第七話 獣人?ナニソレオイシイノ?
自分で書いた小説を読み返してたら、気が付いた点があったので。
前回の「勇者と俺の冒険記」にあった、シリアが「……レンのバカ」と言う所があったのですが、あれは蓮がエリスの告白に気が付いてないことに対してのセリフです。
自分で読んでいて、まぎらわしかったので一応説明をしておきました。
次の日、俺達はリディア家をあとにし、新しい街へ向けて出発していた。
そこで、俺はふと思った疑問を口にした。
「そういや、カノン。お前ってこのまま俺達について来てくれるのか?」
確か、最初は森を出るまでだってはず。
「あぁ~、なんかおもろいからついて行くわ」
「そんな理由かよ!!」
「はは、えぇやん」
「はぁ……」
まぁ、旅も賑やかな方がいいだろう。
「しっかし、レン達はなんで旅してんの?」
「まぁ、俺に聞かず、シリアに聞いてくれ」
「えぇ!?そこで振ってくる!?」
「どうしてなん?」
「えぇっと、まずはガルヴィアに向かってるの」
「ガルヴィアですか?武闘派の王都ですよね?」
「そうなのか?」
「「えっ!?」」
何故か俺が聞き返すと、二人に驚かれた。
「な、なんや知らへんのか?」
「あぁ」
「レンはあまり地理とか政治の知識がないから」
「そ、そうなんですか」
「ま、そんなことは置いておいて」
「そんなことって言うな」
「私はガルヴィアの王様に会わなきゃいけないの」
「またなんで」
「私が勇者だから」
「「えぇ!?」」
「っ……!!」
み、耳が、キーンってなっちまったじゃねぇか。
「ゆ、勇者やったんかいな!?」
「そ、そうとは知らず……」
「ま、こんなチビィのが勇者だとは思えねぇよな」
「ふんぬ!!」
ガスッ!! ←アッパー
「うがぁぁぁ!!!」
あ、顎がぁぁぁぁぁぁ!!
「レンも懲りへんねぇ」
「あ、あはは……」
く、くぅ……この程度で!!
「ふ、ふはははは!!!我は不滅なりぃぃぃぃ!!!!」
「うわ!!びっくりした~」
「ほら、バカやってないで、先行くよ」
「……」
反応してくれたのが、カノンだけだとは……。
あっ、エリスが固まってる。
「……ハッ!?」
あ、今我に返った。
とりあえず、俺達はムドムニを離れることにした。
今現在。太陽が真上にかかってくる頃。
俺達は丘陵を抜け、山に入っていた。
山越えをすると、ガルヴィアに辿り着くことができる。
「しっかし、あれだな。こう、面倒なことが多いな。山越えって」
「はい、そんな呑気なこと言ってないで、歩く!!」
「あかん、ウチもうダメやわ……」
「か、カノンさん!?」
その場に倒れこもうとしたカノンを、エリスが急いで支えた。
「や、休まへん?」
「それ、俺も賛成」
「ぼ、僕も……」
「そ、そうね、歩き続けてたもんね……」
シリアも疲れていたのか、賛同して辺りを見回した。
おそらく、休める場所を探しているのだろうが、いかんせん、今いる場所は緩い斜面。
なかなか見つからないようだ。
「うーん……」
「どうしたんや?」
「休めそうな場所が見つからなくて……」
「寝るわけじゃないんだから、どこでもいいだろ」
「うーん……」
「あの、座り込んで休めば……?」
「ま、そうね。じゃ、座って……」
「お頭!!あんな所の人がいやすぜ!!」
おそらく、シリアは休もうと続けようとしたのだろう。
だが、近くから飛んできた声に遮られた。
「おぉ、今日はついてるねぇ。おいテメェ等!!構えろ!!」
「「「おぉ~!!」」」
「山賊やで、あれ」
「ど、どうするんですか!?」
「エリス、落ち着け。ほら、深呼吸」
「すーはー、すーはー」
「はい、バカやってないで、アンタ等も構える!!」
「「はい」」
俺がエリスを落ち着かせている間に、カノンとシリアはすでに武器を構えていた。
俺達も遅ればせながら、武器を構えた。
「おいおい、この数相手にやる気か?」
「今なら、金目のモン置いていきゃあ、見逃してやんぞ?」
「冗談うまいなぁ~」
「そ、そうです!!」
「「寝言は寝て言えよ、バーカ」」
む、シリアとかぶってしまった。
「て、テメェ等!!」
「殺す!!」
その言葉を皮切りに、山賊達は俺達に飛びかかってきた。
―が、十分後。
「「「「「「すんませんっしたぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」
「うむ、わかればよし」
「バカやってんな」
またも、シリアに突っ込まれてしまった。
これでは、俺がボケをしてるみたいじゃないか。
「さて、さっさと俺達の前から消えてくれ」
「「「「「「了解しまっしたぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」
砂埃を上げながら消えて行った。
逃げ足だけは一級品だった。
「では、休むとするか」
「そうやねぇ~」
俺達はその場に座り込み、一時間ほど談笑し合った。
しかし、休憩を終えて再び歩き始めて十分程した頃。
「ん?」
「どうした、カノン」
「いや、なんか聞こえへん?」
「んー?」
俺達はそろって耳をすませた。
……ドドドド
「なんか走って来てね?」
「そうみたいやな」
「あ、あれって!!」
「エリス?」
「ま、魔物の群れですよ!!」
エリスが指差した先を見ると、そこには魔物の群れがこっちに走って来てるのが見えた。
「「「「!?!?!?」」」」
俺達は魔物の群れを視認した途端、武器を構えた。
「来るぞ!!」
『ウガァァァァァァ!!!』
魔物達もこちらを視認したらしく、雄叫びを上げた。
十五分後。
俺達は魔物の死骸の中で片膝をつき荒い息を上げていた。
「くっそ……ついてねぇな……」
「ほ、ホント……」
「誰や、不運を呼び込んどる奴は……」
「はぁ……はぁ……」
俺達は、そのまま息を整えるまで無言だった。
三十分程した後、俺達は先を目指しだした。
「今日中に山頂に着ければいいわね」
「そうやねぇ~」
「しっかし、二度あることは三度ある、とも言うし……このままじゃ、何があるか分からんな」
「あ、あはは……」
「そうならないことを切に願うシリアであった」
「モノローグっぽく言うんじゃない!!てか、そんなこと思ってない!!」
シリアの突っ込み(右フック)を華麗にスルーした俺。
うーん、成長したな、俺。
「しみじみしてんな!!」
ベキッ!!
