も無かったぞ」


「分かりました。ありがとうございます。おとなしいとはいえ、この森にも魔物がいますから放って置いても食べてしまうと思いますが、聖域近くで放置するのは・・・」


「いいっていいって、気にすんな。やったのは俺だし、葬るぐらいはな。それより早く埋めてやろう」


「ええ。ティナ、お願いするよ」


「分かった。・・・大地の精よ、我の願いを聞き入れ力を貸して。《アースウェーブ》」


彼女が呪文の詠唱をすると周囲の地面が盛り上がり、大量の土の波が現れて死体に覆いかぶさる。だけどこれだと山盛りの土山なだけで魔物に掘り起こされるぞ?


「あー、これじゃちょっと適当すぎるな。・・・まずは『クエイク』。続いて、大地に潰れろ《グランプレッシャー》」


俺が魔法を使うと土山の下に地割れが起き、更に大きな重圧が加わって土山が沈んで地面に埋まる。この魔法は階層世界でクエイクは魔石、グラプレは魔術書から覚えた。二人は知らない魔法を見て目を見開いていたが無視する。これは教えて覚えられる物でもないし。


その後二人と一緒に移動するため歩き出す。あの男たちの襲撃に関して色々聞いていたが、その途中でクリフが離れ離れになった仲間と合流したいと言ってきた。


「なんだ、まだあいつ等の仲間が残ってたのか?そんで君たちの仲間が応戦してると」


「ええ、あっちには四人ほどが行きましたが、仲間の二人は僕たちより強いですから大丈夫だとは思いますが」


「君も結構強いと思うが。傷だらけだとはいえ、あの数相手に魔法を封じられていた妹を庇いつつ、守りに専念して生き残ってたし」


「いえ、あなたが助けてくれなかったら最後に死んでました。・・・ところで、炎の中級魔道で高威力のフレイムボールの直撃を幾つも受けてましたが、本当に大丈夫なんですか?」


「うーん?あれなら無傷とはいかないが平気だ。着ている服と上着は特別製でな、傷ももう手当してある」


あれは冗談抜きで痛い熱いだったよ。この世界にたどり着くのに時間が掛かりすぎてたから、やっとたどり着いたことで気を抜いて油断したな。しかも落ちた先が戦闘中で攻撃の射線上なんてどんだけ運無いと?

不老不死と言っても痛覚はちゃんとあるし、病気にも罹って飢えもする。殺されても死にはしないが、あくまで殺すことは可能(・・・・・・・)ってことだ。それを昔利用されたこともある。

殺された時に意識が墜ちるから断言はできないが、完全な死は多分消滅させることなのだろうが、身体の一部が残っていればどんな状態からでも気が付いたら五体満足で生き返ってしまう。どんな生き返り方をしてるのかは気になるが・・・さすがにグロそうだから見たくもないし知りたくも無い。

・・・・・・こんなんでも俺は人間なんだよぉ(大泣き)


・・・まぁとにかく、戦闘力を除いたこんな復活蘇生の不死身チートを持ってはいるが完全無敵とは言えない。いろんな世界、特に階層世界でよく見かける転移者や転生者のチート能力には負けるよ?最初に召喚された時のさまざまな恩恵能力が無理やり不死身チートを付けられたせいで消滅して、ホントにどれだけ苦労したのか・・・。


ぼんやりと薄れた記憶を思い出して黄昏ていたが、覆面黒ずくめに襲われた道の近くに来たようで、クリフの傷の手当ても兼ねて逸れた仲間二人を待つことに。先に《森の町フォレストレア》に行った可能性もあるので、しばらくしたらそちらに向かうと言うクリフ。

俺もその町まで一緒に付き合っていいかと訊くとティナの方が即座に良いと答えた。理由は「まだ(魔法の)説明してもらってない・・・」とのこと。


だからお兄さんが頭抱えてるって。




クリフの手当てをしながらしばらく待ってると、こちらに近づく人の気配がした。


「ん~?誰か来たな。真っ直ぐこっちに来る」


「え?周囲確認(エリアサーチ)で確認したのですか?」


「いや?気配を感じ取ってだが」


「け、気配ですか・・・それを感じ取れるなんてやっぱり強いですね」


「褒めても何も無いぞ。ところで・・・」


寄りかかってた木から離れると、向かいの木に寄りかかり座る兄妹の前まで行く。どうしたのかと怪訝そうな顔をするクリフ。そして・・・



ヒュヒュン!

シュッ!

ガキキィン!



