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ソプラノ  作者: BAGO
ラルゴ
56/1013

ラルゴ(3)

・第二音楽室


 [場所:第二音楽室]


[聖奈美]:「――ふう」

弾き終わった杠が鍵盤から指を離した。

[聖奈美]:「どうだったかしら? 二人とも」

[吹雪]:「お前、すでに通して弾けるんだな。あんな難しいのを」

[聖奈美]:「選ばれたんだから、全力を尽くすのは当たり前のことよ」

[吹雪]:「ひょっとして、家でも練習してるのか?」

[聖奈美]:「ええ、もちろん」

当たり前のように返答してきたな。

[聖奈美]:「この行事、失敗は許されないんだから。成功するためには日々の鍛錬が重要、あたしは当然のことをしてると思うけど」

[吹雪]:「すごいな、お前……」

[聖奈美]:「そんなことは別にいいのよ。それで、どうだったの? 今のを聞いての感想は」

[吹雪]:「あ、ああ」

[聖奈美]:「前にも言ったけど、遠慮は無用だからね。控えて発言をされてもあたしのためにはならないから。思ったことははっきりと言いなさい」

[吹雪]:「わ、分かった……」

はっきりと、ね。そうは言われても、俺はそこまでピアノのことは分からないんだが。

[聖奈美]:「じゃあ、ダルクから。どうだったかしら?」

[ダルク]:「そうだね。前よりも格段に上手になってると思うよ。でも、まだリズムが曖昧な感じがするかも。早くなったり遅くなったりすることがあったね。それと、やっぱり強弱が大事かな。もっとはっきりつけないと、何だか全てが同じような音程に聞こえてしまうわ」

[聖奈美]:「リズム、強弱ね。分かった、感謝するわ」

ダルクから受けたアドバイスを、杠は用紙にメモしていく。

[聖奈美]:「大久保はどうだった?」

[吹雪]:「え、ああ」

どうする、何て言ったらいいだろう。テキトーなことは言えないしな。

[吹雪]:「うーん」

[聖奈美]:「何? ないの? ないわけはないでしょう?」

[吹雪]:「う、うん」

[聖奈美]:「今さっき言ったばかりでしょう? 遠慮は無用だって。何でもいいから言ってみなさい」

何でもいい、か。なら、

[吹雪]:「すっごく上手かったと思う。その調子で頑張ってくれ」

[聖奈美]:「な――!? ちょ、ちょっと大久保、あたしがそういうことを聞きたかったんじゃないわよ。お世辞はいらないわ」

[吹雪]:「お世辞なんかじゃねぇよ。俺は本当に上手いと思ったからそれを正直に言ったんだよ。遠慮はもちろんしてない」

[聖奈美]:「む、むう……」

[吹雪]:「これが素直な俺の感想だ。こういう意見は受け付けてはくれないのか?」

[聖奈美]:「ん……。し、仕方ないわね、もう。う、受け取っておくわよ。でも、今回のような発言は制限しなさいよ。じゃないと、逃げの一手と見なすから」

[吹雪]:「分かった」

[聖奈美]:「…………」

[ダルク]:「聖奈美、顔、すごく赤いよ?」

[吹雪]:「そ、そんなことないわよ。気のせいよ、気のせい」

[ダルク]:「そっか、……ふふ」

[聖奈美]:「な、何笑ってるのよダルク」

[ダルク]:「何でもないよ、何でも」

[聖奈美]:「きゅ、休憩入れるわ。大久保、ジュース買ってきなさい」

[吹雪]:「ん? 俺?」

[聖奈美]:「そうよ、あなたハーモニクサーでしょう? ピアニストのアシストが仕事なんだからそれくらいしなさい」

理論が何だか捻れてる気がするが、まあいいか。

[吹雪]:「何がいいんだ?」

[聖奈美]:「何でもいいわ、あなたがセレクトしなさい」

[吹雪]:「文句付けるなよ? 何を買ってきても」

[聖奈美]:「分かってるわよ、ほら、早く」

[吹雪]:「わ、分かったって」

[ダルク]:「あ、吹雪、私も行くよ」

ガチャ。

[聖奈美]:「…………」


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