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ソプラノ  作者: BAGO
カランド
89/1013

カランド(15)

[吹雪]:「持つぞ、杠」

[聖奈美]:「ええ、お願いするわ」

俺は買い物袋を杠から受け取る。

[吹雪]:「後どれくらいなんだ?」

見案身「大体は終わったわ。後は文房具屋で小物を揃えるだけよ」

[吹雪]:「文房具屋までは近いのか?」

[聖奈美]:「ええ、そんなにかからないわ。そもそも、商店街自体そこまで広くもないでしょう」

[吹雪]:「それは、言わないであげたほうがいいんじゃないか?」

[聖奈美]:「そうね、冷たい言葉だったかもしれないわね」

[吹雪]:「……氷魔法の使い手だもんな」

[聖奈美]:「聞こえたわよ? 大久保」

[吹雪]:「じょ、冗談だよ。本気にしないでくれ」

[聖奈美]:「あなたさえよければ、氷漬けにしてあげてもいいのよ?」

[吹雪]:「そ、それは勘弁……今、ただでさえ寒い時期なんだからよ」

[聖奈美]:「じゃあ、そういう発言はしないことね。いい?」

[吹雪]:「お、おう……」

[聖奈美]:「さあ、行くわよ? さっさと済ませちゃいましょう」

[吹雪]:「そうだな」

……………………。

[聖奈美]:「さあ、全て買い終わったし、学校に戻りましょう。そろそろ日が暮れるわ」

[吹雪]:「杠、ちょっといいか?」

[聖奈美]:「え? 何よ?」

[吹雪]:「お前は急いで学校に戻らないとヤバイ感じか?」

[聖奈美]:「別にそういうわけじゃないけど、早いに越したことはないと思ったの。それに、あなたをずっと連れ回してるのもこっちとしては申し訳ないと思って」

[吹雪]:「そりゃあどうも。……早く学校に戻りたいか?」

[聖奈美]:「どうしたのよ? 急に? どうも帰りたくないような口振りね」

[吹雪]:「いや、別にそういうわけじゃない。その、さっきから歩きっぱなしだろう? あっちに行ったりこっちに行ったりしてるから少し疲れたんじゃないかって思ってよ」

[聖奈美]:「まあ、そう言われればそうかもしれないけど、そこまで疲労困憊ってわけではないわ」

[吹雪]:「そうか……じゃあいいか」

[聖奈美]:「どうかしたの?」

[吹雪]:「いや、もし疲れてるんであればちょっと休憩していかないかなって思ったんだ。あそこのトロピカルドリンクよく立ち寄って飲んだりするんだけどすっごい美味いんだ。だからよかったら飲まないかって思ったんだけど……どうだ?」

[聖奈美]:「トロピカルドリンク? 西洋の飲み物かしら?」

[吹雪]:「ちょっと違う。南国のフルーツをベースにした飲み物だ。多分お前の口にも合うと思うが、よかったら飲んでいかないか? 代金なら俺が出すからよ」

[聖奈美]:「どうしてあたしにそういう話を持ちかけるの?」

[吹雪]:「どうしてって……ただこのまま帰るのも何だか味気ないだろう? それに俺自身少し疲れてるってのもあるんだよ」

[聖奈美]:「……あなた、変わってるって言われたことない?」

[吹雪]:「な、何だよ? 急に」

[聖奈美]:「だって、この買い物に付き合わせてるのはあたしのほうなのよ? 本当ならあなたはここにいなくてもいいはずなの。こういうことを誘わなきゃいけないのはむしろあたしのほうなはず。それなのに、あなたはあたしより先にそんな提案……正直、かなり変わってると思うわ」

[吹雪]:「あんまり言われたことはないけどな」

[聖奈美]:「他の人はそうは言わないかもしれないけど、あたしからしたらあなたはかなり変わってるわ」

[吹雪]:「断言されても、どう返したらいいのか」

とりあえず言えることは――。

[吹雪]:「別に俺はイヤイヤこの買い物に付き合ってるってわけではないぞ? 帰ろうと思えば教室に寄らずに帰ることもできたしな。でも、祐喜から話を聞いて、ふうんって聞き流して帰る気にはなれなかったんだ。お前がどう思ってるのか、俺には分からないけど、俺はお前とは仲直りしたと思ってるから。助け合うのはおかしくないだろう?」

[聖奈美]:「――っ!? あ、あなた、よくそんなことさらっと」

[吹雪]:「え? 俺変なこと言ったか?」

[聖奈美]:「自覚なしでそんなことを……やっぱりあなた変わってるわ」

[ダルク]:「ふふ、聖奈美顔真っ赤よ?」

[聖奈美]:「う、うるさいわね。ほうっておいて」

[吹雪]:「どうかしたのか?」

[聖奈美]:「な、何でもないわよ。気にしないでちょうだい」

[吹雪]:「ああ。――で、結局飲んでいくか? トロピカルドリンク、飲んだことないだろう?」

[聖奈美]:「というか、名前も初めて聞いたわ」

[吹雪]:「やっぱり、お前でも知らないことはあるんだな?」

[聖奈美]:「当たり前でしょう? というか、全てを知ってる人間なんてこの世に存在しないわよ。それは神っていうの」

[吹雪]:「最もだ」

[聖奈美]:「いいわ、寄って行きましょう。でも、代金はあたしが払うわ、付き合わせたのはあたしなんだから」

[吹雪]:「え? マジで? 俺から誘ったのにそれは……」

[聖奈美]:「黙って奢られなさいよ。ここであなたに払わせたら、あたしの立場がおかしくなるでしょう」

[吹雪]:「おかしく?」

[聖奈美]:「……下僕みたいじゃない。荷物持たせて、ジュースまで奢らせて」

[吹雪]:「誰も思わないと思うけどな」

今のところ顔見知りとかとは会ってない。

[聖奈美]:「とにかく、ここは譲れないわ。あたしが払う、あなたは素直に払われてなさい、いいわね?」

[吹雪]:「じゃ、じゃあお願いします」

[聖奈美]:「お、美味しいんでしょうね?」

[吹雪]:「ひょっとして、怖いか?」

[聖奈美]:「そ、そんなわけないでしょう? ただ、初めてだから……」

[吹雪]:「心配ないって。イメージとしては紙パックのジュースがより爽やかになった感じ。喉越しもいいし、飲みやすいから」

[聖奈美]:「そう。その言葉、信じていいわね?」

[吹雪]:「不味かったら俺に文句言ってくれてかまわんよ」

[聖奈美]:「じゃ、じゃあ行きましょう」

さっきより何だか態度が少しおかしい気がするんだが……気のせいか?

……………………。


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