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第二話 バカな王様に魔王討伐に駆り出された、かわいそうな俺……とシリア



1G=10円ぐらいです。





十分程度歩くと、俺を含めた三人+気絶した男は城に着いた。


「ほえー、でけー、なにこれー」

「バカみたいな喋り方しないでよ」

「お前に喋り方を非難される筋合いはねぇ」

「……後で覚えておきなさいよ」

「何を覚えておくんだ?」

「……」


その時、右(正確には右斜め下)から殺気が飛んできた。

俺は、それまで城に向けていた視線を右(正確には右斜め下)に向けた。

そして、少女と目が合った(見下ろす感じで)瞬間、その目が語っていた。


―コ      ロ      ス


―はっ、できるもんならやってみな(笑)。


その瞬間右足の小指辺りに打ち抜くような激痛が走った。


「いってぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「……ふんっ」

「あぁぁぁぁあああ、痛いぃぃぃぃ」

「だ、大丈夫ですか?」

「あぁ、心配すんな、コイツがヴァカなことしただけだから」


俺は右手を少女の肩に乗せ(たつもりが、頭に乗せていたようだ)、ポンポンと叩いた。


「ムキー!!さっきから、私が背が低いことを強調ばっかしてんなよ!!!」

「はて、なんのことかな?」

「ウガー!!」


そんな様子を男Aは苦笑してみていた。

さんざん少女をいじって遊んでいると、いつの間にかデカい扉の前にいた。


「んー、でけーな。人が入る大きさじゃねぇだろ、これ」

「フーッ!!」


隣から猫みたいな声が聞こえてきたが、無視無視。


「無視すんなぁぁぁぁ!!」

「うるさいなぁ」

「誰のせいだと!!」

「誰?」

「お前だろうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


彼女が落ち着くまでに、かなりの時間がかかったことは言うまでもないだろう。

ようやく落ち着いた所で、俺達はデカい扉についている小さな(といっても人が入るには十分な大きさだ)扉から中に入って行った。


「おぉ、よく来てくれた。我が勇者よ」

「アンタのもんじゃないでしょうに……」

「うっはー、見るからにバカそうだな……」

「言っちゃダメ。かわいそうでしょ」

「何をこそこそ言い合ってるんだい?」

「いえ、何も」

「そうかい。それより、隣の彼は誰だい?」


そう言って、バカそうなヤツは俺を指差した。


「おいおい、人を指差してんじゃねぇよー」

「む?」

「ちょ!?」

「それに、自分から名乗れっての」

「私の名前も知らんのか?」

「知るかよ」

「えぇ!?知らないの!?」

「なんで、お前が驚くんだよ」

「だって、彼はシン様だよ、ここら一帯を治めてる王様」

「王様ぁ?あのバカそうなのが?」


 ビキィッ


「バカそうじゃなくて、バカなの」


 ビキビキィッ


「へー、バカでも王様って務まるんだな」


 ブッチン


「まぁ、優秀な部下がいるからでしょ」


 ブチブチブチィ!!


