エネルジコ(2)
[繭子]:「えっほ、えっほ」
[舞羽]:「はあ、はあ……」
[カホラ]:「大丈夫? 舞羽」
[舞羽]:「はい、大丈夫です。あんまり運動してなかったから、やっぱり体がナマってますね」
[聖奈美]:「無理しなくてもいいんじゃなくて? 必ず走りきれって決まりはないわけだし」
[舞羽]:「あ、大丈夫。みんなと走ってるの、楽しいから」
[カホラ]:「そうね、頑張りましょ」
[セフィル]:「よーし、いいぞ。ここから少しペースアップだ!」
[吹雪]:「は、はい。はあ、はあ……」
ダダダダダダダダダダッ。
[繭子]:「は、速いよふーちゃん」
[舞羽]:「すごいなー、ペースが違うよ」
[聖奈美]:「まあ、男子だから当然ね」
[カホラ]:「それにしたって速いわね。吹雪、すっかりランナーみたいになっちゃったわね。走り方が陸上選手さながらだったわ」
[聖奈美]:「今の様子だけみたら、魔法の拾得の練習をしてるとは誰も思わないわね、あれはもはや駅伝よ」
[カホラ]:「しかもアンカーね、前を走る選手を抜かさんとするような勢い」
[繭子]:「わー、もうあんなに差がついてるよー」
[カホラ]:「このペースだと、もう1回追い抜かれるわね」
[繭子]:「ふーちゃんは何周走らなきゃいけないのー?」
[舞羽]:「どうなんでしょうね、私たちがスタートする前にはもうスタートしてましたし」
[カホラ]:「今私たちは3周目だから後2周だけど……フェルシア先生に聞いてみましょうか」
…………。
[繭子]:「フェルー」
[フェルシア]:「どうしたの? 繭子。ラスト1周、ファイトよ」
[繭子]:「あ、その前に一つ教えてほしいことがあるの」
[フェルシア]:「どうしたの?」
[繭子]:「えっとね――」
[カホラ]:「あ、繭子先生、後ろ!」
[繭子]:「へ?」
[吹雪]:「ぬおおおおおおっ!」
[繭子]:「ひゃああっ!?」
[セフィル]:「よーし、そのペースだ。すまんな繭子、驚かせてしまって」
ダダダダダダダダダダッ。
[繭子]:「何か、さっきよりペースが上がってない? ふーちゃん」
[フェルシア]:「ペース走だもの。上がっていくのは当然じゃない?」
[繭子]:「そ、そっか……」
[フェルシア]:「にしてもいい走りっぷりだわ、吹雪くん」
[カホラ]:「まあ、後ろからお母さんが発破かけてるし、ペースが上がるのは当たり前かもしれないけど」
[フェルシア]:「ふふ、で? 何の話だったっけ?」
[繭子]:「あ、そうだ。ふーちゃんってさ、グランド何周しなきゃいけないの?」
[フェルシア]:「普段は20周とか走ってるわよ」
[繭子]:「20周!? ホントに?」
[フェルシア]:「ええ、初めての時は死にかけてたけど、今は大分慣れてきたみたいでいいペースで走れてるみたいよ」
[舞羽]:「陸上部ってわけじゃないのにね……」
[カホラ]:「さすがは男の子かしらね」
[聖奈美]:「今、大久保は何周目なんですか?」
[聖奈美]:「えっと、今は……9周めかしら? 後11周、後ちょっとで後半戦ね」
[繭子]:「まだ半分もあるんだー」
[フェルシア]:「まだまだペースも上がっていくから、ここからが正念場ね」
[カホラ]:「……後1周走り終わったら、吹雪のこと応援してあげましょう」
[舞羽]:「そうですね」
[繭子]:「よーし、じゃあラスト1周出発しましょう」
[舞羽]:「ふふ、頑張って」