表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソプラノ  作者: BAGO
カンタービレ
34/1013

カンタービレ(10)

・第三音楽室


 [場所:第三音楽室]


よし、入るか。俺はドアをノックした。コンコン。

[繭子]:「はーい、どうぞー」

この声は、うん、絶対にそうだな。

[吹雪]:「失礼します」

俺はドアを開けて入室する。

[繭子]:「あ、ふーちゃん、おーい」

[吹雪]:「そんな近いところで手を振らなくても、分かってるよ」

ちっこいのがピアノの前に座っていた。どうやらマユ姉の練習場所だったようだ。

[繭子]:「どうしたの? 職員室と勘違いー?」

[吹雪]:「んなわけないだろ? ハーモニクサーの使命として来たんだよ。学園長から説明聞いただろ? 昨日」

[繭子]:「あ、そっか。じゃあ、ふーちゃんはワタシを選んでくれたんだねー?」

[吹雪]:「まあ、選んだっていうか」

テキトーに選んだっていうか。

[繭子]:「さすがふーちゃん、姉を尊重する心をちゃーんと持ち合わせてるんだね」

[吹雪]:「尊重?」

[繭子]:「うん、尊重」

[吹雪]:「ま、まあいい。とにかく、練習してたんだろ? マユ姉は」

[繭子]:「うん、そうだよ。偉い? エラい?」

[吹雪]:「いや、使命なんだから当然だろ」

[繭子]:「うー、エラいって言ってほしかった~」

[吹雪]:「ちゃんと使命を全うできたら言ってやるよ」

俺も人のことは言えないんだろうけど。

[吹雪]:「どこまで進んだんだ?」

[繭子]:「実を言うと、まだ弾いてないんだ。一応、どれがどの音の鍵盤かってことは分かってるんだけど、記号とかまでは完璧に覚えてなかったから」

[吹雪]:「なるほど」

そうだよな、マユ姉は音楽の先生とか言うわけでもない。ピアノは弾けなくはないだろうが、舞羽ほどではないだろうしな。

[繭子]:「道は険しそうだよー」

[吹雪]:「かもしれないけど、頑張るしかないだろ。選ばれたんだしな」

[繭子]:「そうだねー、んー、フェルにでも手伝ってもらおうかなー?」

[吹雪]:「フェルシア先生、ピアノできるのか?」

[繭子]:「ううん、ワタシとどっこいどっこいだよ」

[吹雪]:「じゃあ、ダメじゃないか」

[繭子]:「いるだけでお手伝いになるんだよー」

なるほど、お守りってわけだな、だがーー、

[吹雪]:「フェルシア先生の迷惑になるから却下だ」

[繭子]:「う、やっぱり……」

[吹雪]:「やっぱりって、分かってたのかよ」

[繭子]:「うん、薄々ー」

[吹雪]:「じゃあ口に出さなくてもいいだろ」

[繭子]:「ひょっとしたら、って思ってー」

[吹雪]:「ねぇよ」

[繭子]:「ぶー」

[吹雪]:「俺が手伝うから、文句言うな」

[繭子]:「え? ホントに?」

[吹雪]:「だから言っただろ。ハーモニクサーの使命で来たって」

[繭子]:「あ、そっかー。わーいやったー」

[吹雪]:「話聞いてろよな、ホント」

[繭子]:「うん、次はききまーす」

ホントに分かってんだろうか、多分分かってないんだろうな。

[吹雪]:「時間がもったいない。俺は何を手伝えばいいんだ?」

[繭子]:「うーん、じゃあ、そうだなー。……今は特にないから、ふーちゃんはワタシを見守っててくれない? まずは楽譜を読めるようにしないと始まらないからね。今日で一通りに目を通しておきたいから。いい?」

[吹雪]:「ああ、構わないよ」

そもそも俺に口出しできる権限はない。

[繭子]:「じゃあ、そんな感じでよろしくしていい?」

[吹雪]:「分かった」

俺はマユ姉の要望どおり、マユ姉の様子を見守っていた。久々に、マユ姉が真剣に物事に取り組んでいる姿を見た気がした


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