カランド(23)
これから俺たちがやるべきこと。
それは、マユ姉が見失ってしまった俺たちの家の鍵だ。これが、さっきおおむねと言った理由だ。
俺とマユ姉は常に家の鍵をそれぞれ1個ずつ常備している。見つからなくても俺は鍵を持っているから閉め出されたというわけではない。でも、やっぱり家の鍵をなくしてしまう、というのは少々困る。次に俺がなくしてしまったら事実上ゲームオーバーだからな。もしもの時のためにも、鍵は2つは必要だろう。
[繭子]:「だから、フェルには悪いけど、探すの手伝ってね」
[フェルシア]:「分かったわ」
[吹雪]:「すいません、完全に俺たちの問題なのに」
[フェルシア]:「いいのよ、私の仕事は終わってるし、家に帰っても1人だからね」
[吹雪]:「……何て返せばいいのか難しいですね」
[フェルシア]:「そこは、あれじゃない? フェルシア先生なら、そんな心配は必要ないですよ、みたいな鼓舞」
[吹雪]:「あ、じゃあ――大丈夫です、フェルシア先生なら、すぐに良い人が見つかりますよ」
[フェルシア]:「え? そうかしら?」
[吹雪]:「はい、全然問題ありません」
[フェルシア]:「ふふ、ありがとう」
言われたから言われたとおりに返したけど、本当にこれでよかったのかな?
[フェルシア]:「それで、マユは鍵にストラップとか付けてなかったの?」
[繭子]:「あ、えとね……こんな感じなのを付けてた」
[吹雪]:「アバウトにも程があるだろ」
そんな手でマルを作られただけじゃ形は見えてこない。
[フェルシア]:「もっと分かりやすく教えてちょうだい」
[繭子]:「うん。えっとね……小さなクマのストラップと、後暗いところだと光って見える石を付けてたよ」
[吹雪]:「夜行性のものだな」
[繭子]:「そう、暗いところに落としても大丈夫なようにって思って」
[フェルシア]:「だけど、無くしたのは昼間だったと」
[繭子]:「うっ……ワタシ鍵ちゃんたちに何か悪いことしたかな?」
[吹雪]:「管理が悪かったんだろ」
[繭子]:「……あまりにも的確且つ端的な切り返しに何も言い返せないよ」
[吹雪]:「当然だな。誰が悪いって言ったら、うっかり落としてしまったマユ姉が悪い」
[繭子]:「もっともです」
[フェルシア]:「落し物入れには入ってなかったの?」
[繭子]:「うん、確認したけどそれらしいものは届いてないって言ってた」
[吹雪]:「とすると、マユ姉の今日の日程を振り返っていくしかないな」
[繭子]:「うん、だね」
[フェルシア]:「じゃあ、最初のほうから振り返って行きましょう? まずは――単純に考えれば、吹雪くんたちの教室ね」
[吹雪]:「じゃあ、ちょっと行ってきて見てみますよ」
[繭子]:「よろしく~」
職員室前から教室まではすぐだ。