「さっきからなんだ、変な音立てやがって」

「き、き、き、き、き、き、き、き、き、き、き、き、き、き、き、き、き」

「サルか、お前は」

「貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


大音量で響くんですね、わかります。


「んな悠長な事言ってないで!!」

「なぜ、俺の心の声が聞こえるんだ?」

「貴様ら、私を馬鹿にするのもいい加減に……」

「「いや、バカにするも何も(笑)」」

「うがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


臣下らしき人達は、「殿が御乱心だー!!」的なテンションになってる。

それからしばらく、殿の御乱心は続いた。

三十分程して、ようやく王様が落ち着き、話ができるようになった。


「それで、今回呼ばれたのはどうしてです?」


隣の彼女がそう聞いた。


「それはだな。シリア、君には出立してもらいたいんだ。魔王討伐に向けて」

「しかし、まだ早いと王様が仰ったんですよ?」

「そうだったか?まぁ、そんなことはどうでもいい」

「どうでもって……」

「さっさと行って、さくっと倒して来い。君は勇者だろう?」

「勇者?」


今まで黙っていたが、つい口を挟んでしまった。


「なんだ、仲間なのにそんなことも知らんのか」


バカに、バカにされたような気がする。


「さっき仲間になったばっかりだからな」

「ほう」

「で、勇者ってのは?」

「神の信託を受けた者よ」


横から勇者と呼ばれた小……あーメンドクセーからシリアでいいや。

シリアが説明してきた。


「神の信託を受けた者は、聖なる力を持つようになるの。まぁ、普通は男性なんだけどね」

「あぁ、そうか。男に見えたんだな、神様も」

「おのれは人の気にしてること、サラッと言うんじゃねぇよぉぉぉぉ!!!!」


 ドゴッ


「ぐっは!?」


アッパーカットをされ、無様にこける俺。……情けねぇー。


「ンン!!……それで、行ってくれるか?いや、つーか行け」

「命令すんなよ」

「そうだぞー、いくら自分がバカにされたからってなぁー」

「んな!?」


俺がニヤニヤしながら言ってやると、王様は顔を真っ赤にして震えだした。


「ま、まぁ、いいだろう。それより、行ってくれるか?」

「まぁ、断った所で、了承するまでずっと、呼び出されるんでしょ?わかりましたよ、行けばいいんでしょ、行けば」

「おぉ、君ならそう言ってくれると思ってたよ!!」


はい、テンプレ、テンプレ。乙でーす。


「貴様、バカにするのもいい加減に……!!」

「いやだなぁ、褒めてるんですよ?これでも」

「「嘘だっ!!」」


シリアと王様から同時に突っ込まれてしまった。


「ンン!!……では、行ってきたまえ、勇者とその仲間よ」

「了解でーす……」

「あれ?なんで俺も行くことに?」

「いいからこっち」


俺はシリアに半ば引きずられるようにして、王様の前から去っていくのだった。




































引きずられるようにして、着いた先は武器屋だった。


「なんで、武器屋?つか、初めて見たわ、武器屋なんて」

「マジ?」

「おう」


そう言うと、何故か呆れられた。


「アンタって、どっかの田舎者?」

「いや、オレが住んでるのは、都会に近いぞ」


だって神奈川だし。


「都会に近いのに、王様も知らなきゃ、勇者の存在も知らず、さらに武器屋まで知らない?」

「だって、武器屋なんてないし」

「何処それ?」

「神奈川の××市」

「か、かな……?何処それ、聞いたことないんだけど」

「は?東京の近くだよ」

「とうきょう?」

「おいおい、それも知らねぇのかよ」

「何の話してんの」

「……ちょっと待て。頭ん中を整理させてくれ」


…………………………………………………………………………………………… (たっぷり二十分)


「うん、夢だな、コレ」

「オラッ!!」


 ドゴォ!!


「ぐっは!!」


俺のみぞおちにシリアの右ストレートがめり込んだ。


「イッテェェェェ!!!!!」

「これで、夢じゃないってわかったでしょ?」

「ううううううう……」


確かに、さっきもそうだったけど、夢じゃないのは分かった。……認めたくないけど。


「じゃ、じゃあ、ここの名前は?」

「名前?」

「土地名だよ」

「シンだよ」

「あれ、さっきのバカの名前じゃん」

「そうだよ、だってシンってのは王家の名前だよ。で、その王家が昔っから治めてるからシン」

「なるほど」


って、んなことはどうでもいいんだよ、俺。


「そういえば、アンタってどうして森にいたのよ?」

「そうだ、それだ!!」

「えぇ!?」

「寝てたんだよ、ベットで!!それなのに、目が覚めたら、森に!!」

「離れろ!!」


 ドゴォ!!


