第一話 夢の中なら、何しても大丈夫!!……のはず
退魔事務所の方の進め方を考えている間は、こちらをメインに更新していこうとおもいます。
―俺に何も求めるな!!
そう言ったのは、いつのことだったろうか?
両親に向かって言ったのは覚えている。
俺は昔、身の回りの事をすべて両親に決められていた。
もちろん、将来の事も。
拘束され、自由など一片もない。
そんな生活にずっと耐えてきた。
しかし、俺は不良共のケンカに巻き込まれ警察沙汰になってしまったことがあった。
その時、両親にブチ切れられたことは言わなくてもいいだろう。
―お前は私達を裏切ったのを理解してるのか!?
―あなたは私達の夢なのよ?
その時だった。
俺の今ままで溜めこんでいた物が、爆発した。
―ふざけんな……
―なんだ?はっきり言え。
―ふざけんなっつってんだよ!!俺はお前らのおもちゃじゃねんだよ!!
―な、なんだと?
―俺に、俺に何も求めるな!!
俺はそう叫ぶと、家から飛び出た。
そして、しばらくブラブラしていると、救急車のサイレンが聞こえてきた。
その音は、俺の家の方に向かって行っていた。
俺は嫌な予感がして、家に向かって走り出した。
そして、家に着いたとき、そこには救急車が。
―あの、なにか……あったんですか?
―強盗殺人ですよ、まったく物騒ですね
―殺人!?
俺は警官の制止も振り切り、家の中に駆けこんだ。
そこには、両親が荒れた部屋の中に倒れていた。
―オ レ ニ ハ リ カ イ デ キ ナ カ ッ タ
紅い、アカイ、あかい、なにもかもがあかくそまっていた。
あたまが、まわラ ナ イ
―アァァアアァァァアアァアァァァァアアァアァァァ!!!!!!!!!!!!
目が覚めた時、ひどく汗をかいていた。
「また、あん時の夢か……」
俺もかわんねぇな……
あの時以来、俺は度々こんな夢を見る。
「はぁ……」
あの時はいくら自分を縛ってきたとはいえ、肉親がいなくなってしまったのだ。
それはもう、狂うんじゃないかと思うほど泣き叫んだ。
あれから二年。
俺は高校二年になっていた。
いまは春休みのため、ゆっくりと寝られると思っていたのだが……
「もう十時か……」
もう一回寝よう。寝たりん。
俺は布団にもぐりこみ、目を閉じた。
二年前は布団に入る度、これは夢なんだ、起きれば両親がいる、そう思っていた。
でも、いつしか両親の死を無理矢理理解し始めた頃。
俺は目が覚めたら異世界にでも立ってればいいのに、なんて思い出した。
異世界に行けば、この虚無感を満たせるんじゃないか、そんなバカげたことを考えていたのだ。
「……寝よ」
俺は再び目を閉じ、暗闇に沈んで行った。
俺は夢を見ていた。
自分が風を切って、落下している。
何処から落ちたんだといわれると、分からない。
なぜなら、周囲には飛び降りれるようなものが全くないから。
考えられるのは、スカイダイビングをしている、というくらいか。
しかし、パラシュートは背負ってないし、ヘルメットもない。
身に着けているのは、自分の普段着のみ。
そうしている間にも、地面はどんどん近づいてきている。
俺は気休め程度に受け身をとろうと、体勢を変えようとした。
しかし、体は動かず、落ち続けるだけ。
焦りも恐怖も感じなかった。
ただ、あぁ死ぬんだなぁ、としか思わなかった。
まぁ、これで死んだら、あの嫌で嫌で仕方なかった両親のもとに行けるのだろう。
それもありかな……
親孝行でもしてみるのもいいかもしれない。
そして、地面に激突する瞬間、俺は目を覚ました。
俺は、不意に香った草の匂いに目をゆっくり開いた。
目に映りこんできたのは、深い緑色の木々だった。
「……夢の続きか?」
俺は立ち上がり、周囲を見渡した。
何処かの森なのだろうか。
「何処だよ、ここ」
夢だとわかっていても、何処にいるのか気になる。
俺は、自然と足を動かしだしていた。
side シリア
今日は、王様に会わなければいけない。
「はぁ……やだなー」
正直言って、王様は嫌いだ。
人を見下し、馬鹿にしてるよ、あれ。
私だって先日初めてあった時、やれ女だ、チビだ、貧乳だとか言って、馬鹿にされた。
女だっていうとチビ(これはギリギリだけど)なのは認めるけど、貧乳はカンケーねーだろ。
「……」
思い出しただけでムカつく。
今だって、一時間以上待たされている。
「はぁ……」
何度目の溜息か分からないが、ふと窓の外に目を向けた。
何の気なしに見たのだが、目に映りこんできたのは。
「なに、あれ……」
人らしきものが、城の近くにある森の中に落ちて行った。
「……見に行ってみよ」
王様にも呼ばれないし、いいだろ。つか、いいんだよ、あんな奴。
ドアが開けば、そっちから出るんだけど、今は兵士が立っているはず。
というわけで、私は窓から外に飛び出た。
着地と同時に前に転がり、勢いを殺した。
「ふぅ」
「ゆ、勇者様!?」
一息ついていると、見回り兵士と鉢合わせてしまった。
「げ!!」
私は一目散に森めがけて、ダッシュしだした。
「ちょ、待って下さぁぁぁぁ……」
兵士の声が遠のいて行った。
よし、引き離せた。
私は落下地点を予測し、そちらに走って行った。
しばらく走ると、落下地点(私の予測だが)に着いた。
しかし、そこにはクレーターもなく、落下物もなかった。
「あっれー、ここら辺だと思ったんだけどなぁ」
おっかしーなぁ……
とりあえず、周囲を歩き回ってみた。
が、なにもなかった。
「うーん」
半ば自分の勘に頼ろうか、などと思っていると、兵士達の声が聞こえてきた。
『勇者様ー!!どこに行かれたのですかー!?』
『勇者様ー!?』
どうやら二人で追いかけて来たらしい。
「まずっ……」
声がどんどん近づいてきている。
私は急いで、逆側に走ろうと、振り返った瞬間だった。
「ぶっ!?」
「のわ!?」
誰かとぶつかってしまったのだった。
side out
俺はその辺を歩き続けていると、気のせいか同じ場所に帰って来たような気がした。
「んー?」
よくわからんが、迷ったのか?
