エネルジコ(9)
……………………。
…………。
……。
[吹雪]:「はあ……はあ……ぜー、ぜー」
[セフィル]:「吹雪、大丈夫か?」
[吹雪]:「うー、ちょっと、ヤバイかもしれません」
かれこれ30分程魔法を唱え続けただろうか、正直立ってるのもキツいくらいになってしまった。気にしないで撃てるからって聞いて調子に乗りすぎただろうか?
出し切ってはいるから確実に練習にはなってると思うんだけど……。
[セフィル]:「どうする? もうやめにするか?」
[吹雪]:「そう、ですね……」
…………。
よし、じゃあ――。
[吹雪]:「最後に一発だけ撃っていいですか? それで終わりにします」
[セフィル]:「そうか、分かった」
最後だ、バリアを壊すくらいの気持ちで撃ち込むとしよう。こんだけやってビクともしないから無理だとは思うが、思わないより思ったほうがいいに決まってる。
よし、行こう。精神を集中させ、魔法詠唱の準備に入る。
――そういえば、あのバリアは風、氷、雷、無の属性が混ざり合ったバリアなんだよな。あの防壁に相殺されることのない魔法を撃ち込むと、どうなるんだろう? 今までは何にも意識することなく、自分の持ち技を力の限り撃ち込んでいたけども……。
最後だ、試しにやってみよう。
[吹雪]:「――エル・エルファンディウス、炎の精霊よ、我に力を、――クロスフレイム!」
迸った炎は十字の形でバリアにぶち当たった。
……うん、さっきよりは少し吸収されるのが遅い気がしたが、やっぱり4重にされて作られたバリアはそんな簡単には割れないよな。
[吹雪]:「はあ……終わった……」
その場に俺は体を投げ出した。
[カホラ]:「お疲れ様、吹雪」
バリアを作ってくれた女子が俺の方にやってきた。
[繭子]:「ふーちゃん、冬なのに汗びっしょりだよー?」
[吹雪]:「そりゃあ、全力でやれば汗くらいでるわ……」
[舞羽]:「はい、これで汗拭いて」
舞羽はポケットからハンカチを出し、俺に貸してくれた。
[舞羽]:「悪い、サンキュー」
顔を伝ってくる汗を、ハンカチが吸収してくれる。
[吹雪]:「はあ、全部出し切ったぜ」
[セフィル]:「そのようだな、精も根も尽きた顔をしている」
[吹雪]:「残念ながら、もう余力はないです」
[セフィル]:「ふむ……聖奈美、今なら吹雪にリベンジするチャンスじゃないか?」
[聖奈美]:「えっ!?」
[セフィル]:「今吹雪は魔法を撃てる状況じゃない。余力がたっぷり残っている今ならコテンパンにできるんじゃないか?」
[聖奈美]:「コテンパン、コロシアムのリベンジ……」
[吹雪]:「待て待て待て待て、何でそこで悩むんだお前は!?」
[聖奈美]:「だ、だって……」
[吹雪]:「そんなので俺をボコボコにして嬉しいのかお前は。罪悪感が残るんじゃないのか?」
[聖奈美]:「…………」
[吹雪]:「え? 残らないの? ひょっとして」
[聖奈美]:「勝てば官軍って言葉があるくらいだからね」
……マジで?
[吹雪]:「いや、今回は勘弁していただけないか? 今お前に本気でこられたら、俺は間違いなく死んじまうって」
[聖奈美]:「……冗談に決まってるでしょう? あたしを誰だと思ってるの? ちょっと乗ってみただけよ」
[吹雪]:「ほ、本当か?」
[聖奈美]:「当たり前じゃない? そんなので勝ったところで嬉しくないもの。ストレスは発散できるかもしれないけど」
[吹雪]:「……お前の中の俺って、そんなにムカつく奴なのか?」
[聖奈美]:「さあ、どうでしょうね?」
[吹雪]:「……学園長も、滅多なこと言わないでくださいよ。ドキっとするじゃないですか?」
[セフィル]:「ギリギリの状態で奮闘する吹雪の姿は見物だと思うんだがな……」
[吹雪]:「ただサンドバックにされておしまいですよ……」
[セフィル]:「残念だ……」
どうしてそこで悲しい顔をするのだろうか?
まだまだ長引きそうですが、負けずにアップしていきたいです!!