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


俺はいつの間にかシリアの肩を掴んでいたらしい。


「ぐぅ……」

「まさか……」

「どうした?」

「アンタ、高い所から落ちる夢、みたいなの見なかった!?」


今度は、向こうから近寄ってきた。

離れろって言ったり、近づいて来たり、どっちなんだ。


「落ちる夢……見たな」

「やっぱり……あれはアンタだったのね」

「どういうことだ」


俺は一通りシリアからの説明を聞いた。


「つまり、お前は城の窓から、なんかが森に落ちて行くのを見たと?」

「そ。で、ちょっと前の事なんだけど、私、近くの神殿で予言を聞いたの」

「予言?」

「私が旅立つとき、心強い味方が現れるだろうって」

「それが、俺?」

「……認めたくないけど」

「あー無理無理。俺にそういうのを求めんでくれ」

「でも、アンタ帰る場所とか、行く当てとか、金とかあんの?」

「……そう言われると、無いな」

「なら、私について来てよ」

「なんで?」

「旅は道連れってね。つまり、アンタが金を貯めるまで、私と一緒に来るだけでいいから」

「はぁ?メンドクセー」

「どうせ、何もわからないんでしょ?」

「……キコエナーイ」

「どうして片言……とりあえず、私が必要なものは買ってあげるから」

「奢り?」

「出世払い」

「チッ」

「あと、必要な知識とかも教えてあげるから」

「だから?」

「少しの間、私の護衛をするということで、どう?」


つまり、コイツについていけば、しばらくの間は困らなくて済むってことだな。

……しかし、これってまさか、異世界に飛ばされたー、とかっていうやつ?

まさか、自分が経験することになるとは……


「ちょっと?」

「あぁ、いいぜ。……元の世界に戻るためにも、知識は必要だもんな」

「何か言った?」

「いや」

「じゃ、早速装備を整えなきゃ。……あと、服もね」


そう言われ、改めて自分の服装を見た。

パーカーに七分のズボン。


「まるっきし、部屋着じゃねぇか……」

「じゃ、早速武器だね」


そう言って、俺は武器屋に連れ込まれた。

中に入ると、見たこともないような武器が多く置いてあった。


「おう、シリアじゃねぇか。今日はどうした?」

「コイツの武器をね」

「ほーう、カレシか?」

「ち、違うわよ!!」

「よろしくな、アンちゃん。で、希望なんかあるか?」


俺はそう言われ、武器を眺め始めた。

どれも、自分の手には負えないようなものだった。

が、その中で唯一目を引いたのが、まったく飾り気もない、見るからに初心者用の剣だった。


「んー、これかな」

「そいつぁ、初心者用だぜ?見た所、アンちゃん、結構鍛えてんだろ」

「まぁ、鍛えてるけど、これぐらいしか扱えそうにないし」

「アンタ、私の剣を軽々使っておきながら、何言ってんのよ」

「ほう!!こりゃ驚きだな。シリアの剣を軽々とねぇ」

「ん?なんか変だったか?」

「変も何も、あの剣はなぁ、勇者以外が持つと、とんでもなく重くなるんだ」

「へぇ。なんでまた」

「あの剣は特別製でな。代々勇者のみ持つことを許されてんだ」

「それをアンタは軽々振り回してたから、驚いたのよ。なのに、初心者用の剣を選ぶとは……」


何故か、呆れられている。


「まぁ、武器は使う奴で全然変わってくるからな。アンちゃんの勘を、俺は信じるぜ」


そう言って、オッチャンは壁にかかっていたそれを外して、俺に手渡してきた。

俺はそれを受け取り、握ってみた。

手になじむ感じがちょうどいい。……さっきのシリアの剣に比べれば、少々軽いが。


「で、お代は?」

「お、シリアが払うのか?」

「ま、まぁね」

「アンちゃんのためにまけといてやるよ。3500Gだ」

「サンキュー、オッチャン」

「いいってことよ!!」


こうして、俺は初心者用の剣(「銀」と名付けた)を手に入れたのだった。


「次は服ね」


またしても、引きずられるようにして、連れていかれる俺。

まぁ、仕方ないんだけどね。

着いた先の店で、俺は黒のワイシャツ(みたいなもの)と黒いベルト、黒いジーパンに黒のブーツ、あと、黒いロングコートを買ってもらった。

合計2500Gである。


「てか、なんで黒ばっかなのよ」

「黒が好きなんだよ」

「ま、安かったからいいけど」


安いものを選んでいると、黒ずくめになってしまったのは内緒だ。


「ま、これで、準備も整ったことだし」

「悪いな、なにもかも払ってもらって」

「出世払いだから、そこんとこよろしく」

「分かってるよ」

「じゃ、改めて。護衛よろしくね」

「おう、任せとけ」


こうして、俺と勇者シリアの旅が始まったのだった。



ようやく、プロローグ的なものが終了した……


長かった (・ω・`)

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