いや、まぁ知らん土地で迷ったも糞もないが。
「さて……」
どうするかなぁ、なんて思ってると、木の陰から誰かが出て来た。
そして、避ける暇もなく……
「ぶっ!?」
「のわ!?」
ぶつかってしまった。
「な、なんだ」
「ご、ごめん!!」
「ん?」
俺の目の先には、俺の胸辺りに頭がある少女(?)がいた。
俺の口から真っ先に出て来た言葉がなにか、おわかりだろうか?
「チビぃな」
「んな!?」
言った先から後悔している俺。
まずったなぁ……
「だ、だ、だ、誰が、ち、ち、ち、ち、ち、ち」
「ち?」
「チビですってぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ドゴッ!!
「ぐはっ!?」
俺は鳩尾を抉り取るような鉄拳をくらい、その場にうずくまってしまった。
夢なのに、痛い、だと……!?
「な、何すんだよ……!!」
「こっちのセリフよ!!いきなりチビぃなって何よ!!」
「いや、真実をだな、そのまま言っただけなんだが……」
「あぁん!?」
「すいませんっしたぁぁぁ!!」
俺は光速で土下座をした。
そんな時だった。
『勇者様ー!!』
「げっ!!」
「勇者?誰の事?」
「勇者様、こちらにおられましたか!!」
「はやく、城の方へお戻りください」
「いやよ、王様になんか会いたくない」
俺は目の前で繰り広げられている喧噪を、黙って眺めていた。
なのに……
「そこの貴様か!!勇者様をたぶらかしたのは!!」
「はぁ?」
「賊め、成敗してくれるわ!!」
男達は剣を抜き、構えた。
「ちょ、ま、待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!」
「よく言えるわね、そんなに速く」
「んなこと言ってねぇで、助けやがれ!!」
「いやよー」
く……さっきの事を根に持ってるのか!!
なんて陰気な奴なんだ!!
「何か言った?」
「いえ、何も!!」
「でぇぇぇぇぇい!!」
「うひゃぁぁぁぁ!!」
バカをやっている内に男Aが斬りかかってきた。
俺はそれを寸での所で躱した。
「あっぶねぇだろうが!!」
「だまれ、賊が!!」
ヒュン!!
「くっそが……!!」
「頑張ってねぇー」
「……借りるぜ」
「ちょ!?」
俺は少女の腰にぶら下がっていた剣を抜き去った。
―夢の中なんだ、好き放題させてもらおうじゃねぇか。
俺は、手に感じた重みに若干感動しつつ、構えた。
「いくぞ……!!」
俺は昔やらされていた剣道を自分流に改造していたことがあった。
暇つぶしに、だけど。
「うおっりゃ!!」
ガキィン!!
俺は迫って来ていた刃を弾き、全体重を乗せた一撃を相手の剣に当てる。
バキィン!!
よく響きわたる音と共に相手の剣が折れた。
それと同時に男Bは、踏み込むと同時に右から左へ薙いできた。
それを剣を逆手に持ち体の右側に添え、受け止めつつ男Bに詰め寄った。
そして、無防備な体に左で掌底を叩き込む。
「ぐはっ」
くの字に体を曲げ、剣を落とした男Bの顔面に、回し蹴りを叩き込んだ。
男Bは吹っ飛び気絶した。
「……うそ」
「ひどくあっけなかったな」
「な、何者だ、コイツ……!!」
「……」
何でだろう、すごい嫌な予感しかしなかった。
「あぁ、ごめんねー。言いそびれたけど、コイツ私の仲間だから」
「はぁ!?」
「な、なんと!!そうでしたか、それは御無礼を」
男Aは突然腰を折って、礼をして来た。
その間に、俺は少女に耳を貸せと言われ、小声で話し始めた。
「どういうことだよ、仲間って」
「いいから、話し合わせて。アンタの名前は?」
「は?なんで教えなきゃ……」
「仲間なのに名前知らなきゃ、不自然でしょ!!」
「だから、なんで仲間……」
「死にたくなかったら、話を合わせた方がいいわよ?」
「……おい、なんだその脅しは」
「だって、今さっきのままじゃ、賊ってことで殺されてたわよ?」
「……」
「わかった?なら、名前を……」
そこで、少女は突然俺から離れた。
何故と思っていると、正面の男Aが顔を上げている途中だった。
「して、そちらの方のお名前は……?」
「えーっと」
ゴスッ ←肘鉄を打たれた
「いって!?」
「??」
「あー、えー、ンン!!……俺は鬼灯蓮だ」
「……何度聞いても、変わった名前よね」
「うっせ」
「レン様ですね。それでは、城に向かいましょう」
「……そうだったぁー……」
「城?」
俺は訳も分からず、ついて行かされることになったのだった。