「ぐは!!」
結局殴られてしまった。
しかし、俺の言っていた諺通り、三度目の事件が起きたのだった。
……誰一人望んでないのにな!!
日も傾き、木々の隙間から見えている空も、茜色に染まっていた。
「結構な時間になってきたな」
「そうね……」
「そろそろ野営できる場所を、探したほうがええんちゃうか?」
カノンの言う通り、だんだん斜面の角度がきつくなってきていた。
「うーん、そうね。無理しない方がいいかも」
「エリス、大丈夫か?」
「あ、だ、大丈夫です……」
「それ」
「うきゃぁぁぁあ!!!!」
俺がエリスの脇腹をつついた途端、エリスは変な声を上げ、その場にしゃがんだ。
「れ、レンさん!!何するんですかぁ~!?」
「何って、悪戯だけど」
「堂々と言わないでください!!」
「はいはい、バカやってないで、アンタ等も休めそうな場所探して」
「「すいません」」
俺達はそろって休めそうな場所を探すものの、なかなか見つからなかった。
「どうすんだよ」
「文句言う前に探す」
その瞬間だった。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
「うおぉっ!?」
突然、近くの茂みから女が飛び出し、俺に殴り掛かってきた。
しかし、その女の後ろにはでっかい尻尾?がピーンとしていた。
「貴様!!今ここで殺してやる!!」
「はぁ!?何言って……!!」
「うるさい!!」
ブンッ!!
「ちょ、待て、待てって!!」
「でやぁぁぁぁ!!」
「ちぃ!!」
俺は急いで銀を抜き、踏み込み柄尻で相手の鳩尾辺りを突いた。
「ぐっ!?」
「人の話を聞け!!」
「ッ!!(ビクッ)」
俺の一喝に一瞬体を震わせた女。
「誰と間違ってるか知らんが、俺はアンタなんて知らんぞ」
「……」
俺がそう言うと、目の前の女は俺をジロジロと見て来た。
すると。
「あ」
などという、間抜けな声を上げた。
「あン?」
「……ご、ごめん」
どうやら、誰かと見間違えていたのが分かったのだろう。
女は謝ると、尻尾をシュンとさせた。
―あの尻尾、本物か?
俺は思わず、尻尾に手を伸ばしてしまった。
フサッ
「きゃ!?」
「おぉ、すげ」
凄い触り心地がいい。
「えーっと……」
「これって本物?」
「え?あ、うん……」
「へー」
フサフサ
「おぉ」
「あ、あまり、さ、触られると……」
「あ、あぁ、悪いな。初めて見たもんだから」
「そ、そう」
俺は尻尾から手を放し、女を助け起こした。
「えっと、よかったら、お詫びがしたいんだけど……」
「お詫びか……てか、シリアさんよ」
「なによ」
「これって、何?」
俺は女の尻尾を指差した。
「尻尾」
「それは分かる。じゃなくて、なんで尻尾が生えてんだ?」
「あぁ、それは彼女が獣人だからよ」
「獣人?」
「てか、ホンマにレンて、何も知らへんのやな」
「悪いか」
「悪いに決まってんでしょ。獣人ってのは、人間と魔族、どちらの味方でもない、中立の種族よ」
「魔族ってのは魔王とかだな」
「そ。種族は人間、魔族、獣人、精霊の四種族あるの」
「へぇー」
「獣人ってのは、部族ごとにそれぞれ村を構えてて、部族同士はまったく干渉しないってさ」
「村……?」
「村はさすがに分かるでしょ」
「いや、それは分かるに決まってんだろ。そうじゃなくて、村があるんなら、一日だけ泊めてもらえればいいんじゃね?」
「出来ればそうしたいけど……」
シリアが渋っていると、獣人の女が急に声を出した。
「それだったら、私が村長に説明するから、大丈夫だと思う」
「え!?ホント!?」
「うん」
「やったら、助かったわぁ~」
「そうですね」
「じゃあ、ついて来て。あ、私はサキ」
そして、俺達はサキに連れられ、獣人の村に行くことになった。
次回予告
獣人の村に着いた蓮達。
そこで待っていたのは、シリアスな話。
はたして、シリアスな話の内容とは?
次回乞うご期待!!