兄妹に向けて投げられた二本のナイフを袖から出した軍用(ファイティング)ナイフで切り弾く。


「気配が三人あるんだよ、これが」


「・・・・・・ッ!」

「なっ!だ、誰だ!」


二人は立ち上がるとナイフが飛んできた方へ向かってクリフが叫ぶ。

問いに答えるが如く木々の間から男が三人出てくる。さっきの奴らと同じく黒ずくめで、うち一人は顔も隠さずフードの男以上の実力を持ってるとみた。


その男、銀髪褐色の優男は綺麗なアルカイックスマイルで口を開く。


「やあ、はじめまして。ボクは暗殺専門の殺し屋、『ダーデス』のフロムスだ。いきなりで悪いけど質問をしても良いかい?」


「なんだ?答えられるなら答えるが」


「大した事じゃないよ。どうしてそこの二人が生きてるのか不思議でね?キミが助けたの?」


「まぁ、結果的に?そうなるな。ああ、襲ってきた奴らは全員土葬しといたから」


「それはありがとう。失敗者を処刑する手間が省けたよ。それじゃ、キミも含めて死んでくれる?」


銀髪くんが淡白に告げると覆面二人が左右に動く。だが、望み薄だがちょっと訊きたいことがある。


「あー、その前にこの二人の仲間の冒険者はどうなった?念のため訊きたい」


「あの冒険者?一人はもう助からないと思うよ。ボクが直接相手したからね?もう一人は強かったよ、部下一人を切り捨てて助からない方を担いで逃げた。でも、今回はあくまでそこの二人が狙いだからね、ボクは放って置いても問題はないと思うんだ」


「まさか・・・フリックさんとミーシャさんが?そんな・・・」


おやま、なんとか逃げられたのか。クリフはショックを受けてるが、一人は瀕死とはいえどちらも生きてはいるようだ。にしても、残忍というか残酷な性格?何考えてるか判らんタイプか。「ボクは」と言うことから自分の考えを優先か?


「なるほど、冒険者二人の状況とお前がリーダーってことは理解できた。最後にこの兄妹を狙う理由を教えてくれね?」


「必要はないよ?キミの相手はボクがしよう。・・・オマエたち、ターゲットは任せるから必ず仕留めなよ?」


二人の部下が短剣と小剣を抜く。そして銀髪が魔力を纏う蒼い剣を抜いて俺に笑みと共に刃を向けてくる。そいつ等の動きに注意しつつ俺は兄妹の間まで下がる。

クリフとティナは二人とも剣を抜いた瞬間から銀髪の男から漂う強烈な殺気に恐怖を感じて畏縮している。・・・なので、瞬時に二人の腰に手を回して俺は二人を抱き寄せる。咄嗟のことで驚くクリフとティナ。

フロムスはそれを見て目を細める。


「へぇ、もしかしてボクから逃げる気かい?ボクは一度狙いを付けたら逃がさないよ」


「冒険者の方を見逃しといて何を言う。悪いけど俺は長旅で疲れててな、連戦はパスさせてもらうわ」


「ふふ、逃がしはしない、よッ!」


弾丸のような速さで一気に飛び込んできたフロムス。めっちゃ速いな?そのまま突きを繰り出そうとする。だけどねぇ、さっきは戦ってたけどほんとに旅疲れが溜まってるから、悪いが三十六系逃げるが勝ちよ?


「残念だがまた今度な!『空間転移ッ!』」


フロムスの神速の突きが命中する寸前にクリフたちと出会った場所を思い浮かべて跳躍する。後に残るは黒守が居た胸の辺りで空を切って目を丸くするフロムスと部下の三人だけとなる。


「・・・ふ、ふふ、ははは。アッハハハハ!!なんだろう今の?転移魔法?完成してたっけ?参ったな、ボクとしたことが逃しちゃった。エーベス様になんて言おう?」


突然笑い上げたフロムスに困惑する部下二人だが、それを余所に困った口調と声色の割にはとても嬉しそうな笑顔をしているフロムス。手に持つ長剣を収めると部下を伴い歩き出す。


「ふふ、ボクをビックリさせるなんて嬉しいな。でも、一度狙いを付けたら逃がさない。また会うまで待っててね、真っ黒の黒衣さん・・・」



___________________________



「やれやれ、マジで速いな?ギリギリ掠ってたか」


見た感じ十五.六歳の二人をいつまでも抱き寄せてられないのでクリフとティナを解放すると、自分の胸元を見て溜息を吐く。跳ぶのに間に合ってたと思っていたが自身の胸には小さな出血ができてた。


「ふぅ、おーい大丈夫か二人とも?立てるか?」


「・・・私は大丈夫」


「僕も、大丈夫です。それよりフリックさんとミーシャさんが気になります!」


「仲間の冒険者だっけか、どっちかが重体らしいな。《フォレストレア》に向かったと思うか?」


「おそらくですが、ここから近い村や町はそこしかありません」


「ならさっさと向かうか。あいつ等が追いつかない内にいかねえと、警戒は俺がするから案内頼むわ」


「・・・分かりました。急ぎましょう」


なんか厄介そうな奴に目を付けられたっぽいが仕方ない。この兄妹の狙われる理由は気になるし、あいつ等のせいで到着後も何かあるとは思うが、二人とも仲間の冒険者の事で不安になってるから早めの安否確認をしないとな。


こうして俺と二人の兄妹は《森の町フォレストレア》に向かうことになった。

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