エスプレッシーヴォ(1)
12月7日(火曜日)
・バーバロ
・図書室
・生徒会室
・自宅
・バーバロ
[場所:喫茶店・バーバロ]
カランコロン。
[舞羽]:「いらっしゃいませー。あ、吹雪くん」
[吹雪]:「おう、頑張ってるか?」
[舞羽]:「うん、このとおり」
[吹雪]:「今日も盛況みたいだな」
[舞羽]:「うん、おかげさまで。あ、お席案内します。こちらにどうぞ」
[吹雪]:「ああ」
俺は舞羽の後ろをついていく。
[舞羽]:「待ってて、お水持ってくるから」
舞羽は盆を持ってトコトコ走っていく。行事の合間を縫ってこうしてバイトをしてるわけだから、本当にあいつは頑張りやなんだとつくづく思う。
[吹雪]:「片手間になってもおかしくはないんだがな」
[舞羽]:「え? 何が?」
[吹雪]:「あ、いや、何でもないよ」
[舞羽]:「そう? はい、どうぞ。ご注文はお決まりですか?」
[吹雪]:「あ、まだ。決まったら呼ぶよ」
[舞羽]:「うん、分かった。あ、向こうで呼んでる。ちょっと行ってくるね」
[吹雪]:「おう、頑張ってこい」
[舞羽]:「はーい」
朗らかに返事をして舞羽はお客のほうへと向かっていった。
[吹雪]:「さて、何にしようか――」
[愛海]:「これなんかどうですかー? バーバロ特製大盛りパフェ」
[吹雪]:「夕飯前にこんなたくさんのデザート食べれないっての」
[愛海]:「いけるわよー大久保くんなら。気合いで」
[吹雪]:「気合いって、一服しに来て気合い使ってたら意味ないだろう」
[愛海]:「男なら、チャレンジすることが大事な時もあるのよ? 大久保くん」
[吹雪]:「それが今だって言うのか?」
[愛海]:「ええ、男はいつだってチャレンジよ」
[吹雪]:「いや、却下だ……つうかいいのかよ? 俺なんかに構ってて、仕事中だろ?」
[愛海]:「ああ、問題も心配もないわよ。今は舞羽一人で手が回るから」
二人でやればもっと効率が上がると思うんだが、俺の気のせいなのか?
[愛海]:「私は休憩がてらここにやってきたってわけ」
[吹雪]:「別に俺に構わなくていいぞ。休憩室で休憩してこいよ」
[愛海]:「いやよそんなの。せっかく大久保くんが来てるのに大久保くんに絡まないなんて、そんなもったいないことできないわよ」
[吹雪]:「別にもったいなくないだろ」
[愛海]:「いえ、もったいないわ。オークションで廃盤の品を逃すくらいもったいないことよ」
[吹雪]:「俺は廃盤ってことかよ」
[愛海]:「そゆことじゃなくて、暇だから来たの、ただそれだけ」
[吹雪]:「お前は客をからかって暇を潰すのか?」
[愛海]:「そんなことはないわよ。大久保くんだからに決まってるでしょー?」
[吹雪]:「今メニュー決めるから、ちょっかい出すなよ」
[愛海]:「はーい」
[吹雪]:「…………」
[愛海]:「じーーーー」
[吹雪]:「…………」
[愛海]:「じーーーー」
[吹雪]:「おい」
[愛海]:「はい、何ですか? お客様」
[吹雪]:「ちょっかい出すなって言っただろ」
[愛海]:「出してないじゃん。何にも」
[吹雪]:「そんなにじっと見てくんな、決めずらいだろ」
[愛海]:「えー? 心外だわ、それは」
[吹雪]:「じゃあ何だっていうんだよ」
[愛海]:「慧眼な眼差しを一心に送ってただけよ」
[吹雪]:「同じじゃないか!」
[愛海]:「全然違うわよー見るだけと慧眼な眼差しを送るは意味が全く違うもの」
[吹雪]:「――おーい、舞羽ー、注文お願いします」
[愛海]:「従業員の私がいるのに舞羽に頼んだー」
[吹雪]:「当然だ、日野になんて構ってたらずっと注文ができない」
[愛海]:「はーい、ただいま。……あ、愛海? 吹雪くんのところで何してるの?」
[吹雪]:「ああ、聞いてくれよ舞羽。日野の奴、さっきから俺のことをからかって――」
[愛海]:「あー、そうだ。厨房が忙しそうね、私、あっちを手伝って来よーっと」
[舞羽]:「あ、愛海――また、吹雪くんにちょっかいを」
[吹雪]:「危うく大盛りパフェを頼まされるところだった」
[舞羽]:「ごめんね、いつもいつも」
[吹雪]:「舞羽が来てくれたからいいとしよう。注文、いいか?」
[舞羽]:「うん、もちろん」
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次回はこの選択肢ルートの後半です。