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ソプラノ  作者: BAGO
エスプレッシーヴォ
40/1013

エスプレッシーヴォ(2)

[吹雪]:「ふう、うまかった」

今日もバーバロの料理は美味しかった。どうしよう、直帰してもいいんだが、別に混んでる様子もなさそうだし少し休んで行っても罰は当たらなそうだけど。……家に帰ってもダラダラするだけだし、どうせならここで休ませてもらってもいいか。暖かいしな、ここ。  そうと決まれば――

[吹雪]:「はあー」

[舞羽]:「お客様、食べ終わったお皿をお下げしてもよろしいですか?」

[吹雪]:「お、どうもー」

舞羽が腰を低くしてトレイに皿を乗せていく。

[吹雪]:「吹雪くん、まだバーバロにいる?」

[舞羽]:「ああ、ちょっと休ませてもらうよ」

[吹雪]:「そっか、ゆっくりしていって」

[舞羽]:「ああ。あ、追加でコーヒーもらっていいか?」

[吹雪]:「うん、了解。すぐ持ってくるよ」

舞羽は厨房に戻っていく。そしてすぐに、

[舞羽]:「はい、お待たせしました」

[吹雪]:「お、サンキュー」

軽く冷まして一口飲む。

[吹雪]:「うん、うまい」

[舞羽]:「よかった」

[吹雪]:「舞羽が煎れたのか?」

[舞羽]:「うん、手が空いてたからね」

[吹雪]:「そうか、何か心も温まった気がするよ」

[舞羽]:「あはは、大げさだよ」

[吹雪]:「おいしく飲ませてもらうよ」

[舞羽]:「ありがとう」

[吹雪]:「今日は何時までなんだ?」

[舞羽]:「えーっと、後30分くらいかな?」

[吹雪]:「あれ? 今日は早いんだな」

[舞羽]:「うん、店長が上がっていいって。学園のほう忙しいんだろうって」

[吹雪]:「知ってるのか店長は、舞羽がピアニストに選出されたこと」

[舞羽]:「うん、愛海が教えたみたい」

[吹雪]:「まあ、何となくそんな気がした」

言い触らすのが仕事と勘違いしてるよな、あいつは。

[舞羽]:「行事が終わるまでは、いつもより早めに上がっていいって言ってくれたの」

[吹雪]:「へえ、よかったじゃないか」

[舞羽]:「うん。……吹雪くん、できれば」

[吹雪]:「ああ、終わるまで待ってるよ」

[舞羽]:「えへへ、ありがとう」

舞羽は嬉しそうに笑っていた。

………………………。

…………。

……。

[舞羽]:「お疲れさまでしたー」

学園の制服に着替えた舞羽が裏口のほうから出てきた。

[舞羽]:「ごめん、お待たせ」

[吹雪]:「おう、お疲れ」

[舞羽]:「うー、やっぱりちょっと寒いね」

吐く息は白く、空に立ち上っていく。まだ5時くらいなんだが、既に太陽は沈んで暗くなっていた。

[吹雪]:「もうすっかり冬だな」

[舞羽]:「そうだね、雪はまだ降ってないみたいだけど」

[吹雪]:「そのうち降るだろうな、この寒さだ。いつ降ってもおかしくない」

[舞羽]:「嬉しさ半分、悲しさ半分、かな?」

[吹雪]:「「その理由は?」

舞羽「雪ってキラキラしてて綺麗でしょう? だからちょっと嬉しい。でも、寒いのはそこまで得意じゃないから、雪が降るってことはそれだけ寒くなったって証拠。それがちょっと悲しいの」

[吹雪]:「確かに、寒いのはちょっとイヤだな。朝起きるのが辛くなる」

[舞羽]:「そうだよね、布団から顔も出せなくなっちゃう」

[吹雪]:「うん、大いに分かる。それさえなければ、冬も悪くはないって思うんだけどな」

[舞羽]:「だね。人生だね」

[吹雪]:「何か急に話が深くなったな」

[舞羽]:「吹雪くんの受け売りだよ」

[吹雪]:「何? 俺そんなこと言ったかな?」

[舞羽]:「うん、子供の頃だけどね。吹雪くん、何かとそれもまた人生って言ってまとめてた。当時の私はそのことがよく分からなかったんだけど、今思うと、とっても深い言葉だよね」

[吹雪]:「「とんだませガキだな、俺」

舞羽「私たち子供の頃だし、無性に使いたかったんじゃない?」

[吹雪]:「その可能性はあるかもしれないけど、それも人生って、全てを悟ってるみたいで子供らしくないな」

[舞羽]:「確かに大人っぽいね」

[吹雪]:「いや、変なガキじゃないか」

[舞羽]:「あはは、私はそうは思わなかったよ」

[吹雪]:「ってことは、舞羽もなかなかの変な子供だってことだな」

[舞羽]:「えー? 同類なの?」

[吹雪]:「もちろんだ、変だった俺に着いてこれたってことは、それだけ舞羽も変だったってことになる」

[舞羽]:「うーん、納得いかないよ、それ」

[吹雪]:「まあ、誰だってそんなもんだ。人間何かしら変な一面を持ってる」

[舞羽]:「じゃあ、変な人に着いていけることが、私の変な一面なの?」

[吹雪]:「そうなるな。今はどうか分からないけど、ひょっとすると今もそのままって可能性もあるし、というかその可能性結構あるんじゃないか?」

[舞羽]:「そ、そうかな?」

[吹雪]:「俺たちの周りの人間を見てみろ。翔に日野にマユ姉、ちょっとおかしい奴らばかりじゃないか」

[舞羽]:「ま、繭さんもその中に入れちゃうんだ」

[吹雪]:「ああ、もちろんだ」

[舞羽]:「そ、そんなに自信を持って……」

[吹雪]:「それよりもだ、どうよ、改まって考えてみて」

[舞羽]:「――うん、そうだね。確かに、ちょっと変わってる人が多いかも」

[吹雪]:「舞羽も、変な人間だってわけだ」

[舞羽]:「うー、何か悲しいなー、それ」

[吹雪]:「心配するな、俺もそのうちの一人だ」

[舞羽]:「嬉しいような嬉しくないような」

[吹雪]:「みんな仲間だ、心配ないさ」

[舞羽]:「う、うん」

[吹雪]:「よし、うまく話がまとまったところで、ちょっと商店街に行こうぜ。夕飯の買い出しに行かないと」

[舞羽]:「今日はどうする?」

[吹雪]:「ああ、大丈夫。今日は俺が作るよ、バイトで疲れてるだろうし。ただ、品定めだけお願いしたい」

[舞羽]:「うん、分かった。良質なもの、頑張って選ぶよ」

[吹雪]:「頼りにしてるぜ。よし、レッツゴーだ」

[舞羽]:「オー!」

俺たちは商店街へと向かった。



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