ラルゴ(1)
12月10日(金曜日)
・第一音楽室
・第二音楽室
・第三音楽室
・第四音楽室
・第一音楽室
[場所:第一音楽室]
[吹雪]:「さすがはピアノ経験者、もうすでに全てを通して弾けるようになっているとは」
[舞羽]:「あ、ありがとうございます」
[吹雪]:「何故に敬語だ?」
[舞羽]:「えへへ、先生みたいだからつい」
[吹雪]:「でも、本当にすごいと思うぞ」
[舞羽]:「何度もありがとう。でも、まだまだ出来は不十分だよ。ペースが遅いし、強弱も上手く付けれてないし」
[吹雪]:「でも、通して弾けるっていうのはかなりの収穫だろ? まだ時間もある。本番までは絶対に間に合うペースなんじゃないか」
[舞羽]:「そうかな?」
[吹雪]:「ああ、行けるさ」
ぐっと親指を立てると、舞羽はにこりと笑った。
[舞羽]:「うん、頑張るよ」
[吹雪]:「どうするんだ? もう一回弾くのか?」
[舞羽]:「そうだね、もう一回弾いてみるね。聞いててもらえる?」
[吹雪]:「おう、もちろん」
舞羽は鍵盤に指を走らせ始めた。
……………………。
[舞羽]:「ふう」
俺は一観客として拍手を送る。
[舞羽]:「ありがとう」
[吹雪]:「どんどん形になってきてるんじゃないか?」
[舞羽]:「うーん、まだまだだと思うなー」
[吹雪]:「随分自分に厳しいじゃないか」
[舞羽]:「学園代表だから、個人的なものじゃないって考えるとまだまだって思えるんだ」
[吹雪]:「上昇余地はある、と」
[舞羽]:「そんなところかな」
[吹雪]:「なるほど、いい心がけだな。俺も見習わないとな」
[舞羽]:「えへへ」
[吹雪]:「でも、一つアドバイスすると」
[舞羽]:「?」
[吹雪]:「頑張るのと無理するのは違うから、適度に休みを入れながらやるんだぞ? 体に負荷をかけるのはよくない」
[舞羽]:「うん、分かった」
[吹雪]:「どうする? 始めてから結構経つよな」
[舞羽]:「そうだね、一回休憩しようかな」
[吹雪]:「何か飲むか? 買ってきてやるぞ」
[舞羽]:「え? ホントに?」
[吹雪]:「ああ、俺は嘘はつかん」
[舞羽]:「じゃあ、吹雪くんセレクトで」
[吹雪]:「お、いいのか? 後悔しないな?」
[舞羽]:「え? そんなにランダム性高いの?」
[吹雪]:「ふふ、どうだろうな」
[舞羽]:「い、いいよ。吹雪くんに任せます」
[吹雪]:「よし、じゃあ待ってろ。買ってくる」