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ソプラノ  作者: BAGO
カンタービレ
33/1013

カンタービレ(9)


・第二音楽室


 [場所:第二音楽室]


さて、第二音楽室に来てみたけど、誰がいるんだろう。

[聖奈美]:「ダルク、どう?」

[ダルク]:「うーん、もう少しそこは弱く弾いたほうがいいんじゃないかな? じゃないと力任せに弾いてるように見えるかも」

[聖奈美]:「そう、分かったわ。気をつけてみる」

中から声が聞こえる。ダルクって呼んでるあたり、中にいるのは杠だろうか? 何か言われるかもしれないが、とりあえず入ってみよう。

[吹雪]:「失礼します」

ノックをして俺は入室した。当たり前だが、一人と一匹は俺のほうに視線を向ける。

[ダルク]:「あ、吹雪」

[聖奈美]:「…………」

[吹雪]:「おう、ダルク」

やっぱり、杠からあいさつはないか。まあ、薄々分かってたけどな……。

[聖奈美]:「ハーモニクサーの仕事で来たのかしら?」

[吹雪]:「ああ、そうだ」

[聖奈美]:「そう、あたしを指名した理由は?」

[吹雪]:「いや、教室に誰がいるまでは把握してなかったから、特に理由はないんだ」

[聖奈美]:「ふぅん、そう」

[吹雪]:「邪魔になるなら、違う所に行ってもいいぞ? 別に」

[聖奈美]:「……まあいいわ。折角だし、練習でも見てもらおうかしら。こっちに来て」

相変わらず上からなのは変わらないか。まあこれがあるから杠だってことを認識できるわけでもあるが。

[聖奈美]:「ほら、早く」

[吹雪]:「あ、ああ」

俺は言われるままに杠の元に向かう。

[聖奈美]:「まずは、これ」

[吹雪]:「ん?」

どうやら楽譜のようだ。

[吹雪]:「いいのか? 俺に渡して」

[聖奈美]:「問題ないわ、ん」

杠は俺の前にもう一つ楽譜を見せる。

[聖奈美]:「こんなこともあろうかと、何部か余分に印刷しておいたのよ」

[ダルク]:「私も持ってるよ」

ダルクも小さい体に楽譜を抱えている。

[聖奈美]:「何事にも準備は怠っちゃだめなのよ」

[吹雪]:「なるほど」

[聖奈美]:「じゃあ、早速弾くから。ここはこうしたほうがいいとかあれば、遠慮なく言ってちょうだい」

[吹雪]:「ああ、分かった」

[聖奈美]:「行くわよ」

杠は一度深呼吸して、指を鍵盤に走らせた。

[聖奈美]:「…………」

何て言うか、普通に上手い。まだ最初だからか、少し突っかかりそうなところはあるけど、大きく停止することはなく、流れるように曲が紡がれていく。

……………………。

…………。

……。

[聖奈美]:「――ふう」

数分して、一旦杠の演奏は終わった。

[聖奈美]:「どうだったかしら?」

[吹雪]:「その前に一つ、いいか?」

[聖奈美]:「え? 何よ?」

[吹雪]:「お前、ピアノの経験者なのか?」

[聖奈美]:「ええ、そうよ。それがどうかしたの?」

[吹雪]:「いや、どうしたっていうか……」

[聖奈美]:「あたしがピアノ経験者だと、何か問題でもあるの?」

[吹雪]:「いや、そういうことを言ってるんじゃなくて」

[聖奈美]:「じゃあ、何?」

[吹雪]:「いや、特にはないんだけど」

[聖奈美]:「興味本位ってわけ?」

[吹雪]:「まあ、うん」

そうなるの、か?

[聖奈美]:「ま、別にいいけど。そうよ、あたしはピアノ習ってたわ。小学校の頃からかしら。歴としては6年くらいってところかしら」

[吹雪]:「そうなのか」

[聖奈美]:「これで満足?」

[吹雪]:「え? あ、ああ」

[聖奈美]:「じゃあ、話を戻すけど、どうだった? 聞いた感想は?」

[吹雪]:「ああ、普通に上手だったと思うが」

[聖奈美]:「……ちょっと大久保、もう少し真面目にしなさいよ」

[吹雪]:「え?」

[聖奈美]:「あたしはそんな解答を求めてないの。何かしらあるでしょう? ここはこうしたほうがいいとか。本当にそう思ったのなら、あまり強くは言えないけど、そんな生易しさでクリアできるほど、この行事は甘くないわ」

[吹雪]:「あ、ああ、そうだな」

[聖奈美]:「もっと突っ込んだ意見を言ってちょうだい。でないと、あたしのためにならないわ」

[吹雪]:「そうだな、悪かった」

こんな形で反感を買ってしまうとは、ちょっと予想外だ。確かに、こんな曖昧な意見じゃあこいつに失礼か。次はもっと真剣に意見を出すとしよう。

[ダルク]:「ドンマイ、吹雪」

[吹雪]:「おう」

[ダルク]:「じゃあ、もう一回、今弾いたとこまで弾くから」

杠はもう一度鍵盤に向かった。


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